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ワタシ死ねないみたいです。あと○○になる方法、探してます。  作者: マナマナ


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私に祝福を・・・ください

 身体を揺らすのは誰?

「おい。おい。起きろ」

「・・・ヴィヴィ?」

「着いたぞ」

「え!ホント?」

「本当だから起こしたんだが」

「・・・そう・・・ありがとう・・・なんかごめん」

「なんで謝っている」

「だって・・・うっかり寝ちゃうなんて・・緊張感全然ないね、私」

「まあ、それはいいんじゃないか。これから休む暇なんてなくなるかもしれないだろ。だったら休める時に休んでおくという考えもある」

 

 そっか・・・これからどんな世界が待っているのだろう。ここから先が本当の地獄が待っている。ちょっと緊張してきた。

 気合い入れ直して先に進まなきゃ

「そうだね。ヴィヴィの言う通りだと思うよ。それともう一つありがとう。私をここまで運んでくれて・・・私・・・本当に知らなかったんだ。自分の翼が片方しかないこと」

「今はいい。それより行こう」


 私達はクルーザーを降りる。

「毎度あり。それから帰りもアップグレードバージョンにするかい?」

「そうなると思うのでそれでお願いします」

「いいねえ。羽振りがいいのは嫌いじゃない。次も頼むよ。ロゼッタだ。よろしく」

「はい。よろしくお願いします。私はミュリエル。彼女は・・・」

「私はヴィヴィエルだ」

 帰りも頼むなら名前くらい知っておいてもいいよね。それと初めて会った時に気になっていたことを聞いてみる。

「あの。聞いてもいいですか?」

「?」

「答えられるなら答えて。ロゼッタ、あなたって天使じゃないよね」

「そうだが・・・なに当たり前のこと聞いている。冥官だぞ、あたしは」

 冥官?初めて聞く言葉。天使、リンシ、レイス以外の存在。

 つい答えを求めてヴィヴィのことを見る。

「・・・初めて聞いたみたいな顔してるな」

「うん、初めて聞いたよ」

 ヴィヴィは『やれやれ』というジェスチャーで返してから

「冥官ってのは地獄の役人のこと。試験をパスしてなるエリートなんだ」

「試験?そうなんだ・・・でも天使じゃない。リンシでもレイスでもないって」

 今度はロゼッタに答えを求めるための視線を送る。

「あたしは精霊なんだ」

「精霊?」

「ああ。地獄の各階層に存在している」

 精霊?・・・そういう存在もいるんだ。天使がいるくらいなんだ。むしろ当たり前ってことなのかな・・・ここって現実の世界でいいんだよね。ファンタジーの世界なんかじゃないよね。

 むしろファンタジーって言われた方が納得できる。でもここは現実の世界。現実なんだ。人間は死なないと来ることのできない世界。

 あれ?すでにこの時点でファンタジーなのでは?

 正直いろいろあって混乱している。これから先、もっと深い階層にはまだ知らない種族がいるってことでいいのかな?

 特に敵対しているわけでもなさそうだから友好的になってもいいよね。


「君たちはこれからどこの階層に行くんだい?」

「私達これから第三層まで・・・どうしても血薔薇が欲しいんです」

「血薔薇か。刺のことは知っているよな」

「はい。ここに来る前に聞きました」

「他にもある」

「え?そうなんですか?」

「ああ。血薔薇が咲いている場所は元々血の池として使われていた。そのせいか歩いて入ってゆくことはできない。天使なら翼があるから問題ないと思うが」

 

 え!・・・それって飛んで採ってくるってこと?

 ついヴィヴィの方に視線がいってしまう。

 確か・・・私が自分で摘まないとならない。

 さっきはヴィヴィに掴まっていたからだけど、もしヴィヴィに頼むなら私のことを抱えてもらうことになる。

 ラフィとは違う。女の子なんだ。いくら私より背があるからって力がそこまであるなんて思えない。

 なら私が自分の翼で・・・片方しかない翼でやるしかない・・・

 飛べるの?

 さっきは浮くことはできた。なら少しくらい飛ぶことだってできるのかもしれない。


「ねえヴィヴィ。もう一度確認してもいい?血薔薇は私がこの手で摘んでこないと駄目なんだよね」

「そうだ。それ以外はなんの意味もなさない」

「・・・飛べるかな・・・私の翼で」

「そうだな・・・でも・・・いくら私でもミュリエルのことを抱えて飛ぶことはできない。さっきみたいに密着しているなら話は別だが・・・」

「・・・だよね。あの、ロゼッタ。もう一つ聞いてもいい?」

「ああ。あたしの知っていることなら」

「もし血の池の中に入ったらどうなるの?」

「飲まれる。上級天使でもない限り脱出はできないだろう」

「・・・え・・それって死ぬってこと?」

「そうだな・・・薔薇に血を全部吸われたら死ぬだろうな。それまではずっともがき苦しむことになる。かつての罪人のように」


 もがき苦しんだあげく血を吸い尽くされ死んでゆくってことか・・・

 もし、天使のまま死んだら私の魂はどこに向かうのだろう・・・


 だからって悩んでなんかいられない。

 こうしている間だってハニエルの時間はどんどんなくなってゆく。


「ありがとうロゼッタ。ヴィヴィ行こう」

「ちょい待ち」

 ロゼッタに引き止められる。

「もう一つ言っておくことがある。ずっと昔、血薔薇を欲しがる天使がいた。どうしても必要な理由があったからなんだろう。手に入れたいって気持ちはは欲望に変わる。あたし達精霊の中にはその欲望を糧としているモノもいる。特に血の池には多い。彼らの声には耳を貸すなよ」

 そうなったらどうなってしまうの?

 これは忠告だ。なら良い結果にはならないってこと。

 

「わかった。ありがとう。気をつけるね」

「ミュリエル、ヴィヴィ。ちょっと後ろを向いてくれ」

 言われるがままに私達は背中をロゼッタに預ける。

「お前達の無事を祈る」

 耳元でカチカチと何かを打ちつける音がする。

「これって・・・何してるの?」

「火打石って知らないか」

 聞いたことある。それって時代劇とかで出てくるヤツだよね、確か。

「これには厄除けとかお清めの意味が含まれている。お前たちのこれからが上手くいくように。あたしからのプレゼントだ」

「ありがとう。絶対に薔薇を持って戻ってくる。いってきます」

「ああ。御武運を」


 私達は正面に向き直って一礼して出発する。


「ミュリエル。こっちだ」

 ヴィヴィが差す方向。見渡す限り翳んでいて見通しが悪い。けれどその先にあるエレベーターを目指して歩るき始めた。

 こっち側は小石も少なく歩くには何も問題がない。

 下駄の音だけが私達の周りで響いている。いつしか靄に姿すら揺らいでいた。


☆☆★★☆☆


 相変わらずエレベーターの中は暗いし階数表記もない。おまけに

「本当に動いているんだよね」

 と、つい声になって出てしまうくらい静かだった。

 静かなのはいいことなのだろう。けれど多少の音くらいあった方がいいのではないだろうか。 

 だって・・・これはもう一人の私が言ってたことだ。


『電気自動車って音がなくて怖いんだよな。気が付いたらすぐ後ろにいた。今日だって轢かれる一歩手前だった。やっぱ。ある程度音って必要だよな』


 あの時は私はなんて答えたのかな?特に覚えていないってことは自分には関係のないことだと思っていたんだろうな。

 でも今はあの時の彼の気持ちはよく分かる。

 音がないなんて正直不安なことしかない。音って大事だよ。


「あの二度目ですよ。理解して慣れてください」

「そうはいっても気になるんだもん」

「そういうものですか?」

「そういうものだよ」


 足湯の後のかき氷が終わった私達は売店を見て廻ってラフィのお土産を選んだ。

 そこは実に観光地的なお土産がたくさんあってついつい目移りして決まるまでなかなかの時間が掛かったのだった。

 そのせいもあってエレベーターに乗ったのはギリギリだった・・・これって私のせい?

「はぁ・・・汗かいちゃたね」

「誰のせいだと思ってるんですか」

「分かってるよ。私のせいだよ。ごめんね」

「それに買い過ぎです。いくら先生でもこんなにはいらないでしょう」

 私達はどちらも両手にお土産の入った紙袋が握られている。

「そう?私もだけどリリエルも食べるでしょ。これくらいあっという間になくなっちゃうと思うからもっと買った方がよかったかなって。それにこれ。『天使のウエハース』なんてめちゃめちゃ美味しそうだよね」

 私はウエハースの入った紙袋をリリエルの目の前で主張する。

「そりゃあれば食べますよ。悪くなったらそれこそ問題です。食べ物は大切にってこっちも向こうも同じ考えだと思います」

「でしょ。だからたくさん食べようね」

「今度は暴食の天使、それとも肥満の天使ですか。ミウリルはたくさんの二つ名があって大変ですね」

「なによそれ。あんたが勝手につけてるんでしょ。もっと相応しい二つ名がある。私は・・・そうだな・・・祝福の天使ってどう?」

「どうって・・・急に真面目に考えないでください。本気で言ってます?」

「本気だけど?」

 リリエルはじっと見つめてから

「まあ、その気があるなら先生に相談してみるのもありですね。『祝福の天使』って登録されるかもしれません。そうなったら何を祝福するつもりなんですか?」


 本当にそんな二つ名になることができたとしたらなんて素敵なことでしょう。

 名前の通り優しさで溢れる天使になりたい。


「そうなったらいろいろ。困っている人や天使。とにかく誰かの役に立ちたいって思うの。私は二人のおかげでたくさんの幸せをもらった。なんか独り占めしているみたいで申し訳ないって思ってもいるんだ」

「面白いですよね。人間からリンシ、最後に天使です。言ったでしょ。歴史に残るかもって。だったら何か功績があった方がいいでしょう。『天使ミウリルの祝福』なんてタイトルが付くかもしれませんよ」

「なんかいいね、それ。そうだな・・・今は人間達の世界に行って自慢の翼でみんなに小さな幸せを贈りたい」

「小さいって・・・なんかセコいですね」

「全然セコくなんてないよ。思ったんだけどさ、人間って小さな幸運でもの凄く幸せな気持ちになれるんだ。それの繰り返しならみんなずっと幸せだと思うの」

「それがミウリルの哲学ですか」

「大き過ぎる幸せを受け止めるほど人間の手は大きくないの。だから掌で収まるくらいがちょうどいいんじゃないかな」


 なんでこんなこと思っているのだろう。

 でも。これは本当のことだと思う。小さな幸せで人は十分大きな幸せの気持ちを抱くことができる。

 空に虹が架かっていたら幸せだし、ご飯が美味しくても幸せ。大切な誰かと一緒にいることだって幸せ。

 

 世の中はよく見てみるといろいろな幸せで溢れている。

 気が付かなくても気が付いた時は幸せになる。


 このまま天使として過せるなら私はそういう幸せをみんなに届けたい。

 毎日の生活の中で小さな幸せを見つけることが平和な世界になる一歩なんじゃないかな。

 

 一つだけ。たった一つでいい・・・わがままが許されるなら・・・


 澄み渡ったコバルトブルーの空を自慢の翼で自由に飛んでから綿菓子のようなフワフワの雲の上に寝そべって幸せに包まれている世界を眺めてみたい。


「素敵な将来の夢。ミウリルは優しいんですね」

「そうかな?ちょっと照れる」

「天使は素直が一番なんです。歯の浮くようなことだって天使にはできます」

「素直って心が真っ白で気持ちいい」

「あの、ミウリル。あたしもいいですか?」

「なにを?」

「一緒に空を飛んで雲の上に寝そべっても」

「もちろん。私も同じこと思った。きっとラフィも来るって言いそう」

「だったら三人でピクニックしましょう」

「そういえばそんなこと言ってたね」

「先生に美味しいお弁当作ってもらって」

「そこは任せるんだ」

「きっとノリノリで作ってくれるはずです」

「そしたらクレープも注文しよう」

「バナナは入れるんでしょうか」

「もちろん。なんか楽しくなって来た」


 将来か・・・

 人間としての将来と天使としての将来。どっちが私にとって相応しい将来になるんだろうな。


「さ。着きました。というか帰ってきました」

「うん。そうだね。ただいまラフィ」


 扉が開くと目の前にはラフィの姿があった。

 なんでこんなに心が喜んでいるのだろう。

 たった一晩のことなのに気が付いたらラフィに抱きついていた。


☆☆★★★★


「これが?そうなの?」

「ああ。じゃあ行くか」


 何もない河原に突如現れたエレベーター。それ以外の建造物はない。ただポツンと小さな光が一つあるだけ。

 遠くから見たら郵便ポストみたいに見えなくもない。


 ヴィヴィがボタンを押すと扉は音もなく扉が両側に開いてゆく。中には誰も乗っていなかった。無機質で近代的。何とも地獄の風景に似合わないことこの上ない。もう少しこの土地の雰囲気に寄せることはできなかったのだろうか、なんてことを思いながら中に入ると同じように音もなく扉は閉まった。


「あれ?階数のボタンがないね」

「音声認識。言うだけでいいんだ」

「そう・・・なの?」

「第三階層」

 ヴィヴィが言うとセンサーが反応したらしく動き始めたことを身体で感じることができた。


 何故だろうと疑問。ここは地獄なのになんでこんなにハイテクなんだ。現世にだってそんな機能を備えているエレベーターなんて存在していないのに。


「なんかさ、ハイテクだよね」

「そうか?まあ、こうなったのは最近の話だ」

 う〜ん。こんな発想できるってことはこれを作ったのはもしかしてレイス?

「これを考案したのってヘブヘルのレイス?」

「えっと・・・なんとかジョブスっていうレイスだったかな」

「・・・なんとか・・ジョブス」

 その人の名前って聞いたことある。確かリンゴマークの・・・

「・・・確かそんなこと言ってたかも」

 知ってる。

 世界にスマートフォンを最初に生み出した天才。あの人が理想をどんどん現実世界に形として実現していったんだ。

 まさかレイスとして地獄に留まっていたなんて・・・

「それとレオナルドもアイデアを出したって聞いたことある」

「レオナルド・・・?」

「なんかずっと昔からいるレイスなんだ。人間だった頃はいろいろやっていた人だ。科学、医療、芸術。他にもあったかな。ここいらじゃ有名なレイスだ」

 ふ〜ん・・・そうなんだ。だから現世のようで現世より少しだけ先を行っているってことなの?

「お。着いたな」

 

 扉は音もなく開く。

「う・・・なんか暑いところだね」

 扉から入ってくる熱気が入ってくる。

「ああ。ここは気温は高いしおまけに蒸している」

 じっとしていても汗が滲んでくる。おまけに纏わり付いてくる湿気。

「・・・真夏の中に放り出されたみたい」

「お互い熱中症にならないようにしないとな」


 ここに来る準備として水とタオルと冷感スプレーを持ってきていた。

 早速帯からタオルを出して頬を伝う汗を拭う。


「薔薇の場所はどっち?」

 ヴィヴィを見ると水を飲んでいた。

「こっちだ」

 私達は薔薇を目指して歩き始めた。


 地獄の第三階層

 真っ赤な空。それに大地だって赤み掛かっている。実際に暑いのに見た目が一番暑さを彷彿させる。


「誰もいないね」

「あまり来ないかな。面白いところはあまりない。一部の者しか・・・でも温泉があるからそっちの方が人気かな」

「温泉?」

「あるんだなこれが。でもここよりちょっと下の階層。3.5階層ってとこかな。階段があってその先にあるんだ」

「そうなんだ・・・今度みんなで来てみたい・・・かな」


 赤い地面は砂地で歩く後ろに下駄の後が残ってゆく。

 見渡しても景色が変わらない。確かに温泉以外何もなさそう。好んで来るなんて一部の者だろうな。

 そんなことを思いながらヴィヴィの後についてゆく。


 それにしてもあとどれくらいで薔薇の元に着くのだろう。今はこのまま歩くしかない。それに喋ってばかりだと無駄に体力を消耗しかねない。

 少しでも寝ていたことが今ではよかったと思っている。


「ちょっと休憩しよう」

 ヴィヴィが水を補給しているので私も飲んだ。冷たくて美味しい。最初に思っていたことだけどこの帯の中って異次元にでも繋がっているのだろうか。いろいろ持ってきたが膨らむこともないし重さを感じることもない。

 これもレイスが考えたモノなのだろうか。

「ねぇ・・・ホントは飛んでった方がいいとか?」

「まあな。ここも平地だし低ければ問題ない。でも・・・」

「それが出来ないのって私のせいだよね。翼がちゃんとしていないから」

「今それを言っても解決はしない。失った翼を取り戻すことは不可能なんだ」

「・・・うん。でも信じて欲しい。私は堕天使なんかじゃないの」

 ヴィヴィは水をしまうと

「今はいい。ミュリエルのことは終わったら聞く。だからそれまでは考えるな。堕天使じゃないなら私は信じる」

「・・・ありがとう」

「じゃ出発するか。半分は来たかな。あと少し。今のところ順調だな」

「うん」


 風景はあまり変わらないし誰ともすれ違うこともない赤い大地を再び歩き出す。

 

 このまま全てが順調に穏便に終えることを願う。

 地獄で誰に、何に願えばいいか分からないけど・・・私達の願いが届いて欲しい。

 

 どうか・・・私に祝福を・・・・・・・・・・・・ください。


☆☆★☆★★★


 わ!・・・いくらテンション上がってたからって・・・もしかして私・・とんでもないことしてる?

 自分がしたことなのに体中が熱くなってくる。

 どうしよう・・・恥ずかしくて顔を上げられないよ・・・


「おかえり。天界は楽しめたかな?」

 ラフィは私のことを軽く抱きしめて聞いてくる。

「・・・うん。素敵なところだと思った」

「そうか。それでミウリルはいつまでこうしているつもりだ?ワタシは構わないが」

 ゆっくり顔を開けてラフィのことを見る。

「ご、ごめん。急に・・・」

「問題ない」

「顔見たら嬉しくて・・・その・・・つい・・・」

 今度はゆっくり身体を放す。けれど身体の熱はまだ健在だ。

「喉・・・乾いたな」

「それじゃどこかに入ろう」

「うん・・・っていうかリリエル静かだね。疲れたとか?」

 リリエルは無言で私のことを平坦な視線でじっと見つめている。

「別に疲れてなんていません」

「だったらなんでそんなに不機嫌なの?」

「別に不機嫌でもありません」

「そう?かな?」

 深く溜息をつくと

「あのですね。急に二人だけの世界を作らないでください。ミウリルがいかにはしゃいでいたかよく分かりました。大胆過ぎて呆気に取られただけです」

「う・・・そのこと・・・私も自分に驚いているから・・・放ったらかしてごめん」

「それで?」

「え?」

「愛しの先生に会えて・・・」

 ちょっと何を言うつもり?慌ててリリエルの口元を押さえる。

「あの・・・今の・・・」

 聞こえた?聞こえてない?どっち?

 っていうか何そのポーズ。

 ラフィはゆっくりと髪をかき上げて腰にもう片方の手を添えて

「・・・なにしてんの?」

「いやなに、ミウリルの気持ちに答えているだけだ」

「え!・・・あの・・・これはリリエルが・・・」

 駄目だ。言葉を口にする度に身体が・・・熱い。

「いつでも歓迎だ」

「・・・なにを?・・・ですか?」

「だからいつでもワタシの胸を貸そう」

「はあ・・・それは・・どうも・・・」

 今なら頭でお湯を沸かすことができるかもしれない。

 素直過ぎるのも度を越しているよね。

 こうなった理由。この際だから全部天界のせいにしてもいいよね。


「・・モゴモゴ」

「あ、ごめん。つい力が入った」

「・・・別にいいですけど。それより落ち着きましたか?」

 冷静になろうと一生懸命深呼吸。

「はぁ〜・・・ほんと二人共ごめん。テンションが・・・」

「それは分かりましたが・・・お返しです」


 え?


 理解する前に

「きゃああああ。な、なにするのよ!」

「だから仕返しです。今回は容赦しません。イッキにいきました」


 思いっきりその場に座り込む。

「ちょっと!こんなのない。お嫁に行けなくなったらどうしてくれるのよ」

 急いでスカートを元に戻しながらつい睨んでしまう。

 ラフィの笑顔の意味って?

 それに聞くまでもなく見えたよね。

「これはなにかの祝福なのか?」

「は?そんなことあるわけないじゃん。事故なの、っていうかリリエル。ついにやってくれたね」

「だから仕返しだと言いました。これでおあいこです」

「私の方が大事故なんだけど」

「減るもんじゃないです。それにパンツくらいで騒がないでください」

「パンツくらい?乙女のパンツは神聖なの。好きな相手じゃないと見せることなんてないんだから」

「だったら問題ないでしょ。先生のこと好きですよね」


 うっ!・・・そのことにすぐに反論できない。とても良くしてもらっているのは事実。

 でもラフィのこと恋愛とかの好きかなんて分からない。

 はっきり言えるのは必要な存在ってこと。だから顔を見た時にはどうしようもなく嬉しく思った。素直な気持ちの行動なんだ。


「あの・・・祝福って言ったよね」

「ああ。言った」

「それってどういう意味なの?」

「そうだな。ミウリルの気持ちが嬉しいと思った」


 え?ラフィまでそんなこと言うの?

 せっかく収まった熱が再び再燃する。


「・・・私も嫌いなんて思っていない。でもこの好きがどんな意味か分からない」


 心臓がドキドキじゃなくバクバク脈打つ。

 嬉しいってラフィは言った。その言葉が私も嬉しい。

 これって祝福ってこと?あまりにも大きくてまだ受け止めるだけの気持ちの準備ができていない。

 でも今はとても幸せな気持ちだ・・・そうだ


「あのラフィ」

 ニッコリとしている笑顔が眩しい。

「私は誰かに祝福をあげることってできるのかな?」

「祝福?」

「はい。もし天使としての使命を授けられるなら私はみんなに祝福をあげたいって天界で思ったの」

「そうか。実に天使らしい振る舞いだな。本気なら天使でも人でもいい。ミウリルらしい祝福を与えてみるんだな。その結果次第でミウリルのことを『祝福の天使』として登録してもいいだろう」

「そんなことでなれるの?」

「そうだな。そんなことが意外と難しかったりする。誰しも幸せの価値は違う。善かれと思ってしたことも相手によっては不幸を招くことだってある」

「ふうん・・・そっか。もっとちゃんと考えてみる」

「それがいい。ではそろそろ行こう。荷物もかなりあることだしな」

「お土産たくさん買ったんだ」

「見れば分かる」

「おかげで先生から預かったお金ほとんど使いました」

「そうなの?だってリリエル止めなかったじゃん」

「ミウリルが楽しそうだったからです」

「そっか。ありがとう。おかげで満喫した」

「そりゃどうもです。なんですかその手は」

「いいから。仲直りしよ。リリエルのおかげだもん。パンツの件は忘れる」

「仕方ありませんね。あたしもやり過ぎたって思っていました。ごめんなさい」

 リリエルとしっかりを握手を交わす。

「そうだ。とっておきのお土産あるんだ。リリエル。出してもらってもいい?」

「あれですね。分かりました」

 リリエルはポシュットから青薔薇を出す。

「やっぱりか。実は君たちがエレベーターから下りた時から匂いがしていた」

「そうなんですか?」

「この匂いはいつ嗅いでもいい。ミウリルが摘んだのか?」

「はい。でも一本だけってリリエルに言われて」

「十分だ。早速帰って水につけてやらないとな」

 青い薔薇は天界で見た時と変わらず透き通るような色をしている。

 ポシェットから出すと私達の周りだけ薔薇の匂いで包まれていた。


 これも幸せのひとつ。

 私の祝福って誰か必要としているのかな。もし必要としているなら私は笑顔で与えてあげる。


 自分自身がどんどん天使になっていく。そんな気持ちでいっぱい。

 でもいずれ現世に帰るってことを考えるとちょっとだけ寂しい気持ちも同時にしていた。

8月ですって。夏はまだまだ続く。

いろいろあったことに祈りを捧げています。

読んでいただきありがとうございます。

誰も不幸になってはいけないはずなのに・・・

悲しいニュースに胸を痛めます。

でも笑顔は失わないように笑っています。

物語も今どの辺だ?まだ先が見えない私です。

いろいろあるけど頑張って次回も書いていきます。

さあ。背筋を伸ばして生きていこう。

次もよろしくお願いします。

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