魔族の町ワーヤ〜ロルオフ(町長)
「町長ー!!たいへんです!!!」
町の警護を担当しているうちの1人が、そう叫びながらワシの屋敷に飛び込んできた。
「なんだ、騒々しい」
やっと"半魔"などと言う気味の悪いレイチェルーヴァを追い出すことに成功したと言うのに。
「ルークの家とヴィクトリアの工房が跡形もありません!!!」
はっ?
「なんだと!?そんなことありえんだろっ!」
家も工房もなくなるはずがない。
ルークとヴィクトリアは、すぐに出ると言っていた。
そんな短時間で、何をどう出来ると言うんだ。
ワシは自分で確認に行くために屋敷を出た。
どういうことだ!?
「ありえんだろ!?なぜ何もない!?なぜ、こんなことが起こるんだ!!!」
ワシはその場に来ていたオポズに問いを投げつけた。
オポズは、町の役場の人間だ。
「持って行ったんでしょうね」
オポズはおかしなことを言った。
「持って行った?家と工房をか!?そんなアホみたいな話があるかっ!!」
建っている家を動かすことなど、出来るはずがないだろう!
「あれ?町長は知らなかったんですか?」
オポズは、ワシを見て言った。
「何をだ」
「ルークの影魔法」
ルークが闇と影と暗黒を持ってるのは、もちろん知っとる。
「影魔法は、知っとるぞ」
そう言うと、オポズはワシの知らないスキル名を口にした。
「ルークは【影収納】ってスキル持ってましたよ?」
そんなスキル、ワシは知らんぞ。
「それはどんなスキルだ」
すると、オポズはうろ覚えですが、と言いながら、
「確かなんでも収納出来るスキルだったはずですけど?他に持ってる人物を知らないんで本当かどうかはわからないですけどね」
レアスキルということか?
「それがどうしたんだ」
話が見えないワシに、オポズは信じられないことを言った。
「だから、家と工房をそのスキルで持って行ったんじゃないですか?」
「なんだと?」
そんなデカいモノも収納出来るスキルだと言うのか。
もっと早くに知っていたら、もっと使えたのにっ!
なぜ誰もワシに言わんのだ!
「元々、ヴィクトリアの工房だってそのスキルで持って来たんじゃなかったでしたか?」
なんだと!?
「…」
ワシは知らんぞ…?
ちょっと待て!
家や工房も持って出たと言うことは…?
「じゃあなんだ!?ルークとヴィクトリアはこの町から出て行ったとそう言うのか?」
ふざけるのも大概にしろよ!!
ヴィクトリアはこの町で唯一の鍛治師だぞ!?
修理の武器が、たんまり溜まっているのだぞ!?
どうするんだ!!
「そうなんじゃないですか?」
オポズは、ワシをゴミでも見るような視線を送ってくる。
「なぜだ、なぜ出て行くんだっ!!」
オポズは、それ本気で言ってるんですか?と冷ややかな声で言った。
「町長があの2人の溺愛しているレイチェルーヴァを追い出したからじゃないですかね?」
俺は反対しましたけどねぇ、とオポズは言いやがった。
ワシのせいだと言うのか。
許さん、許さんぞ!
ルークもヴィクトリアもレイチェルーヴァも!!
覚えているがいい。
お前達がいなくても、武器の修理だろうが、新しい武器の購入だろうが、なんとでもなる。
ドワーフなんぞは他にもたくさんいるんだからな。
ロルオフと言う町長は知らない。
ワーヤの町からの修理依頼は、ドワーフには受け付けてもらえないことを。
他の町でもドワーフの鍛治師からは、武器を購入出来ないことを。
ワーヤの町から、どんどん住人がいなくなることを。
そして、遠くない未来にワーヤと言う町が消滅することを…。
おしらせ
10/10~10/13まで
生まれたその日にダンジョンに捨てられた俺はドラゴンに育てられる
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