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ワタシ死ねないみたいです。あと○○になる方法、探してます。  作者: マナマナ


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61/67

ルールを破ると・・・

 これが・・・

 天界まで続いていて、且つレイスが建造したというヘブヘルタワー・・・

「ほお・・・」

「驚いていますね」

「・・・だって・・・ほお・・・」

 感動を通り越して感嘆という感想しか出てこない。

「その気持ち分からんでもないが、さすがに驚き過ぎだろ」

「ハニエル・・・ヴィヴィ・・・」

 あまりの高さに酔ってしまって二人に寄りかかってしまう。

「大丈夫?ミュリエル」

「・・・ありがとうハニエル。ずっと上を見ていたら方向感覚見失った」

「いくら見ても天辺は絶対に見えない」

「そうみたい。ヴィヴィもありがとう」

 体勢を立て直す。落ち着かせるための深呼吸。

「・・・二人共ごめんね。あらためて感想言うよ。すごい!この一言以外の言葉が思いつかないよ私」

「いいって。最初の方でミュリエルの気持ちは十分分かったから」

「それって・・・恥ずかしいな。だって唸っていたたけでしょ」

「素直でいいんじゃない?」

「そうそう天使は素直が一番だぞ」

「じゃあ入りましょ」

 ハニエルに腕を取られる。

「また。ハニエル。私は?」

「ヴィヴィはね。はい」

 手を差し出すハニエル。

「格差を感じる」

「なら辞めるってことでいいのかしら」

「それは・・・駄目。却下」

 なんとも奇妙な三人の姿。きっと周りから奇異の目で見られている。

 けれど

 同級生とこんな風にしていることが不思議と心地良く感じるのは現世でできなかったことと関係しているのかな、あるいはその反動とか。


 タワーの中は言うまでもなく広くて高くてとても賑わっている。

 ここには天界と地獄、双方の天使達がショッピングを楽しんでいる。現世でも感じたことだけど、みんな好きだよねショッピングモール。いろんな店があって。でもみんなそれぞれで他店との競争なんてしていない。みんなが気になったものを見つける、いわば宝島みたい。


「さて。どこから見ようか」

「ヴィヴィのおススメとかあるの?」

「そうだな。ちょっくら行ってみようか」

「なんで私じゃなくてヴィヴィに聞くの?」

 掴んでいる腕に力を感じる。妬かない妬かない。

「ハニエルのおすすめも知りたいな」

「だったら私の方が近いから」

「まあ。効率を考えたら」

「じゃあ行きましょう」

「ちょっと。その前に並んで歩かない?この体勢って歩き難い」

「それもそうね。じゃあ」

 ハニエルはヴィヴィの手を離したのに

「これは?」

「私は歩き難くなんてないよ」

「そうだけど。ここは平等にしようよ」

 ヴィヴィの悲しそうな顔。やっぱりこの二人って昔からの知り合いで親友なのかもね。


 親友か・・・かつて親友と呼べる人がいた。こんな言い方だと遠い過去みたい。

 でも。

 親友て言葉だけで繋がっていた人。だって彼は本当は親友なんかじゃない。前の私だった頃の親友なんだもん。

 今の私にとって・・・彼はどんな立ち位置にいるのだろう。

 美有の気持ちが重なってちょっと複雑だった。


 キスした時の気持ち・・・あの時は感謝だったし動かしたのは美有だったかもしれない。


 やっぱり新月がいろいろと混乱させていたかもしれない。


 私が元の世界に戻ることを待っていてくれる。


 彼が待っているのは私?それとも美有?

 複雑な気持ちだよ。

 私だって嫌いじゃない。でも恋愛で好きとも違うような・・・

 あ〜・・・どうしたいの私。どうしたらいいの私。

 美有がいない今は彼女の影響はないのに。

 言ってしまえば本当に他人なんだ。彼と歩んだ歴史なんてほんの些細な日々なのに・・・


「どうしたのミュリエル」

「え!・・・えっと二人を見ていたら親友っていいなって。羨ましいなって」

 二人は顔を見合わせて

「そう?小さい頃から一緒だったから幼馴染みとも腐れ縁ともいう」

「私にはいないから」

「今からでもなれるよ」

 ハニエルの気持ちは腕から伝わる。

「・・・そう言ってもらえるのは嬉しいよ。でもさ、親友になるのって時間も必要だと思うんだ。このまま一緒にいれたらハニエルもヴィヴィも私にとって親友になる。でも・・・」


 でも。

 私はいずれこの世界からいなくなる。それどころか記憶すら失ってしまう。

 それに

 現世に帰っても私には親友なんていないんだ。

 急に心にぽっかり穴が空いたような気持ち。


「なんか暗いこと考えてる」

「そうかな・・・そうかも。私はいつかいなくなる」

「今はそんなこと言わないでよ。私も暗くなっちゃう」

「ご、ごめんね。そんなつもりはないんだ。でも知っての通り私は仮のつく天使なの。ずっとこの世界にいることは多分出来ないの」

「またそれ?そんなの関係ないよ。出会ったんだよ。私とミュリエルはちゃんと出会った」

「・・・うん。そうだね。出会った」

「だからミュリエルが学園を去る・・・なんてホントは嫌だけど・・・それまで親友になろうよ。時間って勘違いしている」

「勘違い?」

「そう。そんなの関係ないよ。親友だって思えば親友だよ。ねえ。私の名前は?」

「名前?」

「そう。答えてよ」

「・・・ハニエル」

「正解。じゃあ今度は私が答える。あなたの名前はミュリエル。どう?」

「・・・も、もちろん合ってる。正解。ねえ。一体なんなの?」

「もう。わからないの?私達はお互いの名前をちゃんと知っているの」

「うん・・・」

「それだけでも親友になるには十分なの。名前を知れば相手のことが心に残るの。いつだって思い出すことができる。私はいつだって、いつだってミュリエルのことを覚えているし思い出している。心の中にいるの。ちゃんと。時間の長さなんて関係ないの」

「・・・私もハニエルのこと、目の前にいない時・・・思い出すことある」

「ね。お互いの心の中にいるの。もしミュリエルが突然いなくなってもずっと心に残っているよ。大切なの。こうして過している時間さえ」


 そんな風に言われると正直顔が熱くなってくる。大切・・・そんなこと今まで言われたことなかった。現世にいた頃だって『好き』と言われたことはある。でも『大切』はない。

 どっちの言葉も面と向かって言われると心が嬉しくて騒がしい。

 今だってハニエルの真面目な顔が余計に追い風となって私の気持ちを騒がしくさせている。


「あのね・・・私もハニエルのこと大切な天使なの。私といてくれることが嬉しい」

「ねえ。私達ってこんなに想い合っている。親友のその先にだってミュリエルとだったら行ける気がするの」

「親友の先?」

「うん。それはこれから私達で創っていきましょう」

 ハニエルは身体を寄せてくる。彼女の甘い匂いが私のことを落ち着かせてくれる。

「行けるなら・・・私も行ってみたい」

 お互い瞳を見つめ合う。そしてお互い引き寄せられるようにくちびるが・・・


「はいはい。おしまい。これ以上は駄目だから」 


 ヴィヴィによって私達が引き離される。

「なによ。ヴィヴィ。いいところだったのに」

「お取り込み中なのは分かった。けどな。恥ずかしくてこれ以上は見ていられない。それに私がいることを忘れていないか」

「焼きもちなんてヴィヴィらしくない」

「あのな、ハニエル。ここは公衆の面前なんだ。いきなり二人だけの世界を作るなよ。みんな見てるぜ」

 言われて周りの視線を感じる。確かにもの凄く恥ずかしい。私、なんでこんなことに?

「ちぇ。あとちょっとだったのにな」

「なに?なにが?」

「ミュリエルのくちびる。欲しかったな」

「く、くちびる?」

 思わず手で隠してしまう。

「聞いてよヴィヴィ。ミュリエルって経験済みみたいなの」

「ホントか」

「ちょ、ちょっと。やめてよね。私、何も言ってないよ」

「こんな美味しそうなくちびるがもう誰かのモノになったなんて・・・ちょっと口惜しい」

「あのさ。私の話も聞いてよ」

「聞いたら答えてくれるの?」

「だから。なんで答えないとならないの?」

「ほら」

「ああ」

「え?なに?なに納得してるの?」

「だからさ。こうやって知ってゆくことも親友になるの。言ったよね。私はミュリエルと親友になりたいの」

「え?話を戻すの?」

「戻してもいいし続けてもいいよ。こういうたわいない話しもできることも大事だと思ってる」

「だったらハニエルはどうなの?」

「え?なんのこと」

「とぼけるの?」

「ミュリエルと同じことしただけだよ」

 親友の定義ってやっぱりよく分からない。答えてもいいけどそこまでプライバシーを曝け出すのも違うような気がする。

 確かにたわいない話の一つだけどさ。

「もう。分かったよ。親友ってさ、なろうと思ってなるんじゃない。気が付いたなっていた」

「気が付いた?さすがミュリエル」

「ずっとからかっていたでしょ。でもおかげで何となく分かったと思う」

「うん。無理矢理は嫌だよね。でも私はそうなりたいって思っている」

「なら。まずはお店に付き合ってよ」

「そうだね。ミュリエルに似合う服探そう」

「やれやれやっと先に進めるな。ずいぶん長い寄り道だった」

「ごめんごめん。これで許して」

 ハニエルはヴィヴィの腕を取る。

「し、仕方ないな。じゃ今度こそ行くか」

 ヴィヴィったらまんざらでもなさそう。

 やっと私達は目的のお店を目指してエスカレーターに乗ったのだった。


☆☆☆☆☆★


 長いのかそうじゃないのか分からない。時間的感覚が狂っているみたい。

「ねえ。いつになったら着くの?」

「まだ動き出したばかりですよ」

「そう?結構乗っているみたいだけど」

「なんですか?もしかしてトイレに行きたい、とか」

「あのさ。そういうこと平常心で聞かないでよ。ラフィだっているのに」

「なに恥じらっているんですか」

 全くこの天使は・・・

「トイレじゃないよ。ただ長いなって」

「一応非常用の簡易トイレが・・・」

「だから違うって!もう!」

「あれ?怒っちゃいました?」

「怒った。もうリリエルとは口を利かない」

「あれ?そんなこと言っていいんですか?」

「ふん。私にはラフィがいるもん」

 振り返ると

「あれ?・・・ラフィ?」

「気が付かなかったんですか?先生は乗ってません」

「え?うそ。なんで?」

「あれ?あたしとは口を利きたくなかったはず」

「・・・・・・う」

「はい?」

「だから。状況が違うって言ってるの。なんで乗ってないの?」

 ずっと後ろのいるものだと思っていた。いないこともショックだけどそのことに全然気が付かなかったことにショックを受けている。

「もう・・・そんな絶望的な顔しないでください。あたしがいるじゃないですか」

「・・・・・・」

「あれ?信用されていません?」

「・・・そんなことない。でもなんで?」

「う〜ん。答えは明確です。先生はまだ天界には帰りたくない、というか帰れないのです」

「どうして?」

「人間にもいろいろ事情があるように天使にだっていろいろ事情があるんです。このことはあまり深く知ることはオススメしません。それに知ったところでミウリルには何もできません」

「・・・・・・」


 何も出来ない・・・


 その言葉に妙にショックを受けている。確かに出会ったばかり。ラフィのこともリリエルのことも天界のことも地獄のことも何も知らない。


「まあ。そんなに落ち込む必要はありません。あたしがちゃんと地獄に帰してあげますから。それに先生は待っていてくれてます。安心しましたか?」

「・・・うん」

 いきなりの出会いだったのにラフィは私にいろいろしてくれた。それなのに私には何もしてあげられない。

 今はただ与えてくれる好意に甘えている。

 それに帰れないって・・・どんな事情があるの?それは余程のことなのだろうな。だから聞いてもちゃんと答えてはくれないことに納得・・・するしかないんだろうな。

 やがて一筋の光が目を差したかと思ったらイッキに視界が開ける。

「な、なに?なにごと?」

「何って。着いたからドアが開いただけですよ」

 着いた?今そう聞こえた。

「え?着いた?」

「だから。そう言いましたよね」

 あまりにも眩しくてまだ視界がぼやけている。

 けれど

 目の前が次第にクリアに変わってゆく。

「ようこそ。天界に。と言ってもまだぼんの入口ですけど」

 天界・・・ホント変なことばかり。地獄も知って天界も知って。


 見える景色はなんとも現代的建造物でできている。それに白を基調としているところはさすが天界といったところか。思わず感心してしまう。

 床も天井も壁も真っ白。ただただ眩しい。


「先生からいろいろ仰せつかっています。先ずはそれをクリアしていきましょう」

 リリエルの後に付いてゆく。通路を抜けて現れたのは

「空港みたいなところだね」

 エレベーターには私達以外いなかったはずなのに、ここにはたくさんの天使が移動している。エレベーターから降りる天使に乗る天使。

 こんなにもたくさんの天使達が行き来しているとは。地獄が賑わっていることに納得。

「空港は行ったことないから分からないですが、そうなんでしょう。さ、こっちです」

 少し先にゲートがあってリリエルはカードを翳して通過する。同じようにすると

「え?なんで?」

 ゲートは私のことを通してくれない。

「やはり」

 リリエルは傍にいた係員に事情を話すと

「分かりました。今回はあの方の計らいで特別です。ただし有効期限は30日です」

「それでお願いします。ミウリル」

 手招きされて

「こちらの方について行って手続きをしてください」

「あ、うん」

 私は係員に連れられて奥にある事務所に連れて行かれる。

 えっと・・・リリエルは一緒じゃないんだ・・・ちょっと怖い

「ここで待ってます」

 後ろで呑気に手を振っている。

 思わず心の中で『薄情者』なんて悪態をついてしまう。

 しかし。これがクリアしなければならないことなら受けるしかない。

 気付かれないように溜息をつく。


「こちらでお願いします」

 係員は持ち場に戻ってゆく。

 はぁ〜遂に一人ぼっち。せめてドアの先まで案内してくれればいいのに。

「あの〜すみません」

 軽くノックをしてドアを開けると女性の天使が一人いる。

「こちらに来るように言われたんですけど」

「ではカードをお願いします」

 黙ってカードを渡すとパソコンを・・・パソコン?天界とパソコンが上手く繋がらない。

 地獄にいた時もちょいちょい思っていたけど現世を変わらないよね。

 天界と地獄って結構ハイテクなんだ・・・元の世界に持っていけない情報だよね。

 無事帰って覚えていたら周りの人達にぜひとも教えたい。


「天使ミウリル」

「はい!」

 急に呼ばれたから声が裏返ってしまう。

「これで手続きは完了です。期限付きですがパスポート申請は終了しました」

「パスポート?」

「これがないと天界に入ることはできません」

 戻されたカードをまじまじと見て

「あ、はい。ありがとうございます」

 意外と簡単に終わったことにホッとしてリリエルの元に戻る。

「待たせちゃった?」

「いえ。全然。トイレに行って戻ってきたところです。無事終わりましたか?」

「うん。あっという間だった」

「ではゲートを通ってください」

 今度はスムーズに通過することに成功。晴れて私は天界に入ることができた。

 特に感激的感想はないけど不思議な気持ちがする。

「こんなに簡単に天界も地獄の行き来できるなんて」

「だからすごいんですよ。このタワーは」

「そうだね。すごいね」

「では次行きましょう」

 歩き出すリリエルの後ろ姿に

「ちょっと待って」

「どうしました?」

「私もトイレ」

「はいはい。ホントはずっと我慢してたんですよね」

「まだそれを言う。我慢なんてしてないし、今だって急に行きたくなったんだから」

「いいですよ。そういうことにしておきましょう。トイレはあそこですよ」

 

 トイレは広くて清潔だった。

 戻る途中にあった案内版を見てみると

「いろいろあるな。お土産?何が売っているんだろう。足湯もある。やっぱり空港?」

「なかなか戻ってこないと思ったらこんなところで油売ってたんですか?あたしはてっきり」

「それ以上は言わなくていいから。それよりさ、ラフィにお土産買いたい」

「天界の天使に天界のお土産?嬉しいですか?いや先生なら喜ぶかも。いいですよ戻る時に買うといいです」

「私も欲しいからいいの。それと足湯も入りたい」

「欲望の塊ですか。欲望の天使でどうですか?」

「だからそんな二つ名はいらないって。どうせ私は天使なりたてのお上りさんだよ」

「まあまあ。それより次行ってもいいですか」

「今度は何をするの?」

「ミウリルが欲しがっていたものを買いに行きます」

「・・・?欲しがっている?」

「これですよ。これ」

「あ〜。ほんと?いいの?」

「先生にお礼を言ってくださいね」

 私の欲しいもの。それはこっちの世界の通信端末。

 今時、持っていない方が珍しい。私は高校生。持っているのが当たり前の世代。

「嬉しい。絶対お土産買うからねラフィ」

「安い感謝ですね」

「気持ちの問題でしょ」

「そこはほら。ミウリルの武器を使った方がいいと思います」

「武器?私の?」

 リリエルは指を差す。その先を視線で追う。

「え?」

「最強です」

「・・・いい加減・・・胸から離れようか」

「だってあたしは絶対に敵わないから」

「そうだよね。年齢は上でも身体はこれからだもんね」

「言いますね。これでおあいこってことで行きますよ」

「勝手だな・・・まあいいけど」


 いつの間にか私とリリエルは手を繋いでいた。目の前にある扉を抜けたらいよいよ天界という世界とご対面。

 どんな世界が広がっているのだろう。ワクワクとドキドキが混在している気持ちで歩いて行った。


★★★☆☆★


「いいね」

「うん、似合うな」

 試着室から出てすぐに二人から声が掛かる。

「私も同じ。似合ってる」

「それ自分でいうか?」

「ヴィヴィ。それだけ自分に自身があるってこと。だよねミュリエル」

 否定はしない。けれど。なんだかナルシストと言われているみたい。

 う〜ん。この感覚。現世と変わらないな。

 いや。あの頃よりはさらに磨きが掛かっているのは天使になったことと関係しているのだろうか・・・とりあえず笑って誤魔化す。

「こ、これでいいかな。二人にはずいぶん手伝ってもらったから」

「いや〜無事決まって良かったよ。もう夜だもんな」

「ご、ごめん」

「夜って言ってもまだ始まったばかりだから。気にしなくていいよ。楽しかったし」

「それは私も同じだな。服を選ぶのって楽しいんだな」

「ホントありがとう。お茶、奢るよ」

「え。でもそんな時間あるの?」

 そっか。日が暮れた、となるとリンシの活動が始まる。私の目的のための時間。

「お茶くらい平気。それに今は目星があるんだ」

「そうなの?」

「うん。ハニエルが見かけた私そっくりの天使。多分彼女だと思うから」

「ふ〜ん」

 ハニエルってばなんでそんなに顔を見るの?っていうか観察しているの?

「な、なに?」

「だって。ミュリエルと同じ顔って。そんなに似ていることってあるのかなって。でも本当にそっくりだったら困る」

「困るって?なんで?」

「ミュリエルの顔ってすごく好みなんだよね。それが倍。二人もいたら両手に花じゃない」

「私って顔で選ばれたの?」

「最初はね。っていうのは冗談・・・・・・」


 急に周りが騒がしくなる。一体なんなの?


「あれだ。ハニエル」

「うわ・・・飛んでるの?」

「飛んでる?」

 たくさんの天使が吹き抜けのある場所に集まっている。

 私達も同じように事態を見る。

「あれって・・・」

 どこかで見たことのある顔。それは忘れるはずもない。

「あの時の天界の天使・・・」

 私の言葉は喧噪の中に溶け込んでしまう。

 あの夜。私にぶつかって、文句を言って、そして私のことをどうにかしようとした天使。

 嫌な気持ちが蘇ってくる。

「こんな場所で非常識だ」

 ヴィヴィの声も消されてゆく。

 見たところ何かに怒っているみたい。相手の声はよく聞こえない。

 館内アナウンスでやめるように警告されている。けれど聞き入れることはない。ますます高い場所を目指している。

 こんなところでまた会うなんて・・・感情が黒く渦巻いてゆく。

 天界の天使・・・上等じゃん。


「・・・ミュリエル?」

 ハニエルの声は聞こえている。でも今は怖いことなんてない。

 これ以上地獄で好き勝手にさせない。私はたくさんの天使達を押しのけて前に進んでゆく。


「お前ら黒天使は目障りなんだよ」

 声が聞こえる。また・・・同じことで喧嘩・・・いい加減に・・・

「いい加減にして!」

 私の大声に気が付いたらしく視線をこっちに向ける。

「ああ?あ〜お前の顔。見覚えがある。また会いたいって思ってたんだ」

「早く降りなさい。みんな迷惑してるのよ」

「ちょっとミュリエル。構わない方がいいって」

「でもあの天使は・・・」

 視線を逸らした隙に向かってくる。

 あと少し・・・私に手が届きそうな瞬間だった。

「二人共!来るぞ」

 ヴィヴィが私達のことをしっかりと抱えてくれる。

 私が見たもの・・・

 それは・・・

 突風と共に飛んでいってしまう天使の姿だった。

 タワーのガラスは割れて破片がキラキラと落ちてゆくし、他の天使達はその場から避難するために移動を始める。


「な、なに?今の」

 さっきの天使の姿はなくなって静寂だけが残される。どうやら事態は終わった?でいいのかな。

 あまりの出来事に胸がドキドキしているし身体だって細かく震えている。おまけに喉は乾いている。

「びっくりした・・・何が起こったの?」

「もしかして知らないのか?常識だろ」

 ヴィヴィが驚いたように聞いてくる。

「・・・ホントに・・・知らない」

「私達天使は当然飛ぶことができる。でも。ここでも天界でも飛ぶことは禁止している。さっきみたいになるから」

「・・・・・・・」

 天使なのに飛べないって・・・翼だってあった・・・真っ黒な翼だった。

「もっと詳しく知りたい・・・やっぱりお茶しようよ」

「そうだな。少し落ち着いた方がいい。しかし迂闊なヤツだったな。あんなの久し振りに見た」

「私も。喉が乾いたし」

 喧噪もだんだん落ち着いてきている。どうやら普段の生活に戻そうとみんな意識しているみたい。だから私達もお茶して普段を取り戻さないとならない。


 ハニエルに支えられて立ち上がる。

 そして

 買ったばかりの服の入った紙袋を持ってヘブヘルタワーを後にした。


 夜は始まったばかり。見上げると月が浮かんでいる。

「・・・半月」

 もしかして・・・あの時のように私は美有と話すことができるのだろうか。

 今夜・・・試してみる価値はあるかも。

 そんな月の下。通りを歩き出す私達だった。

ダブル台風。大変な思いをされた方も多かったと思います。

読んでいただきありがとうございます。

今週は台風の他に地震も多くて気分的に落ち着くことがなかった。

そんな中でアップするか迷いましたがアップしてみました。

のんびり展開だな・・・ちょっと反省。

次回はもっと頑張ろう!と決意する私です。

早く梅雨明けないかな。

ではまた。お会いできること楽しみしています。

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