人の望みの喜びを・・・
真夜中。見つめ合う私と私。
二人だけの満月はどこまでも青く透き通っている。
翼を広げて近づいてみる。
でも・・・近づいただけ月は遠ざかってゆく。
永遠に辿り着くことなんてできない。
永遠ってどんな感じがするの?
このまま時が止まってしまえばいつまでも二人でいることができるかもしれない・・・
「ずっとこのままでいいの?」
「ずっとこのままがいいの」
月の光は最高潮を迎えようとしている。
「あなたがいたから」
「私がいたから」
鏡を見ているよりもリアルにお互いのことを見ている。
そして
「ここってどこなのかな?」
「天界ではない」
「だったら地獄?」
「地獄でもない」
沈黙
「・・・どこなの?」
「天界でも地獄でもない場所」
「・・・だとしたら・・・ここは」
「そう。ここは人間の世界。現世」
「現世?戻ってきたの?」
「ううん。現世だけどちょっと違う」
「・・・知っていること教えてよ」
「私は廻してしまった」
「廻した?なにを?」
「天界の最上層にあるもの。それ以上は言えないってこと分かって・・・ミュリエル」
崩れてゆく翼
お互いのことをしっかりと抱きしめたまま重力に従う。
落ちる・・落ちる・・どこまでも・・・堕ちてゆく・・・・・・・・どこに・・・
☆☆・・・・・・★★
「は!」
突然の目醒め
「はぁ・・・はぁはぁ・・・ゆ、夢?」
なんだ今の夢は・・・・・・相楽・・・二人いた・・・
夢に俺自身は含まれていない。ただ見ていただけ。それはまるで映画やテレビの画面を見ているみたいな感覚だった。
二人の相楽が落ちてゆく姿に声をあげる間もなく現実に引き戻された。それはいきなり電源が落ちたテレビのように唐突に終わった。
ベッドから出てカーテンを開けると夜はすでに終わりを告げていて空は薄らと目覚めようとしていた。
空にはまだ月の姿があった。
「・・・今夜」
月は真円を描く。相楽が目覚めて二回目の満月。
俺に何か出来ることがあるのだろうか・・・
何も出来ないのだろうか・・・
今、病院で眠っている相楽は何を思っている?無意識に掴んだ手は本当に無意識だったのだろうか。
考えても何も思い付くはずなんてない。そんなこと分かっているのに考えてしまう。
「?」
手に何か落ちる。
「汗?こんなに?」
顔から、頭から止めどなく汗が流れていた。それにTシャツだって。
「シャワーでも浴びるか」
家族はまだ眠りの中だろう。家の中が必要以上にひっそりとしている。もう一度眠るには汗が気持ち悪かったし、意識は完全に目覚めていた。こんなに頭が冴えているなんて
「・・・やっぱり何かあると思った方がいい。相楽・・・後で会おうな」
相楽に伝わったか分からない。それでも声を掛けないわけにはいかなかった。
イヤな汗を流すために俺は部屋を後にした。
☆☆☆☆☆☆
世界には理がある。秩序が守られている限り面倒なことは起こらない。
しかし
何時の時代だってそんな平穏はなかなか訪れない。
仮に訪れたとしても、それは夢のように儚くて気がついた頃には綻んでいる。
簡単なことなのに何故こんなにも脆いのだろう。
嘆かわしい・・・嘆かわしい・・・
今回のことも歴史に刻むなんてあってはならないこと。
分かっているな・・・リリエル
「はい。しかし」
「しかし?」
「はい。覚悟の上、敢えて進言します。もう少し時間を」
「このような前例は必要ではない」
「見ていて気になるのです」
「興味があるとでも?」
「そうです。結末を知りたいです。それからでもいいのではないでしょうか。歴史には刻むことなく」
「そんなことをしても時は巡る。いつかまた同じことをする」
「そうならぬよう、あたし達天使は存在しています」
「天使の存在」
「そうです。それに彼女達は手の中にいる。いつでも神罰を下すことができます」
沈黙
会話は終わる。
「まだ猶予はあるみたいですね」
リリエルの目に眩しい光が差し込んでくる。朝がやって来た。そして
「今夜は満月ですか。あたしは見ていることしかできません。ミウリル・・・それにミュリエルでしたっけ?お願いですから先生を悲しませるような決断はしないでくださいね」
リリエルは悩んでいる。
本当なら最初の新月の夜に終わらせるはずだった。
でも。いろいろと邪魔が入ったせいで達成はできなかった。
しかし
運命なのでしょうか。彼女と出会ったことが久し振りに楽しい時間を過すことになって今じゃあって当たり前の存在になっていた。
人間が天使なんて馬鹿げたことだと思っていたけれど触れ合うことで人間という存在に対して少なからず興味が出てきたのは確かなこと。
今までは人間と触れ合う機会なんてなかった。自分達を違って命の短い儚い存在だと思っていた。おまけに私利私欲に満ちた愚かな存在だと。
それに天使として長い時間を生きてきたことに退屈をしていた時でもあった。だから余計にミウリルの存在が新鮮だった。
このまま死なせるのはリリエルにとっても悲しい決断になることは分かっていた。
「まったくバカですね、あたしは。かつて人間だった存在に親しみを感じているなんて」
新しい一日の始まりに大きく手を伸ばしている後ろから
「おはようリリエル。早いね」
「そういうミウリルこそ」
「新しいベッドがね・・・」
「気に入らなかったですか?あたしと先生の手作りですよ」
「いや、気に入らないわけじゃないの。まだ慣れなくて」
「慣れない?だったら先生のベッドはどういうことです?熟睡してますよね」
「そうなんだよね。ラフィのベッドってなんか眠れるんだよね」
「それ、先生に言わない方がいいですよ」
「なんで?」
「なんで?そんなことも分からないバカ天使ですか。先生が喜ぶからに決まっているからです」
「え!う〜ん・・・確かにその通りかも」
「その通りなんです。だから慣れてください」
大きな欠伸をしているミウリルを見て
「聞いてました?今のこと」
「へ?うん。聞いてた聞いてた。寝足りないよ」
「ならもう一回。ベッドに戻るべきです」
瞼を擦り始めるミウリル
「・・・そうだね。今度はちゃんと眠れそう・・・おやすみ」
言い残して部屋に戻ってゆく姿を見送って
「やれやれ。こんなのんびりがいいんですよ。平穏が一番。なのにそうさせないのが運命のいたずらってヤツですかね。あたしももう一眠りしましょうかね」
遅れてリリエルも家の方に戻っていった。
森の中から一匹のベビが顔を出す。
そして。リリエルの後を追うように這ってゆく姿を見るものは誰もいなかった。
☆★☆★☆★
夕食が終わって部屋に一人でベッド上で壁を背に座っている。
「・・・壁の向こうはハニエルの部屋」
壁に耳を付けたところで何も聞こえるはずもない。そんなこと分かっているのにね。
R・R・R・・・
「ルシェル・・・そう言えば連絡してなかった。怒っているよね」
気は進まないが出ないともっと心象が悪くなる。深呼吸してから
「はい。ミュリエルです。サボってしまってごめんなさい」
なにか言われる前に謝る。絶対に文句を言われると覚悟していたのに
「サボったのはいただけませんが事情があったのは知っています。それで上手くいきましたか?」
思った以上に普通の対応にちょっとだけ安心して
「うん。みんなの協力があったから上手くいったよ。今朝には無事目を覚ましてくれた」
「そうですか。それは良かったです。おめでとうございます」
「ありがとう。ルシェルが迎えに来てくれなかったら今頃どうなっていたか」
「命は大事にするものですよ。いくら天使だからってあれ以上だった死んでいたかもしれなかったんです。そうなったらミュリエルの目的は達成できないところでしたよ」
「ホントだね。自分達の天国を探すなんて言っておきながら死んだらカーリ様に申し訳ないよ」
「それが分かっていればいいです。ところで明日は二回目の満月ですよ」
そのことは分かっているし聞きたいこととお願いしたいことがある。
「うん。分かってる。それでね満月って私が向こうで人間として生きている時に必要な報告であって今はこっちにいて、いつでもルシェルと話ができるのに必要なのかなって。あと一つお願いがあるんだけど」
画面から見えるルシェルの顔は何かを考えている。そんな風に見える。
しばらくして
「先ずはお願いの方から聞きましょうか」
どう説明いたらいいのか分からないので言われた通りのことをそのまま話すと
「え?そんな約束したんですか?」
「青い薔薇の恩があるの。一回でいいの話させてあげて欲しい。約束したの。破ったら私はカーリ様に怒られて罰金を払うことになるの。経費で払っていいなら払うけど」
針千本のことは伏せておく。
「経費をなんだと思っているのですか。そんな使い方認められるわけないじゃないですか」
「だよね。だからお願い。三分、いや二分でいいの。それに会わせてあげられるよルシェルにも。ちゃんと紹介するから」
「急にそんなこと・・・困りましたね。すぐにはちょっと」
「すぐが駄目ならいつならいいの?」
「グイグイ来ますね」
そりゃそうだ。怒られて罰金程度なんてことない。でも針千本。ミウリルならやりそうな気がする。そんなことは絶対に避けないをならない。お願いって押せば押すほど効果があるに決まっているんだ。
「分かりました。明日。それより前は無理です」
「うん。待つよ。ありがとう」
「それと最初の方は、言われてみれば確かにそうですね。そのことも踏まえて明日連絡します」
お礼を言うと電話は終わった。ベッドに横になって顔だけハニエルの部屋を見ていた。
返ってくる返事なんてなかった。
★・・・★☆
「おっきい・・・現世で見る月より大きい」
私は見晴らしの良い高台目の前には二周りも三周りもある月が私のことを飲み込むみたいに迫ってくる。
「ミュリエル」
振り向くと
「ミウリル。どうして?」
「だって約束したでしょ」
「約束?ああ・・・そうだったね」
「それで?どうしたらもう一人の私に会えるの?」
「それはね・・・」
端末を出す。けれど
「あれ?そう言えば連絡先の交換ってしてない」
「なにそれ?だったら約束破ったってことで」
どこに持っていたのだろう。
「飲んで」
針が山となって目の前に置かれる。
「ま、待って。破ったなんて決めないで」
「でも破ってんじゃん」
「それは・・・今はそうかもだけどまだ確定していない」
「そう?」
「そう。私は約束を破ったなんて思っていないの」
「だったらどうしたらいいの?」
「そんなのは待つしかない。まだ連絡もらっていない」
ミウリルは黙っていたが
「だったら待ってあげる。満月が終わる間だけだけどね」
「ありがとう・・・ルシェル、お願い」
端末を見ても今のところ動きはなさそう。
「あのさ」
「なによ」
「これって夢だと思う。私の」
「ミュリエルの?だったら私も夢ってこと?」
「そうだと思う」
私の言葉を信じたかどうか分からないけど
「現実、じゃないとしたら私の存在なんてあなたの気持ち一つでどうにでもなるんじゃない?」
「そうだろうけど自分で夢を操作することなんて出来ないよ」
「それじゃ現実と一緒じゃん」
「そうとも言える。でも私には夢だと分かるの。だってここに来る前は私は自分の部屋にいてハニエルの部屋の方を見ていた。きっといつの間にか眠ってしまったの」
なんでこんなこと覚えていて夢の中に持ち出せているのかが不思議だった。
「じゃあさ、夢が覚めるまで月でも見てよっか」
「うん。それならお話もできるね」
「夢の話になっちゃうよ。目が醒めたら覚えていなくてもいい?」
「うん。きっと現実でもちゃんと話すことができると思うから。そしたら思い出すんじゃない?」
ミウリルは何も言わずにいきなり翼を広げる。
「ミュリエルも」
「教えたよね。私は片方しかないの」
「いいから。夢なら関係ないでしょ」
言われて『そっか』と思ってしまう。
だから私も翼を広げる。
「ほら、やっぱり夢の世界。ミュリエルの言った通りだね」
どういうこと?
「だって。今のミュリエルはちゃんと両方に翼があるもの。私と同じように」
言われて肩越しに見てみる。
「・・・ホント、私にもちゃんとある」
「飛ぼうよ。そしてもっと月に近づこう」
差し出される手を掴む
「ミュリエルって飛んだことないでしょ」
「あるよ」
「へえ。片方でもちゃんと飛べるんだ」
「それは駄目。浮くことはできる。飛べないこともないけど真っ直ぐはできない。だから他に誰かいれば掴まってなら飛べる。血薔薇の時は友達に手伝ってもらった。後はラフィに抱かれてかな」
「は?今なんて?」
「だから友達と・・・」
「そっちじゃない方」
「ラフィは・・・強引だったの。向こうが勝手に私のこと抱き上げて飛んだんだ」
握っている手の力が強くなった。
「私はそんなことしてもらったことない」
「だから強引にって言ったよね。不可抗力だって」
「不可抗力でも許さない」
「許さないって・・・」
急に身体が上空に持っていかれる。
「痛いって。急に飛ばないでよ」
言葉なんて無視してどんどん高くなってゆく。
「ちょっと、高くは駄目でしょ」
「夢なんだよね。だったら関係ない」
あっという間に足元の景色は小さくなってゆく、
「え?ちょっと止まって」
「まだまだ」
「止まってって言ってるでしょ」
今度は私の方が力を入れて強引に止めた。
「なによ!痛いでしょ」
「お互い様。じゃなくて見てよ」
私は足元に広がる世界を差して
「これって現世じゃないかな」
「まさか」
疑っているミウリルに
「ほら、あれって東京タワーだよね」
「・・・似ているだけじゃないの?」
「疑っているなら行ってみようよ」
近づいてみる。紛れもなく東京タワーだった。私達はあらためて周りをよく見てみる。
「ホントだ。ってことはあれがスカイツリーであっちがレインボウブリッジ」
「それに線路がたくさん」
街の明りは煌びやかなのに人間の姿が一人もいない。
夢だから?
「ちょっとどこに行くのよ?」
ミウリルは繋いでいた手を振り払って一人で飛んで行ってしまう。
「ま、待って」
慌てて後を追う。ミウリルの方が飛ぶことには慣れているみたいで差がどんどん広がってゆく。
私は月明かりに微かに浮かぶ彼女の掛影を見失わないように追いかけるのに必死だった。
この方向ってもしかして家のある方?
「いた!」
ようやく追いつくと
「なんで先に行っちゃうのよ」
ミウリルが黙って見下ろしている場所、ここって
「天文台?」
「ここで何があったかミュリエルは知らないでしょ」
ミウリルの顔はどこか険しい。
「知らない。聞いてもいい?」
「どうせ終わったこと。それに始まった場所」
「どういうこと?」
「ここは私が・・・もう一人の私が命を絶った場所」
ミウリルはポツポツ話し出す。
雪が降りしきる中、病院を抜け出して人生さえも抜け出そうとしたこと。それは彼女の意思ではなかったこと。病気で死ぬことはある程度覚悟していた。だからその時が来るまで生きていたかったこと。それを無視されたこと。
結果的には彼女は生き残った。けれど意識は戻らないからすでに結果が出ていたこと。
人生の最後に誰にも自分からサヨナラを言えなかったことが眠っていても心残りだった。
でも
私が入ったことで状況が急展開して今に至った。そのことは予想外だった。そしてお互い天使となって生きていることが不思議で楽しい今を大事にしたいことを話してくれた。
「そんなことあったんだ。拓哉は何も言ってくれなかったから」
「言うはずないよ。本人を目の前に」
確かにその通りだと思うから黙っていた。
「でもさ、こんなことも思うんだ。時間を巻き戻せたらって」
「巻き戻してどうするの?」
「わかんない・・・きっと同じことの繰り返しかも。でも今の記憶を持ったままなら相楽美有の人生を変えられるんじゃないかって」
「それができたとしても病気はどうしようもないよ」
「そんなの運命でしょ。人はいつか死ぬ。長生きもすれば小さい頃に死んじゃうことだってある」
「そうだけど・・・ちょっと待って。そんなことになったら私はどうなるの?」
「そんなの知らない。だってあなたの人生はあなただけのものでしょ。男がイヤで死んだなら同じこと繰り返すだけだよ」
「そうなりたくないから人生をやり直したいって言ったんだよ」
「でも次は叶わないかもしれない。ただ女の子として生まれ直すことを祈るしかないってこと」
なんで急にそんなこと?
だってこの身体を譲ってもいいって言ったよね。
「なんかさ、現世を見ていたら、天文台のことを思い出したらさ、やっぱり人間でいいかなって思うんだよね。私も自分の気持ちがよく分からないの。天使になってこうして世界を見下ろしているとちっさいなって。いろんなことがちっさいって思えるんだ」
ミウリルは憂いのある笑顔で世界を見ている。
「ちっさな命でいろんなことあるよね。誰かと競争して勝ち負けにこだわったって意固地になってさ。それに暮らしのレベルだって人それぞれだしね。良い学校出て会社で出世して、そんなステレオタイプの幸せって人間が望んだことって思ったら、そんな想いすらちっぽけだなって、でもそれが幸せなんだって、人としての幸せなんだなって、そんな幸せも知らずに私は、そしてあなたも天使をしている。天使ってなんのために存在しているのかな。私、変なこと言ってのるかな?」
変なこと?そんなことすら私には分からない。
だって私の望みは女の子として生きること。ただそれだけ。人としての幸せなんて考えたこともなかった。
人の望みは人それぞれだと思っていた。でもミウリルの言うように人としての幸せってお腹がいっぱいになってお風呂に入って温かくて安全に眠ること。そして信頼でいる愛しい人がいれば本当は満たされているのかもしれない。
そのことに到達するためにみんな頑張って今を生きているんだ。それが喜びに変わってゆく。
幸せってなんて単純なのだろう。でもその道のりは決して楽にしては手に入らない。
「変だなんて思わないよ。ただ普通って難しいなって。それが今の結果だと思う」
「天使になったことが幸せ?」
「幸せって言われたら分からない。ただ死なないための処置だと思っている」
「あなただって人としての幸せを求めている」
「それが望みで喜びだから」
ミウリルは私のことをじっと見つめて
「これって本当に夢なのかな?」
「夢だよ本当に」
「あなたは私で良かったの?」
「私はあなたがいいの」
「もう一度。もし巻き戻すことができたら同じ答えを見つめられる?」
「うん。答えは同じだと思う」
「そっか。そんなに私がいいんだ」
「そう言ったよ」
月が迫ってくる。
私とミウリルは月光に溶かされてゆく。
「・・・夢・・・・・・だよね」
目が醒めると朝になっていた。
「今夜か・・・」
端末を見てもルシェルからの返事はなかった。
着替えもせずに朝ご飯を食べに食堂に行くと
「おはよう。ミュリエル。ここ空いてるよ」
「・・・ハニエル?」
声を掛けてきたのはハニエルだった。
「もういいの?」
「許可が出たんだ。学校も行っていいって」
「そっか。良かったね」
「私のこと忘れてないか?」
ハニエルの正面の席には
「ヴィヴィ、おはよう。忘れてなんていないよ」
「見えていたか」
「当たり前でしょ。一緒していいの?」
「もちろんさ」
「じゃあお邪魔します」
そう言って私は朝食を受け取りにカウンターに向かった。
☆★☆★☆★
「・・・っと、いい加減起きたらどうです」
揺り動かさせて
「・・・ん?・・・あれ?」
「あれ?じゃありません。なんで先生のベッドで寝てるんです?」
「ねぇ・・・なんでだろ」
リリエルは溜息をついて私の頭を叩く。
「いった〜急になにすんのよ!」
「ハエがいたもんで、つい」
「嘘でしょ。嘘言った。早速閻魔大王に怒られるよ」
「こんなの冗談です。嘘じゃないので罪にはなりません」
「は?地獄のシステムって適当なの?」
「冗談はカウントされないんです。その微妙なミュアンスを判別しているんです。すごいシステムだと思います」
「ふ〜ん。冗談ならいいんだ。いいこと聞いた。嘘言えないって言うから冗談も言えないって思ってからちょっと窮屈だったんだよね」
「で?どんな冗談いうんですか?」
「そうだな・・・っていうかなんで私はここで寝てるの?」
「今言います?冗談ですか?」
「まさか。でもなんでだろう」
「それはミウリルが勝手に入ってきたんだ。ワタシは構わなかったが起きてあらぬ誤解を受けるといけないと思って朝食の準備を始めたんだ」
ラフィが答えてくれた。
「そうだったんだ。ごめんなさい。まだあのベッドに慣れてなくて」
「こっちで寝たいならそれでもいいんだが」
「冗談・・・だよね」
「冗談は言わない」
な!ま、またそんなこと・・・モジモジ・・・言葉に詰まっていると
「また二人だけの世界を作らないでください」
「すまん。ところでミウリル」
「ん?なに」
「学校の件。良い報告ができそうなんだが」
「え!ほんと?」
「嘘は言えないからな」
「冗談でもなく?」
「もちろんだ。今日にでも行くことができるが」
「いいの?ありがとうラフィ、大・・・」
私は大急ぎで口を塞いだ。勢いに任せてとんでもないことを言うところだった。
「大?トイレですか?」
「そんなわけないでしょ。でもトイレは行きたい」
私は逃げるようにその場から去った。
今日からミュリエルと同じ学校に通える。ちょっと、いやかなり楽しみ。きっとびっくりするよね。
その顔を想像すると思わず笑いが込み上げてしまう私だった。
10月最初のアップです。
読んでいただきありがとうございます。
あとちょっとで投稿を初めて一年経ちます。早い。それによく続いたなとも思っています。
ダラダラ長々と書いております。読んでもらえるだけで幸せを感じております。
まだまだ終わりそうもないし、いきなり終わってしまうかもしれない展開です。
それまでお付き合いしていただけるとさらに嬉しいです。
次回もよろしくお願いします。




