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ワタシ死ねないみたいです。あと○○になる方法、探してます。  作者: マナマナ


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59/68

限定パフェは複雑な味

「なあ。ハニエル。なんで後を付けている?」

「だって気になっちゃって」

「そうかもしれないけど、私とのお茶は?」

「もうちょっとだけ。そしたら諦めるから。お願いヴィヴィ」

「ホントちょっとだけなら。それ以上は譲れないから」

「ありがとう。今日さ。一緒にお風呂入ろうか」

「・・・・・・あ、ああ。そうだな。それがいい」

 二人は賑わいに紛れるように通りを歩いていった。


 通りを曲がったその先にも道は続いている。それにしても天使の往来が多い。

「あそこだ。ちょっと列ができているな」

 ラフィが示した先には10人くらいの天使が並んでいる。

「これならそんなに待たなくても良さそうだ」

「ミウリル。あなたのせいですよ。先生の機嫌が悪くなったの」

「なんで?私には上機嫌に見えるけど」

「そう見えているのは先生が優しいからです。下着選びに時間かけ過ぎです。見せる相手もいないのに」

「だから言ったよね。それに悪かったわね。見せる相手もいない寂しい天使だよ」

「まあまあ。限定パフェが食べられるならいいじゃないか」

「結果的にはそうなんですけど。本当に大丈夫ですかね?」

「みんな限定目当てだよね。駄目だったら責任感じちゃうんだけど」

「そうですよ。ミウリル。責任感じてください」

 だからなんで太ももを指でなぞるの?思わぬ攻撃にサブイボが・・・

「まあまあ二人共。まだ大丈夫だろう。限定は一日50食。開店してまだ一時間くらいしか経っていない」

「ならいいですけど。ちょっとメニュー見てきてもいいですか?」

 リリエルは入口に置いてあるメニュー表を見に行った。

「ミウリル疲れたか?」

「ううん。疲れてなんてない。すごく楽しいよ。この世界に来て『変な』って言い方だとまたリリエルに文句を言われるけど、変というか不思議なことばかり体験しているって。パフェを並んで食べる天使って想像なんてできないし」

「不思議があるから生きていることが面白いと思うが」

「うん。確かにそうだね。私、元の世界だといつももう一人の後ろに隠れていたからあまり生きているって実感がなかった。でも一人になって初めて生きるってことがこんなにも楽しいって思っているんだ」

「もう一人・・・そう言えばその辺りの話を聞いていなかったな」

「こんなにいろいろしてくれたラフィには話した方がいいよね」

「そうだね。ぜひ聞きたいな」


 並んで待っている間に今までの自分のこと、自分が感じていたことを素直に話す。

 けど。

 こんな立ち話だと簡単にしか話せない。おかげでざっくりとした話になっているのにラフィは黙って耳を傾けている。


 最後の方言ったラフィの言葉を要約する。

 

 どうやら私は他とは違う変わった人生を与えられていたらしい。


 ずっと当たり前だと思っていたことは実は当たり前じゃなくて今が当たり前だということ。

 今の私が思うこと。それはこれから先の人生は私として生きてみたい。


 この世界に来て一人でも生きてゆける自信がついた気がする。だって一人きりになって分かったことがたくさんあるから。

 自分の気持ちはちゃんと自分で言うから伝わるんだ。他の人に代弁してもらっても駄目なんだ。言葉ってそのためにあるんだって。


 だから私の本当の気持ちは私がちゃんと私として私の言葉として伝えたいんだ。


「天界のミスでミウリルは大変だったんだな」

「天界のミス?」

「そうだ。本来あってはならないこと。魂と肉体は一つで成立するんだ。でも。ミウリルが初めてではない。これまでも稀にあった。その度に天界はミスを処理するために手段を選ばなかった」

「処理?・・・手段って」

「そうだな・・・お、列が進んだ。この話は長くなる。それに他の天使にも聞かれるから帰ってからにしよう」

 そこへ戻ってきたリリエル

「全然大丈夫そうですね。あとですね。限定以外も美味しそうですよ」

「ありがとう。一安心だな。ここはレイスの店。現世の腕がそのまま残っている」

 またしても聞き慣れない存在。

「レイスって?リンシとは違うの?」

「お、また進んだ。次で席に着けるだろう」

「で?レイスって?」

「そのことはお店に入ってからにしよう。さあ。気合い入ってきた」

 ラフィ・・・気合い入れる必要あるのかな・・・

「気合いって必要?」

 あ。つい言葉になってしまった。ホント私って思考だだ漏れ・・・

「当たり前のことを聞いてどうする。甘いものは戦いなんだ。こちらも気合いを入れて正面から対峙するのが礼儀というもの」

「対峙?・・・そういうものなの?リリエル」

「ミウリル。先生の甘いもの愛をなめてもらっては困ります」

「そういうリリエルはどうなの?同意見?気合い入れるの?」

「も、もちろんです。当たり前じゃないですか」

 なんかさ・・・目。泳いだよね。

「なんですか。その疑いの目は」

「べつに。天使それぞれってことでいいんじゃないの?」

「そうですけど。ここは話を合わせるのが天使として常識なんじゃないんですか」

「そうなの?私にはまだ天使のことよく分からないもん」

「あ。逃げに走りましたね」

「別に逃げてなんてないよ。私は私なりに楽しもうって思ってるから」

「新人天使なのにずいぶん生意気な口を利きますね」

「新人でも天使でも私は私なの。言ったでしょ天使それぞれって」

 また列が進む。と同時に

「席にご案内します」

 ラフィの言った通り席に案内される。楽しみだね。


 四人掛けのテーブルは真っ白で椅子にはクッションがあって座り心地は申し分ない。

 正直言うと私としてこういうお店に入ったのは初めてのこと。つい周りをキョロキョロと見回してしまうのは許して欲しい。

 店の中は白を青を基調とした内装で爽やかな感じと清潔感に溢れている。

「なんだかこの色の取り合わせって・・・」

 隣りに座っているリリエルが何を言うのかすばやく察知。

「あのさ。それ以上は駄目だよ」

「鋭いですね。いいじゃないですか。どっちも可愛いと言いたいんですよ」

「比べるのってお店に失礼だよね。リリエルは私より年上なんでしょ。だったら分かるよね」

「二人は楽しそうだね」

 正面のラフィはこの話に参加しなくていいの!


「なんだかミウリルの下着みたいだな」


 ビシ!!!!


 私とリリエルの顔は一瞬にして彫刻と化す。

 なんなのこの天使。馬鹿なの?無邪気なの?


「おいおい。二人共なぜそんなに睨んでいる」

「・・・ラフィの馬鹿」

「・・・先生、馬鹿ですか」

 同時に出た小さな言葉。

「ん?なんか言ったかい?」

「なんでもないです。そのことは忘れて下さい」

「そうですよ。お店に失礼じゃないですか」

「あんたが言うか」

「先輩に向かってあんたとはなにごとです?」


「あの。ご注文は?」

「限定パフェ三つ。二人は飲み物は何にする?」

 なにごともなかったかのように普通に注文している。

 無邪気過ぎて拍子抜け。こういう話は諦めます。

「あたしはホットのアールグレイをお願いします」

 メニューを見て

「私は・・・ホットラテで」

「決まったようだね。ワタシは温かいほうじ茶を」

「ほうじ茶?」

「どうしたミウリル」

「えっと好みなら別にいいんですよ。意外だったからつい言葉に」

「そうなのか?なら試してみるといい。イケるんだ、これが」

 そうなの?家だと普通に紅茶を飲んでいたよね。

 ほうじ茶って飲んだことないかも。


「ハニエルどう?」

「見失ったみたい」

「この近くのお店に入ったのかな。探す?」

「もういいかな。ホント見間違いかもだし。それよりヴィヴィごめんね付き合わせて」

「いいよ。そんな大したことなかったから」

「私達もお茶にしましょう。ホントはみんなで来たかったお店近いんだ」

「いいのか二人で」

「うん。だってミュリエルは何時になるか分からないし」

「まあハニエルがいいなら」

「それでね。限定パフェが美味しそうなんだ」

「限定パフェ。いいねぇ。行こう」

「っていうか。この列の先。ちょっと待つけどいい?」

「いいよ。ハニエルとなら」

「・・・ヴィヴィったら」

 二人はいつしか列に並んでいた。先には十五人ほどいる。

「一応連絡入れておくか?」

「ミュリエルに?」

「ああ。地図も一緒なら分かるだろ」

「そうだね。入店まで時間掛かりそうだし」

「じゃあ・・・って私、知らなかった。ハニエルよろしく」

「そうだっけ?分かった」


「よし。無事注文完了。あとは食べるだけだな」

「その前に来るまで時間があるよ」

「そうだったな。ミウリルとの約束だな」

「そう。レイスって?この世界って聞いただけで『天使』と『リンシ』と『レイス』がいる。他にもいたりするの?」

「なかなかいい質問だ。確かにここにはその三つだけ。けれどこれよりもっと下層の世界に存在している他の種族がいる」

「え?地獄が最終地点じゃないの?」

「地獄というのは八つの階層から成り立っている。ここは第一層なんだ」

「ということはこの下にも世界が広がっているってこと?」

「そうだ。もちろん整備もそれなりにしてあるし行くことだって可能だ」

「それで?その種族って?」

「それはまた今度にしよう。知らなくてもいいこともある」

 またそうやって言葉を濁す。天界のことだってそう。

 隣りのリリエルを見ると目を逸らす。こっちに聞いても答えてもらえる期待はできないか。

「分かったよ。面倒だとしたら今は聞かない。でもレイスについては教えてくれるんでしょ」

「ああ。レイスとは・・・」


 そんなこと選べるんだ。転生を断るって。せっかく生まれ変わって新しい人生を送ることが嫌だなんて・・・私も同じ立場だったら思うことあるのかな?

 確かに人間の人生って短いよね。

 でも短いなりにたくさんのことが凝縮されているって思う。

 

 生まれて、育てられて、言葉を覚えて。

 成長する間に甘えたり褒められたり怒られたり怒ったり。

 感情がめまぐるしく変わって。

 駆け足のように生きている。


 私は今までの人生で味わったこと。それから先は生きてみないと分からない。

 きっと将来という未来に向かって生きることが意味になるって思う。 


 期待とか楽しみとか不安とか、他にもいろいろあって生きてゆく。

 生きることは不思議で満ちている。

「私には分からない。でも。それが許されて選べるなら一つの選択肢だよね」

「生きる価値観はそれこそ人それぞれなんだ」

「うん。否定はしないよ・・・」

「ならなぜそんな悲しそうな顔をしている」

「そうかな・・・自分じゃよく分からないよ」

「ミウリルはどうしたい?」

「どうって?」

「天使になって今がある。天使ならもっと長く生きることができる。けれど人間に戻ったら短い時間しか生きられないんだ。人間の人生とはあっという間に終わってしまう」

「それってこのまま天使として生きても構わないってこと?」

「そうだ。このままワタシと一緒にいてもいいと言ったら?」

 そんな申し出を受けるなんて思ってもみなかった。でも今の気持ちを素直に言うなら

「今は元の世界に戻って人間として生きたいって思ってる。会いたい人がいる。短くても精一杯生きてみたいの。こんな自信を持つことができたのはラフィのおかげだしリリエルのおかげでもあるの」

「まだ一日二日のことですよ」

「リリエル。それだけ私にはインパクトがあったってことなの」

「それとミウリルの会いたい人って下着を見せたりおっぱいを触らせてもいいって人のことですか」

「おっぱいなんてはっきり言わないでよ!」

「声が大きいです。みんな見てます」

「え?・・・・・・・・あ、あの・・・ご、ごめんなさい。忘れて下さい」

 店中の視線が集中。立ち上がってとにかく謝った。あ〜体中が熱いなんてもんじゃない。

「二人は本当に仲がいいな」

「あのラフィにも。ごめんなさい。迷惑かけたね」

「ははは。面白い」

「おもしろい・・・ならいいですけど」

 そうこうしているうちに私達の注文したパフェ達が目の前に置かれていった。


 ☆★★☆☆


 さっきの天使。私のことなんで見ていたのかな?

「はあ・・・なんか疲れた。みんなと合流しようかな」

 探しているのは天使じゃなくリンシなんだ。夜になったら本格的に探せばいいしランヴェルがまた出会うことだって期待できる。

 よし。合流しよう。ん?

「ハニエルから。なんだろう」

 内容を見てみる。

「今お店に並んでいます。入店にはまだ時間がかかりそうです。地図もある」

 ということは今すぐ向かえば一緒にお茶できるってことだよね。

 よし。決めた。天使探しは今は終わろう。

 席を立って地図を確かめながら通りを歩いてゆく。


 歩きながら返事を返そうか考えた末、いきなり合流して驚かせよう。

 そしたら二人はどんな反応するのかな。ちょっと楽しみ。

「あ」

 ガラスに映った自分の姿を見て

「もしかして二人って私服なのかな。休日だもんね」

 カーリ様とルシェルに会うから制服にしたけど今なら私服の方が自然だよね。

「でも・・・持ってないよ」

 どうする?今なら経費があるから私服を買うことが可能だ。だけどいいのかな。以前買ったのはちゃんと目的があったから経費で通った。けれどこれは完全に私用。

「そうだ」

 本当は現世に帰るまで封印しておくつもりだった高校の制服のことを思い出す。

「仕方ないよね」

 いいわけだけど他にないから・・・でも

 しばらく考える。映った自分の顔を見つめていると

「やっぱりこれでいいか」

 ここで揺らぐことは自分の意志の弱さを現してるみたいに思えて急に気が引けた。

 私は下駄の音を立てながらハニエル達のいる場所に向かった。


「えっと。この角を曲がる」

 地図の案内に従って角を曲がる。これって裏通りなんじゃ・・・

 そう思ったのは束の間でここも天使で賑わっていて表通りと変わらなかった

 ということは本当の裏通りってもっとこの先にあるってことだよね。前に覗いた時はそれとなく不穏な空気を感じたのに。もしかして昼と夜とじゃ違うのかな。

 それとも天使になったからそう感じているだけなのかな?


「あ。ハニエル」

 私の声に気が付いたハニエルが振り向く。二人はまだ列の中にいた。

「ミュリエル?びっくりした。連絡してくれたら良かったのに」

「うん。最初は連絡しようと思ったんだけど急に行くのもありかなって」

「それで終わったの?」

「それなんだけど、終わったっていうか終わらせたんだ。埒が明かないっていうか。今度でもいいかなって。それにハニエル達と早く合流したかったから」

「分かった。でも」

「言いたいこと分かる。私も今から並ぶからお店の中で」

「うん。じゃ後で」

 それから最後尾に向かって歩き出す。といってもハニエル達との間には10人くらいしか差がない。これならすぐに追いつけるだろう。

 私は静かに並んだ。


 一人で待っている間にさっきまでのことを思い返す。

 ランヴェルが見たのは本当に私と似ていたのだろうか。かなり似ていたということだって考えられる。でも常に天使と関わっている仕事をしている彼だ。顔を見ることには自信があるはず。だとしたらやはり美有なのだろう。

 たまに視線を感じる。ハニエルがこっちを見ていは手を振っているので私も同じように手を振って返す。

 少しだけ前に進む。そろそろハニエルとヴィヴィは店内に入れる。


「二階の準備が整いましたので今から皆さまをご案内します」

 出てきた店員に促されて列はどんどん店内に入ってゆく。

「よかったね」

「ホント。今まで待ってたのがなんだったって思える」

 追いついた私に二人が声を掛けてくれた。これでみんな仲良く一緒にお茶ができる。


 階段を上がって二階に入ると

「あちらの窓側の席でお願いします」

 指定された席は四人掛けのテーブル席。

「あっちだって。行こ」

 ハニエルは私の手を取って並んで座る。

「なんで当たり前のように並んで座るんだよ」

「そう?そういうヴィヴィだってなんで私の正面の席を選ぶの?」

「それは・・・別に偶然だ。こっちの方が出口が近いし」

 二人って仲良しだね。それに私服も似合っている。

 ハニエルは真っ白なワンピースを着ている。それは思わず美有の隠していたワンピースのことを思い出したがハニエルのはもっと凝っていて細かな刺繍が施されている。これで羽根でもあったら完璧な天使にしか見えない。

 ヴィヴィは幅のあるパンツに少し大きめサイズの襟付きの半袖シャツ。ハニエルと比べるととても中性的に見える。色はどちらも白色。

 天使って本能的に白を選ぶ傾向があるのだろうか。なんてことを思ってしまう。


「あの。すみません。限定のパフェってまだありますか?」

 ヴィヴィが店員さんに聞く。

「まだ大丈夫ですよ」

「ならそれを三つ。飲み物はちょっと考えます」

「かしこまりました。決まりましたらお呼びください」

 店員さんが行ってしまってから

「ちょっと勝手に注文してって言いたいけど。ありがとうヴィヴィ。ミュリエルも同じで良かった?」

「いきなり過ぎてびっくりしたけど。いいよ私も。限定なんだよね。だったらいかないとね。ヴィヴィありがとう」


 あらためてメニューを見てあらためて飲みものを注文した。


「ここはよく来るの?」

「私は二回目。ヴィヴィは初めてだよね」

「まあ、一人じゃ入らないから」

「そうなんだ。可愛いお店だね」

「でしょ。ここってレイスがやってるのよ。美味しいのよ」

「へぇ〜楽しみ」

 さて。これから楽しいトークの始まり。でいいのかな。そんな期待をしつつ二人のことを見ていると

「ハニエル。あのこと話した方がいいんじゃないか」

 ヴィヴィはハニエルじゃなく私のことを見て言う。

「あのこと?それって私に関係あるの?」

 私はハニエルに話し掛ける。

「う〜ん。でも見間違いかもだし」

 ハニエルはヴィヴィのことを見て話す。


 えっと・・・これってどういう状況?


「ねえハニエル。すごく気になるんだけど」

「うん。私も気になってる」

 今度はちゃんとお互い顔を見て話す。


 しばしの沈黙。ハニエルは迷っている。


「あのねミュリエル」

 やっと決めたみたい。

「今から話すことは私の見間違いかもしれないから」

「うん。構わないよ。聞かないと分からないし」

「そうね。似ていただけかもだし」

 似ていた?それって私にってことだよね。

「チラッとだけどミュリエルを見たんだ。表通りを歩いているところ。でも見失った」


 私を見た?表通りには確かにいたけど・・・まさか


「それって本当に私だった?それとも私に似た天界の天使だった?」

 つい大きな声が出る。

「ど、どうしたの急に?天界って・・・」

「ご、ごめん。今朝同じようなこと聞いたからずっと気になって」

「そうなんだ。ホントは声かけたら良かったかも。でもあまり深入りするなって」

「・・・そっか。気にしてくれたんだ。ありがとう。それでその天使は?」

「うん。角を曲がったところまで。その後は分からなくて。そしたらミュリエルが後ろから現れたからホントびっくりした」

「私はさっきまで別のカフェで休んでたからハニエル達の前を歩くことって絶対にない」

 やはりいるんだ。もっと早く合流していたら会えたかもしれないのに。タイミング悪いな。

「じゃあホントにあの天使はミュリエルじゃないんだ」

「私も探しているの。彼女のこと」

「だったらまだ近くにいるかも」

 ヴィヴィは窓から下の通りを見る。

「こんなに多いと分からないな」

「それでその天使ってどんな服着てた?」

「ん〜ごめん。顔しか見えなくて」

「そっか。ちょっと待ってて」

 立ち上がってトイレに向かう。


 トイレは一階にしかなく階段を下りて扉を開けると

「わ、ごめんなんさい」

 先客がいた。ノックしない私も悪いけど鍵を掛けてない相手も悪い・・・よね。

「いやいや。気にすることはない」

 ドアを開けて出てきたのは

「あ・・・」

 向こうも私の顔を見て

「ああ。さっき」

 カフェで私のことを見ていた天使。

「あの。私のこと見てましたよね」

「ああ」

「何か用でも?」

「実に面白いと思って。気に障ったら謝るが」

「面白い?」

「実は・・・」


「先生。会計終わりましたよ」


 後ろから声が掛かって

「おっと。行かないと。今度はゆっくり会えるといいね」

 そう言うと出口に向かって歩き出す。

「あの。それってどういう」

「ワタシのことはラフィと呼んでくれ。良かったら君の名前を知りたいな」

「・・・ミュリエル・・・です」

「ミュリエル。良い名だ。では失礼するよ」

 出口に向かって行ってしまう。振り向くともう姿は見えなかった。

「・・・なによ面白いって。変な天使」


☆★★★☆☆


「先生。誰と喋ってたんですか?」

「いやなに。鍵を掛け忘れて。そしたら彼女が入ってきてびっくりしてたから詫びをね」

「それは災難でしたね」

「どっちが?ワタシか向こうか」

「どっちもですよ。これからどうするんですか?」

「帰ろうか。ミウリル」

「え?なんか言った?」

 少し先を歩いていた私。

 美味しかったな。限定パフェ。美味しいスイーツは楽しくなるね。

「そんなに気に入ったか」

「うん。ありがとうラフィ」

「もう帰ろうと思うが」

「いいよ。買い物も終わったし。でもリリエルは?」

「あたしが帰るのは夜になります。だから見送りはその時でお願いします」

「そうなんだ。あ〜少し疲れたかも」

「だったらみんなでお昼寝タイムにしよう」

「いいですね」

 こうして私達は街を去ってラフィの家に帰っていった。


☆☆☆☆☆


「お待たせしました。こちらが限定パフェです」

 目の前のパフェは輝いているようにしか見えない。

「うわ〜きれい。こんなの見たことない」

「ホント。なんか食べるのもったいないな」

「ほんとだね。みんなで来れて良かった」

 私達はそれぞれの感動をそれぞれの言葉にしていた。

「いただきます」

 みんなの動きはシンクロしている。同じタイミングでスプーンを構え、同じタイミングで口の中に・・・

「ん〜〜〜おいしい」

 溜息にも似た感想。

 現世でも食べたことない洗練さ。

「あ〜癒される」

 ここが地獄でも甘いものは天国だね。

「ミュリエルったら私以外で癒されてる」

「なんだパフェに妬いてるのか?」

「だって・・・ヴィヴィには分かるよね」

「ねぇ。このお店ってレイスのお店なんだよね」

「人間って凄いなってこういう時に思うの」

「そうだね。ハニエルの言っていること。なんとなく分かるよ」

「だって。このパフェだってヘブヘルタワーだって元は人間だったレイスが造り上げたんだもん。天使だって人間より優れているところたくさんあるけど。こんな神業ができるなんて人間ってなんなのって思っちゃう」

「人間なのに神業って考えてみたら凄い褒め言葉だよね」


 感動するほど美味しいパフェ。

 けれど。

 これを作ったレイスが再び現世に転生したらこの味は失われてしまう。

 それがいいことなのか、悪いことなのか。今の私には分からない。


 今日。出会ったあの天使。一体誰なんだろう。ラフィ・・・だって。

 もう一人の私。ハニエルもランヴェルも見ている。

 どこにいるの?美有。天使になった今あなたは何を思っているの?


 一つ一つの味。それはそれで美味しい。

 そして混ぜれば混ぜるほど複雑な味に変わってゆく限定パフェのように私達の運命はこれからどんな風に変わってゆくのだろう。

 私と私が混ざり合う・・・そんなことがあるのだろうか。


 これから起こること。それはこれからの受け止めていけばいい。

 今はパフェを楽しもう。最後の一口まで。

 ・・・ごちそうさまでした。


やっとこさアップできた。

読んでいただきありがとうございます。

自分の中で最遅の時間。こんな時間にアップして読んでもらえるのだろうか。

そんな心配をしつつ期待している私です。

次回はもっと早い時間にアップするぞ。

そんな意気込みで続きを・・・

ではまた。次回お会いしましょう。

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