表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワタシ死ねないみたいです。あと○○になる方法、探してます。  作者: マナマナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
65/66

薔薇

 私は半分食べたところでナイフとフォークを置いた、

「・・・ごめん。もうお腹いっぱい」

「なら残りは私がもらう」

 ヴィヴィは私が残した朝食を自分の方に引き寄せるとキレイに食べてしまう。

「・・・・・・・」

 私は言葉なく見ていた。

 じっとしていると周りの声が妙に大きく聞こえてくる。


『ハニエルが倒れたらしい』

『え〜!大丈夫なの?』

『なんでもあの時と同じみたいなの』


 そんな言葉。全部私のせいだと思うと余計に心苦しくなってくる。


「・・・あの時?」

 話の中で一番引っかかった言葉・・・理由・・・理由を聞かなきゃ・・・

「・・・ねぇヴィヴィ」

 ヴィヴィは分かっている、みたいな顔で頷いて答える。

「ずっと昔に同じことが起きたことがあったんだ」

 ヴィヴィは紅茶の入ったカップを包むように持って中をじっと見つめている。

「・・・そうなんだ・・・」

「ハニエルもまだ若かった。今よりもずっと」

 もっと昔。小さな頃のハニエルを想像してみる。

 ・・・可愛かったんだろうな。今もだけど・・


「私がやらなきゃならないこと、教えて欲しい」

「まあ待て。今すぐどうこうできるわけじゃない」

「だってすぐになんとかしなきゃならないんじゃないの?」

 ヴィヴィは冷めてしまった紅茶をイッキに飲み干すと私の瞳を真っ直ぐ見つめる。

「これから二つ。あるものを集める」

「あるものって?」

「一つはここ地獄に咲いている赤い薔薇」

「赤い薔薇?それだったらすぐに採りに・・・」

「まあ、慌てるな」

 ヴィヴィは私の言葉を遮る。

「確かに赤い薔薇はこの学園にだって咲いている。けれど欲しいのはそれじゃない」

「?それじゃない?何か特別なってこと?」

「そうだ。血のように真っ赤な薔薇。実際に血を吸って赤く染まっていると言われている」

「実際に血を?」

「本当のところは分からない。かつて地獄には『血の池地獄』と呼ばれている場所があった」

「あった?今は?」

「もうないんだ。今はその面影くらいしか残っていない。池を埋め立てた跡に薔薇が咲くようになった。『血薔薇』と呼ばれている」

「ちばら・・・それって地獄のどこに咲いているの?」

「ここから三つ下の階層」

「三つ・・・それって簡単に行けるところなの?」

「ああ。エレベーターで入口までなら」

「ならすぐに」

 立ち上がる私のことを鎮めるように

「だから慌てるな。こっちはすぐ手に入る。けれどもう一つの方が問題だな」

 ヴィヴィはちょっとだけ顔に影を落す。

「天界に咲く花が必要なんだ」

「・・・天界の花?」

「ああ。どこかの階層にだけ咲く花がある。その二つを揃えないとならないんだ」


 話を聞いて瞬時に頭の中で思いつく天使の顔。

 ラフィならその花のことを知っているかもしれない。

 無意識に手が端末を触っている。

 後はタップするだけで確認することできるのに私は決心がなかなかつかないでいた。


「天界の花は空を写し取ったような青い薔薇」

「青い・・・薔薇」


 現世で自生している姿を見たことがない。自然界では存在しない色。

 今までたくさんの育種家達が挑戦してきた色。

 そんなことが書かれている本を読んだことがある。

 たくさんの苦労の末たくさんの青いバラが作られた歴史の本。

 実際は青のように見えても完全な青色色素を持った薔薇は存在しなかった。


 なぜ。存在しなかったのか。


 それは主が薔薇を作る時に青色は冥界を連想させるから許しが出なかった。なんて神話も存在するくらいなんだ。

 古い物語に登場したこともある。

 青い薔薇

 完全に夢物語でしかなかった。


 だが人々の追求は続いてゆく。

 月日が流れ

 ついに科学という手法を用いて青いバラは現世にその姿を表した。

 

 でも。実際には天界に存在している。

 神様は気まぐれってこと?


 青い薔薇を作った人間達。

 人間だってやればできるんだってことの証明みたい。

 ちょっとは感心してくれたのかな。それとも天に対する冒涜として受け取られているのかな。


「どうした?」

 話し掛けられて我にかえった。

「青いバラのこと考えてた。見たことないなって」

「私は一度だけ」

「それって・・・」

「ああ。想像の通りだ」

「だったらどうやって手に入れたの?」

 ヴィヴィは記憶を辿るような表情をして

「あの時はどうやって手に入れたんだっけ?私も小さかったから詳しくは覚えていないんだ。正直、この目で見た時はハッとするくらい瞳を奪われた。言葉にならないくらいキレイで荘厳だった」

 そんなに?私が現世で見た薔薇も確かにキレイだった。写真だったけど。

 なら。天界の薔薇はそれよりももっと凄いのかな。

「見てみたい・・・ねぇヴィヴィ、どうしたらいいの?」

「天界に知り合いでもいれば案内してもらえるだろうな」

 ハニエルを救うためのアイテムのことは分かった。

「ヴィヴィ。先に赤い薔薇の案内して欲しい」

「もちろんそれは協力する。でも案内だけだ」

 言っている意味がよく分からない。

「どういうこと?」

「実際はミュリエルが摘んでこないとならない」

「私が?」

「そうだ。言っただろ。お前にしか治せないって」

「じゃあ青い薔薇は?」

「私達は地獄の天使。だから赤い薔薇はミュリエル本人じゃないと駄目だが、青い薔薇は天界の天使に頼んで摘んでもらうことでいいはず。本来ならお前が直接の方が効果が強いと思うけど多分無理だろうな」

「そんな。だったら誰かに許可をもらって・・・」

「天界はここほど甘くない。ここよりずっと厳しいところなんだ。実際、天界の天使ですら入れない階層があるらしい」


 天界に入れない場所がある。天界の天使ですら。

 だったらますますラフィに頼むしかない。事情を話せば協力してくれるよね。

 あとで話そう。誠意を示せばどんな状況か伝わるはず。いや、絶対に協力してもらわないと駄目なんだ。

 もし。断られたら私が天界に行って青い薔薇を摘んでくればいい。

 

 このことってカーリ様やルシェルに報告した方がいいのかな?

 学園でのことは学園で解決しろなんて言わないよね。

 細かい情報ならランヴェルに聞いてもいいよね。


 みんなのことを思うと勇気が出てくる。

 それにミウリルに繋がることができれば協力してくれるかもしれない。

 私達が今こうしていられるのは運命共同体だから。

 彼女にもきっと私の気持が伝わるはず。


「ヴィヴィ。案内して」

「いいよ。と言いたいところだがそう簡単じゃない」

「どういうこと?」

「どっちの薔薇も摘んだらその日のうちに枯れてしまうんだ。だから日を揃えないとならない。枯れてしまったら効果がなくなってしまうんだ」

「そんな・・・一日しか持たないなんて」

「すぐに枯れないだけ良しとしないと。片方を手に入れたらもう片方もその日のうちに揃えたら何も問題はないんだ。計画的にいかないと時間だけが無駄になる」

「でも早くしないとハニエルが・・・」

「大丈夫。今は眠っている。ハニエル自身の時間を止めて」

「時間を止める?そんなことできるの?」

「ああ。私の能力なんだ。対象の天使の時間を止める。だから病は進行しない」

 ヴィヴィの能力に驚いたが同時に安心もする。

「安心したところ水を差すようだがはっきり言っておく。私の能力は三日が限界だ。三日過ぎればハニエル自身の時間は再び動き出す」

「だったらまた能力を・・・」

 手で遮られる。

「一度使ったら三日かかる。連続では使えないんだ」

 その言葉に肩を落す。けれど三日ある。実際にはもう三日を切っている。

 私がやらなきゃならないこと。それは確実にあと二日で薔薇を集めること。

「短期決戦か・・・ヴィヴィ、お願い私に力を貸して」


 ハニエル・・・もう少し待っていて。

 必ず赤と青の薔薇を持って助けてあげる。

 だからそれまでは静かに眠っていて。

 そして。

 元気になったら三人でお茶しようね。


「やっぱりヴィヴィの言う通り。ちゃんとご飯食べないと力出ないね」

 私はお代わりを求めてカウンターに向かっていた。


☆★☆★☆☆☆


「んぐ、んぐ」

 私は今、天界で流行っていると言われている『天使のタピオカ』なる飲み物を楽しんでいる。

 現世でも流行っていたけど飲んだことなかったな。

「これ美味しいね。それに食感がおもしろい」

「気に入っていただけてなによりです」

「ねえリリエルの一口ちょうだい」

「いいですよ。最近流行り始めた『天使のクレープ』クリームのフワフワとパリっとした生地の食感のアクセントがたまりません」


 お互い交換。

 リリエルの齧ったところ。一口がかわいい。いただきます。


「ん。ホント美味しい。あんまり甘くないのに甘くて美味しい」

「ずいぶん矛盾した感想ですね」

「そう?もう一口もらってもいい?」

「いいですよ。こっちもいただきますから」

 もう一口食べると中からバナナが顔を覗かせる。ついもう一口する。

「ちょっと今・・・」

「ごめん。バナナがね『食べて』って言ってるみたいだったの」

「ほう・・・バナナ、好きなんですか?」

「ん?なにニヤニヤしてんのよ」

「別に。ミウリルはバナナが好きって認識しただけです」

「あ。その顔」

「顔がどうかしました?顔は顔ですよ」

 いかん。またつられるところだった。っていうか、むしろ私の方が頭の中ピンク色しているみたいじゃん。

 頭を振って自分を落ち着かせる。

「はい。ありがとう。ラフィに言ったら作ってくれるかな」

「バナナですか?」

「違う。クレープ。もちろんバナナはあってもいい」


 雲の上のカフェでの一休み。

 天界の街ヴィロンは現世で例えるなら『原宿』とか『渋谷』みたいな感じを受ける。

 若い天使の方が多いからなのかな。天界、地獄、どっちの天使も街を歩いているだけで楽しんでいる。

 私は正直初めての体験。

 実際に通りかかったことはあったけど。

 いつももう一人の私だったから彼が受ける印象くらいしか知識がない。

 けれど実際に自分自身の足で立ってみると世界が急に広がりを見せて、この場にいるだけでも楽しいって感じている自分がいる。


「楽しい街だね。なに見ても面白いね」

「ま、若者の街ですから」

「食べ物も美味しい。それと思ったんだけど。リリエルのカッコしている天使の方が少ないね」

「みんなそれぞれのファッションを楽しんでいます」

「リリエルは楽しまないの?」

「あたしはこの格好が好きなんです」

「あ、あの服、リリエルに似合いそう」

 たまたま目の前を通り過ぎてゆく格好が本当に似合いそうだと思う先から言葉になって出てくる。

「話し聞いてます?」

「聞いてる聞いてる。ねぇ試着だけでもいいからしてみようよ」

「それは聞いてないって言うんですよ・・・え!ちょっと待ってください」

「食べ終わったなら行こうよ」

 リリエルの背中を押すようにカフェを出る。

 そのまま行き交う天使達に混ざって私達はウインドウショッピングしながらさっき見た服を置いてある店を探し始めた。


「そうだ。ラフィに連絡入れてもいい?」

「どうしたんですか急に」

「せっかく設定したんだもん。番号知らせようかなって」

 端末の設定は実に簡単だった。

 画面にカードを翳すだけでよかったのだ。面倒な細かいことはカード情報の元、スムーズに終えることができた。

 そして、リリエルと連絡先の交換。ラフィの番号はリリエルから聞いて直接登録。

 ちゃんと繋がるか急に試してみたくなった。


「浮かれ過ぎですよ。ちょっとは落ち着くことできないんですか?」

「もちろん落ち着いてますよ。でも次から次へいろんなことが浮かぶの」

「そういうのを浮かれてるって言うんですよ」

「まあまあ。すぐ終わるから」

「仕方ありませんね」

 私は画面をタッチしてラフィに電話を掛ける。

 画面には呼び出しのアイコン。それと実際に鳴っている呼び出し音。

「なかなか出ない。気が付いてないのかな?」

「まさか。きっとミウリルが未登録だから警戒しているだけでしょう」

「警戒って。そうなのかな。それなら寂しいかも」

「あのですね。感情の起伏が激し過ぎ。ノーマルな状態はないんですか?」

「ノーマル?そんなの分かんない。出ないよ・・・声、聞きたかったのに」

「恋人ですか」

「ち、違う。でも・・・ちょっと恋しいなって」

「はぁ〜先生の魅力はこんな天使さえも魅了してしまう」

「なによ、こんな天使って」

「言い方が悪かったですね。変な天使。これならどうですか?」

「どっちも言い方。でも楽しいから許す」

「やれやれ。それで?」

「またあとで掛け直してみる」

「先生のことですから掛け直してくれるかもしれませんよ」

「そうなったら焦らしてあげるんだから」

「性格の悪い天使ですか。それともツンデレ天使ですか。それで?行くんですか?試着」

「もういいかな。それよりもっと案内してよ」

「気まぐれ天使。でもいいですよ。試着なんてしたくないですから」


 ヴィロンの街は大きさはそんなになかった。

 私達は街の端に来ていた。目の前には真っ白な雲の道が続いている。


「この先には何があるの?」

「知りたいですか?もちろん次の階層の街に続いています」

「そうなんだ。遠いの?」

「行きたいんですか?」

「だって天使になったからには行けるところまで行ってみたい、かな。それに今夜には帰るから」

「馬車を使えばすぐ到着できます。でもそれはこの次にしましょう」

「そう?まだ時間あるんじゃないの?」

「そうですけど。いいんですか?」

「なにが?」

「先生にお土産買うって言ってませんでしたか?」

「そうだ、言ってた。街に戻って探したい」

「なら、いいものがあります。こっちに来てください」

 道を少し逸れたところに階段があるのを発見。リリエルは歩いてゆくので私も後に続いた。

「何があるの?」

「今日帰るならお土産はこれがいいと思います。ミウリルに見せたい景色があります」

「へ〜。そうなんだ。だったら先に言ってよ」

「先に言ったら楽しみは半減しますから」


 階段を下りきった先に見えた景色。

「うわ・・・広い」

「レテ平原ですよ」

 とても空気が澄んでいる。呼吸をするだけで心地良くなってくる。

 天界ならではの光景に感動してしまう。

「よく見てください」

 リリエルに言われて見渡す限り見てみる。

「特になにかあるとか・・・あっちの方に青いのが見えるね」

「行ってみましょう」

 自然に繋がる手と手。私達はレテと呼ばれる平原を一緒に歩いてゆく。


☆・・・☆★


「これって」

「キレイですよね」

「青い薔薇なんて初めて見た」

 空の青をそのまま切り取ったような色。じっと見ていると花びらの中で雲が流れてゆくんじゃないかって思うほどの青い色。

「これをお土産にしましょう。先生好きなんですよ」

「摘んでもいいの?」

「はい。でも一本だけですよ」

「うん」

 目の前の青い薔薇。一本だけゆっくり持ち上げると何の抵抗もなく私の手に収まる。

「いい匂い・・・私も気に入っちゃった」

「色もですが匂いも最高ですよね」

「もっと持って帰ったら駄目なの?」

「一本で十分です。欲張りはいけません。・・・えっと」

「分かったから。だから変な二つ名付けないでよね」

「あたしのポシェットに入れときましょう。それと。そろそろヘブヘルタワーに行きましょう」

「帰るんだね」

「そうです。あたし達は地獄に向かうんです。先生の元に」

「あ。まだ電話来ない」

「いいじゃないですか。もう少しで会えるんですよ」

「それもそっか」


 青い薔薇。喜んでくれるといいな。

 見上げるとやっぱり同じ色。

 天使。ますます好きになってゆく。

 ああ・・・この空を自分の翼で飛ぶことができたら素敵だろうな。

 またみんなで一緒に飛んでみたい。何の制約もなくどこまでもどこまでも。

 だって空に果てなんてないのだから。

 

 私は私をもっと楽しませてあげたい。

 今はそんな気持で一杯だった。 


昼も夜も変わらない暑さ。皆さま夏バテ気をつけて。

読んでいただきありがとうございます。

自分がオーブンの中でローストされているような気分の毎日。

頭がうまく廻らない。

ちょっと短めになってしまうのも仕方ない・・・わけないだろ。

でもまあ、だらだら長くするのもどうかなっと。

話は変わって、学生諸君は夏休みか。どうりで電車が空いているわけだ。

夏ですよ。だから楽しもう。意気込みだけは立派ですな私です。

次のアップはとりの日?駆け込めケン○ッキー、なんてね。

ではまた次回。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ