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ワタシ死ねないみたいです。あと○○になる方法、探してます。  作者: マナマナ


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噫無情じゃないの。世界は

 朝の教室は賑やかだった。ハニエルが天使達に囲まれていたからだ。


「病み上がりなのに律儀だな」

「うん。質問に全部笑顔で返してる」

 私とヴィヴィは遠巻きに見ていたが、さすがに盛り上がり過ぎ。みんな珍しいことを体験したこととなんといってもハニエルガ無事に戻ってきたことが拍車を掛けているみたいだった。

「ちょっと行ってくるか。始業時間になるし」

 ヴィヴィは群がる天使達に向かってゆく。

「そろそろお開きにしてもらってもいいかな。ハニエルはまだ本調子じゃないんだ」

 ドスの利いた声に群がる天使達の動きが止まるとそのままそれぞれの席に戻っていった。

「へぇ・・・すごいね」

 つい感心してしまう。おかげで私もやっと自分の席に座ることができる。


「大丈夫?」

「こんなのどうってことないわミュリエル」

 こうしているといつもと何も変わらないハニエルだよね。でも。病み上がりなのは本当のこと。

「ねえ、具合悪くなったら遠慮なく言ってね」

「ありがとう・・・・・・あ〜・・・ちょっとだけ疲れたかな」

 ハニエルはそう言うと私の肩に頭を乗せてくる。

「え!・・・ハニエル、保健室行く?」

「ううん。このままがいい。こうしてると気分が良くなると思うの」

 いきなりでビックリしたけど本人がそう望むならこのままがいいのかな・・・なんて思っていたら私に鋭い視線が突き刺さる。

 言うまでもなくヴィヴィである。慌てて

(分かってるって)

 という言葉をウイスパーでリアクション。

「どうしたの?」

「あ、なんでもない。それよりどう?落ち着いた?」

「うん。ありがとうミュリエルの匂いのおかげかな」

「へ、へぇ〜」


 私も感じている。

 ハニエルの匂い・・・懐かしい。本当はもっと・・・でも分かってる。これ以上は駄目なこと。

 こんなに近いのに・・・遠巻きにしなきゃならない。慣れなきゃならないんだ・・・・・・・

「もういいかな。時間だしね」

「うん。そうだね。残念」

「!?」

 去り際に首筋に吐息を感じた。ハニエルは微笑んでから自分の席にちゃんと座り直した。

 

 始業の鐘が響くと同時に担任のラグエル先生が入ってくる。


「みなさんおはようございます。早速ですが転校生を紹介します」

 いきなりのことで私もだけど他の天使達もキョトンとしている。

 先生の表情は少し戸惑っているように見えるのは気のせい?何か問題でもあるのだろうか。


「では教室に入ってください」


 これって漫画でよく見る感じだよね。

 転校生か。少し前は私がそっち側だった。

 今はこっち側。『どんな天使かな』ってワクワクとドキドキの気持ちが交差しているみたい。

 やがて見える姿に

「ん?」

 この学園の制服じゃない。あれは・・・

「・・・(ミウリル?)え!どうして!」

 つい大きな声と共に立ち上がってしまう。

「静かに」

 先生の言葉は私だけの向けられたもの。他の天使達は私とミウリルの間を視線で何度も往復している。言葉が出ないほど驚いているのが伝わってくる。

「ミュリエル。座りなさい」

「・・・は、はい。すみませんでした」

 ミウリルはゆっくりと先生の隣りに立って正面に向くと他の天使が我慢できなくなって静かなざわめきが起こり始める。

「はいはい。みんな静かに。困惑していることは分かります」

 戸惑いながらもなんとか静かになった。

「待たせましたね。驚いてますか?」

「いいえ。そんなことありません。楽しそうなクラスだなって思いました」

 

 ミウリル・・・なんで?なにも聞いてない。っていうかなんで前もって言ってくれないの?連絡先知っているでしょうが・・・


「こちらは天界の天使ミウリル。今日からしばらく体験という形でこのクラスの一員となります。初めての事例ですが天界と地獄の交流を深める意味も込めて天界から直々に依頼されました。みんな仲良するように」

 一歩前に出るミウリル。クラス中を見渡してから

「天界の天使ミウリルです。よろしくお願いします。仲良くしてくれると嬉しいです」

 自己紹介してから微笑む。

 とても素敵な笑顔。

 この笑顔、私にも同じ顔ができるだろうか。つい魅入ってしまった。

 同時にヴィヴィの鋭い視線を再び感じる。

 ブンブン。と手と顔を同時に横に振って否定する。

 私だって何がどうなっているのか本当に知らないんだから。


「あの。発言をお許しください」


 手を挙げて立ち上がるハニエル。えっと・・・何を言うつもりなの?


「突然何事ですか?その前にハニエル復帰おめでとうございます。よく頑張りましたね。でも今はあまり無理をしないように。それで何が聞きたいのですか?」

 先生の言葉に頷いてから真面目な顔になって

「あの。今一つ状況が分からないです。天界と地獄の交流というのは分かりますが」

 きっとハニエルは学級委員という立場だからみんなの疑問を代表して聞いているのかもしれない。

「言ったはずです。天界からの依頼。それに体験入学だと。今回のことで問題なければどっちの天使もどっちの学校に通うことが選択可能になる基盤作りとでも言った方理解できますか?」

「はい。それは分かりました。それと一番の疑問です。彼女はミュリエルとどんな関係なんですか?」

 ・・・やっぱり。そう来るよね。私だって同じ立場なら気になって仕方ない。

 ヴィヴィは知っている。もちろん先生だって聞かされているだろう。ならなんて答える?

 ハニエルの視線はいつしかミウリルから私に向けられる。

 え!・・・それって私が答えないとならないきゃ駄目?・・・まさか・・・


「正直私も驚いている。世の中こんなにも似ている天使がいる。ある意味奇蹟に近いだろう」

 先生が答えると

「ですよね。あまりにも似ていたから双子なのかなって」

「そう思うのも仕方ないと思いますが違います。大体、天界と地獄。世界が違います」


 この件についてミウリルは変なこと言わないよね。面倒なことはイヤだからね。

 そんな私の気持ちが伝わったか分からないが出来ることなら伝わって欲しい。

 気が付くと穴が空くほどミウリルのことを見ていた。


「そうですね。教室に入った時、すごくビックリしました。鏡でも置いてあるのかと思ったくらいです。ほんとよく似てますね。名前、聞いてもいい?」

 察してくれた?それともそういう設定?とにかく話は合わせておいた方がいい。

「私はミュリエル。よろしくミウリル」

「もちろん。よろしく。ミュリエル」 


 一体なに考えて・・・っていうかこんなことしたのって絶対ラフィだよね。


「席は・・・」

 先生と視線が合う。そうでしょうね。後ろ、空いてるからね

「ミュリエルの後ろの席です」

「はい」

 ミウリルはゆっくりと席を目指して歩き出す。みんな彼女の動きに視線を合わせている。

 隣りを通る間際に小さな声で

(なに考えてるの?)

(えへへ。上手くいったでしょ)

 質問にちゃんと答えることなく席に着く。


 あ〜何か落ち着かないな・・・後頭部や背中を見られているみたい。


 おまけに隣りからもチラチラと視線を感じる。

 ハニエル・・・落ち着こう、なんて言ったところで無駄なんだろうな・・・

 そんな中、現代文の授業が始まる。けれど集中なんて全然できなかった。


 やっと最初の休み時間になったのにとても休んでなんていられなかった。

 周りからは当然のように並べられて比べられる。絶対みんな楽しんでるでしょ。

「どこから見ても一緒だよね」

「本当に双子じゃないの?」

「同じ顔ってどんな感じ?」

「天界の天使ってホント?」

 予想通りの質問が勢いよく飛んでくる。それにイチイチ答えるないとならないの?

 だけど私には苦笑いが関の山。一方ミウリルは自身の天使のカードを見せて楽しそうに適当な答えで誤魔化している。


 こうなるのよ!分かってるの?そんな気持ちでミウリルのことを見ていると

「なんか怒ってる?」

「別に?ちょっといい?」

 手を取って強引に教室の外に連れ出す。

 いい加減天使達に囲まれていることにうんざりしていた。


「ちょっと。なんなのよ」

「二人きりで話したいの」

「でももう休み時間終わるんじゃ・・・」

 確かにそろそろ次の授業が始まる。

「一つだけ聞かせて。なに考えてんの?天界の学校じゃないなんて」

「それはミュリエルと一緒が良かったから」

「これってラフィの仕業でしょ」

「うん。そうだよ」

 はぁ〜・・・やっぱり。

 面倒はイヤなのに面倒なことが始まりそうな・・・いや始まったんだ。まさに現在進行形。 

「なんで現世の制服なの?」

「あれ〜一つって言ってなかったっけ?」

「ついでよ、ついで。早く答えてよ」

「なにイライラしてんのよ。まだ時期じゃないでしょ。まあいいや。これはさ、担任に言われたんだ。同じ制服だと見分けがつかないからって。ホントはさ私は着てみたかった。そしたら面白いのにね」

「全然面白くないから。戻るよ」

「まだ聞きたいことあるんじゃない?」

「後でじっくり聞くから」

「私も聞きたいことある。一つだけいい?お昼ってどうしてるの?」

「は?そこ?」

「だってランチって大事でしょ。学校生活でランチって大事な交流の場所でしょ」

「学食」

「あるの?」

「そう。みんなそこで食べるの」

「そっか。楽しみ。あ!鳴ってる。戻ろう」

「言われなくても」

「じゃああらためて。よろしくね。ミュリエル」

「・・・・・・よろしく。ミウリル」

 差し出された手に応える。

 自分自身と握手って不思議な気持ちしかしなかった。


☆★☆★☆★


 登校途中で後ろから声が掛かる。誰かなんてすぐに分かった。

「おはよう。日下部君」

「今井。おはよう」

「今日はまた一段と神妙な顔してるね」

「お前は今日も元気だな」

「元気がトレードマークだもんね。やっぱり今夜のこと考えてるの?」

「今夜?」

「言ってたじゃん。満月がどうのこうのって」

 

 満月。確かに今夜だ。そのことはもちろん気にしているが、俺が今考えているのは夢のことだった。

 どんな意味があるのか?それとも夢だから何も意味がないのか?

 一体誰に聞いたら正解が分かるのだろう。


「今朝見た夢が気になっているんだ」

 別に話したくて話したわけじゃない。ただ自然と言葉になって出てきた。それに今井になら喋ってもいいような気がした、というのが理由だが本当は誰かに聞いてもらいたかったのかもしれない。

 もしかしたら一緒に考えてもらいたかったのかもしれない。

 とにかく口にしたことで今井に興味を与えたことは言うまでもない。


「へぇ〜気になる。自分から言うってことは本当は話したいんじゃないの?」


 よく分かっているじゃないか。そういうことならこっちも遠慮なく話させてもらうとしよう。

 俺の記憶がまだはっきりとしている内に。

 いずれ時間と共に忘却の彼方に消えていってしまうことだってあり得るんだから。


「変な夢だった。満月。そこに相楽がいた。それも二人。お互い向かい合って何か喋っていた。けれど俺には会話の内容を聞くことはできなかった。俺には入り込めないし、蚊帳の外で見ることしかできなかった」

「二人の相楽さん?それは完全に夢だね」

「・・・夢の話だからな」

 そうは言ってみたものの

 俺にはなんとなく分かるんだ。相楽の身体には二人の人格があった。それは新月の夜に起こったことと関係しているのかもしれない。

 そのことを話すのはプライベートにかかわることだから伏せておくことにする。


「続けていいか?二人には翼があった。まるで天使みたいな翼だった。二人は月に向かって飛んでいった。でも最後には二人抱き合ったまま地上に落ちていった」

 しばらく黙ったまま話を聞いてから

「それで?」

「それで終わり。目が醒めたんだ」

「ふうん。翼があるのに落ちるって意味が分からない」

「それは途中で二人の翼が崩れるようになくなってしまったからなんだ」

「それは落ちるね」

 落ちてゆく二人の相楽。

 あの時の光景と重なってくる。

 あの時だってこんな感じで天文台から落ちていったんじゃないのか?身体は一つでも二つ人格はお互い抱き合うようにして・・・


「その夢で日下部君は何か暗示めいたことを感じているの?」

「そういうわけじゃないけど、よく分からないんだ。どこかで繋がっているのかもしれないし本当にただの夢かもしれない。満月のことを心のどこか深い所で案じていたからなのかもしれない」

「それは今夜になったら答えが出るものなの?」

「さあな。でも今夜なんだ。きっと何か分かるような気がする」

「それで?相楽のことはどうするの?」

「そこなんだ。面会時間もあるから一緒にいることなんて不可能だろうな」

「だよね。だったら、どこかに隠れるみたいなことできないの?」

「そんなことして見つかったら病院、出禁になるだろうな」

「確かに。じゃあさ私も何か考えてみるよ。じゃ先に行くね」

「お、おい」

 声を掛けたところで今井にはもう届かない。

「一緒に行くんじゃないのか・・・」


 また一人になる。

 もう一度。夢の光景とあの時の光景を重ねてみる。

 けれど。俺にはやっぱり何のことか全然分からない。

 

 天使・・・そんな存在は空想の中だけなんだ。

 この世界で実際に会った人間なんているのだろうか?

 いるはずがない。

 二人の相楽は天使になったとでもいうのだろうか?

 そんなこと馬鹿げている。

 しかし。実際はあり得ないのに空想の中では十分あり得ることばかり。

 アイツが天使になったら何をする?空想でいい。考えるんだ。 

 見上げる青い空の彼方には夏を予感させる大きな雲が浮かんでいる。

 アイツならあの雲に乗って昼寝でもしている・・・十分あり得る。

「男の方だけどな」

 久し振りに男の方の相楽を思い出す、と同時に『元』のことも思い出していた。

「連絡先・・・交換していればよかったな」

 夜になるまで時間はある。

 今日も学校が終わったら相楽に会いに行こう。行ってから考えよう。

 それまでは何も出来ないことを俺は理解していた。

 

★★★★★★


 お昼を告げる鐘が鳴った。と言うことはランチタイム。学食だっけ。ここの生徒達は一体どんなランチを食べているのだろう。ちょっと、いや、かなり楽しみである。

「ちょっと」

 何も言わずに立ち上がるミュリエルの制服の裾を掴むと、なんで溜息なんてついているの?それもあからさまに。

「・・・なに?」

 振り向いた顔にはなんだか疲れているみたい。授業に疲れたのかな?そんなに難しいことは教えていない。レベル的には十分対応可能な範囲だと思うけど。

「これからランチでしょ」

「そうだけど」

「連れてってよ。場所分かんないし」

 また溜息。もしかしてそれって私に対してってこと?

「ねえ。その溜息って当てつけなの?」

「かもね。なんかいろいろ」

「いろいろって何よ」

「いろいろはいろいろ。そう言えば完全に一日休んだとなかったなって思って」

「ふ〜ん。ご飯食べたら元気が出るんじゃない?」

 私の空腹のチャイムはカウントダウンを始めている。このままだと転校初日に腹を鳴らした天使って思われる。そんな名称ははっきり言って御免被りたいところなの。


「一緒に行きましょう。案内するわ」

 話しかけてきたのは隣りの席のあの時の天使だよね。

「ホント?ハニエルって呼んでいい?」

「はい。もちろんです。私は学級委員なので分からないことあったら遠慮なく聞いてください」

「ありがとう。いろいろ教えてね。ねぇミュリエルも行くでしょ」

「行くよ。ねえハニエル、学食なら私が案内するから無理はしないで」

「無理なんてしていないよ。なんだか二人のことを見ていると元気になってくるの」

「そうなんの?だったらもっと見ていいよ」

 あの時見たハニエルの顔は人形みたいに綺麗だけど温かみがなかった。

 でも今は頬も唇もほんのり色を得てとても可愛らしい。リリエルもそうだけど生まれながらにして天使ってみんな可愛い。

 もちろん私だってその辺は自信があったりするわけだけど。

 それと私達がかつて人間だったってことはみんな知っているのかな?


「それじゃ行きましょう」

 ハニエルは何故か私とミュリエルの間に入って、当たり前の様に手を繋いできた。

「ちょっと待った」

 そう言って割って入ってきた天使。割と背が高いので私達みんなは見上げている。

「なによヴィヴィ。邪魔しないでよ」

 この天使・・・ヴィヴィって言うんだ。

「私も一緒に行く」

「ねえ」

 ミュリエルが私の肩を指で突く。なに?私はお腹が空いているのに

「ミウリル。ちょっといい?」

「は?」

「すぐ終わる。ハニエルとヴィヴィは先に行って」

「え〜!せっかく両手に花だったのに」

「すぐに追いつくから。出来れば席の確保お願いしたい」

 ミュリエルは頭を下げている。一体なに?ここじゃ話せないってこと?

「分かった。先に行くね。絶対追いついてよね」

「ほら早く行こう。席が埋まるぞ」

「仕方ない、ヴィヴィと行くわ」

「仕方ないってことないだろ。私は・・・」

「分かってるから。じゃ後でねお二人さん」


 二人の姿が教室からいなくなる。というか私とミュリエルしか残っていない。みんな行ってしまった。

 急に静けさが増してゆく教室。

 ミュリエルは確認するように周りを見て、誰もいないにの小さな声で

「一つだけ共有したいことある」

 なんでそんな神妙な顔してるの?

「それって大事なこと?」

「もの凄く」

「いいよ。それってさ私達のことだよね」

「そう。私は元人間ってことみんなには言ってないの。だからミウリルも言わないで欲しい」

「なんだ。そんなこと?」

「そんなことって」

「そうよ。そんな個人情報いちいち言わないって。聞かれたら答えているかもしれないけど、まさか人間が天使になった、なんて誰も信じないでしょ。今の私達は天使なの。人間だった頃なんて昔の話。分かってると思うけど私達は上級天使の力でとんでもない幸せを手にしたんだからね」

 私の言葉にミュリエルは

「なによ、その顔。なんていうんだっけ?確か鳩が・・・」

「豆鉄砲だよ」

「そうそれ。私だってちゃんと考えているからね」

「そうなんだ・・・ありがとう」

「これで話は終わり?お腹空いた。早く行こう」

 ミュリエルの手を取って歩き出す。

 自分自身の手なのに今は彼女の手。それは同じようでどこか違っている。よく分かんないけどそんな印象を持った。


「お!ここなの?めっちゃ賑わってる。それにいい匂い。こっちに来て思ってたけどさ、美味しいものたくさんあるよね」

 匂いだけで美味しい。どんなメニューが私のことを迎えてくれるのかな。

「それで?どうするの?」

「基本無料だから自分の食べたいもの選ぶといいよ」

「タダ?」

「そう。普通にどれも美味しいけど『地獄の豆丼』だけは止めた方がいい」

「地獄?なにそれどんな食べ物?」

「興味持たない方がいい。ミウリルのために言ってるんだからね」

 そんなこと言われるとむしろ気になるって。でも今日は無理でもいつか食べてみよう。


 学食はどこにでもあるちょっとオシャレな食堂、みたいな感じだった。壁も天井も真っ白でテーブルはとても透き通ったガラスみたい。

 そんな中、私達に向けて手を振るハニエルを発見。応えるように私も手を振る。

「あそこだって」

「うん。分かるよ」

 言ってミュリエルも手を振る。

 それにしても楽しそうだなハニエル。元気になって良かったね。私が天界から持ってきた青い薔薇が役に立ったことがとても嬉しく感じている。

 私は『祝福の天使』になりたいの。そして現世の空から幸せに満ちてゆく世界を見守ってみたい。そこにはラフィがいてリリエルがいて。イヤじゃなかったらミュリエルもハニエルも。天使という天使達が見ている世界ってきっと素敵なんだろうな。


「それで何にする?」

 ミュリエルの声に反応するといつの間にはカウンターに到着していた。

「ミュリエルは何にするの?」

「私はあんまり食欲がないからミックスサンドと紅茶かな」

「え〜小食。私は元気だから・・・ホントたくさんあるね。オススメは?」

「そんなの好みでしょ。でもそうね。私が元気だったらオムライス、かな」

「いいね。久しく食べてない。決めた」

 カウンターにいるおばさん天使に声を掛けると

「あれ?あんたって双子だったのかい」

 そう言って顔を見比べている。

「見分けが全然つかないね」

「残念ですが私達は双子じゃありません」

「え?違うのかい。驚いたね」

「ですよね。それに私は天界の天使なんです」

 そのことにも大層驚いている。おどろき方のリアクションがおばさんそのもので面白い。いろんな天使がいる。それは人間も同じってか。

 そんなやり取りをしている内にランチが渡される。

「いい匂い。美味しそう。そっちもいい感じじゃん」

「欲しいなら少しあげる」

「え!いいの?じゃあ私のも一口あげるね」

 そのことにミュリエルは笑って答える。なによ。イヤならイヤってはっきり言えばいいのに。


 私の学校生活は今のところ順調みたい。

 な〜んだ。人間だった時もこうしていれば楽しかっただろうな。今となっては遠いけど、天使になってやり直しているってもう一人の私に伝えたい。

 きっと向こうは元気だよね。なんでだろう。分かるんだよね。

 私もね元気だし楽しく生きている。

「ねえミュリエル。あの約束はどうなった?」

 何のことか少し考えて

「ああ。あれ。一応話したけどまだ返事が来ない。だからもうちょっと待って」

「それはいいけどさ、今夜だよね、満月」

 一瞬ミュリエルの動きが止まる。

「あのさ、満月に会いましょう、ってあなたが書いたの?」

「は?なに急に?知らないよそんなの」

「だったらいい。ごめん忘れて」

「なによそれ。ま、どっちでもいいけど私は会いたいな、もう一人の私に」

 満月って言った時からミュリエルの表情がさらに冴えなくなっているのは気のせい?

 あのさ、私の顔とか好きなんでしょ。そんなの似合わないって分かってんのかな。


「お待たせ」

「大丈夫。私達だってさっきここに座ったところだから」

「食べようぜ。腹減った」

「同じく。初めての学食、いただきます」

 みんな一斉に食べ始める。

 これ、これ。こういうのが学校らしくていいよね。

 今ってものすごく楽しい。

 だけど。

 私が元気になればなるほどミュリエルが暗くなってゆくのが横目でかなり気になっていた。


☆☆☆☆☆☆


「さっきから何を見てるの?」

 ちょうど弁当を食べ終わってスマホを見ていた俺にまどかが話しかけてきた。

「いや、言ってなかったなって」

 東京で知り合った『みう』のことを話した。あの時以来全然連絡なんてしてなかった。それなのに今朝のニュースで『今夜はきれいな満月が全国で見ることが出来るでしょう』と聞いた瞬間、急に『みう』のことを思い出した。

「こいつさ。俺が東京に行った時にたまたま知り合ったんだよ」

「なによ、女?」

「そう。別に隠すこともないから一応言っておこうかなって」

「連絡とかしてるの?」

「いや。ほとんどしてない。一回かな。向こうからは一回もないけどな」

「それを見てたの?」

「ああ。なんかさ不思議な感じがしたんだ。初めて会ったはずなのにどこかで会ったことあるみたいな」

 まどかは急に黙ってじっと見つめてくる。

「言っとくけど好きとかそんなんじゃないから」

「だったらなんで言うわけ?そんなこと」

「なんか隠しているみたいでイヤだったから。俺はまどかが好きなんだ。だからかな」

「言わなきゃ分からなかったのに」

「怒った?」

「怒ってない。でも不安になるのよ」

「ごめん。それでさ、ごめんついでに俺は今夜こいつに連絡する」

「は?私の気持ち聞いてなかったの?」

「聞いてた。だからごめん。でもなんか気になるんだよ」

「気になるって?なんで?」

「それが説明できたらいいんだろうけど、適当な言葉が見当たらない。でも俺が好きなのはお前だけだから」

「なに堂々と浮気宣言してんのよ。信じられない」

 まどかは急に不機嫌になって弁当を纏めるとそのまま屋上を後にして行ってしまった。

 俺は正直に話したのに伝わらなかったことにショックを受けて後を追うことができなかった。

「そんなんじゃない。でもごめん。呼ばれているような気がするんだ。明日になったらこいつの番号はまどかの目の前で消す。それで許してくれたらいいけどな」

 屋上に寝転がると初夏みたい湿気った風が吹き込んでくる。

 夏休み。二人でどこか行けるといいな。そんなことを思いながら目を閉じると深い闇が俺のことを覆い被さってゆくのを感じていた。

もう一年も経っていた。拍手(パチパチ)

読んでいただきありがとうございます。

一年もダラダラと書いていたのか!

それにお付き合いしていただいた皆さまに感謝です。

投稿を始めた時は誰も読まないのでは?なんてドキドキでした。

たくさんある作品の中から見つけてくれてありがとうって気持ちでいっぱいです。

物語はガチャガチャし始めていて・・・どうするの私って思っています。

でも最後まで頑張らさせてください。

ということで次回もよろしくお願いします。

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