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ワタシ死ねないみたいです。あと○○になる方法、探してます。  作者: マナマナ


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私に似た天使

「今日は買い物にでも行こうか」

 制服に着替え終わって髪を整えているとラフィがドア越しに話しかけきた。

「買い物?」

「そうだ。日用品が必要だろう」

 確かに。歯ブラシもないからうがいだけしか出来ていない。一日二日くらいなんとか持ち堪えられるかもだけどさすがに良くないよね。

「いいよ。っていうかコンビニでもあるの?」

「なんでもある。スーパーだってデパートだって。向こうでの生活と大差ない」

「ここって地獄でしょ?変でしょそんなの。『血の池地獄』とか『針山地獄』があるって言われた方がよっぽど信憑性があるよ」

「そんな過去のことをよく知っているな。今の地獄にはそんなモノはない。あった場所は再開発され今じゃ面影すらない」

 再開発?なんとも似合わない言葉。

 でも現世だって常に発展しているんだからこっちの世界もずっと同じってことないか・・・

「むしろ見てみたい」

「それなら歴史資料館がある」

「歴史資料館?・・・今度連れっててよ」

「構わない。だが、そんなに面白ものじゃない」

 ブラッシングを終えてドアを開けるとホントに目の前にいた。

「お待たせしちゃいました」

 窓から入ってくる陽光が逆光になってラフィのことを照らしている。銀色の髪に光が反射する。思わず目を細めてしまう。

「どうした?」

「え!・・・神々しいなって」

「天使だからな」

 眩し過ぎて直視なんて出来ない。

「ふと思った」

「何を?」

「だってラフィって天界の天使なんでしょ。なんで地獄にいるのかなって」

「気になるか?」

「気になるっていうか疑問に思っただけ」

「その話はいずれしようか」

 言葉の真意を見極めるには陽光のせいで分からない。聞いてもいい質問だったのか、禁忌だったのか。いずれ。ならその時が来るまでは私も聞かないでおこう。

「別に。どうしても知りたいって思っているわけじゃないから。で?もう出るの?」

「ああ。良い天気だ。とっておきのパフェでも食べよう」

「ぱふぇ?」

「ああ」

「ラフィって甘いもの好き?昨夜から思ってたけど」

「酒も好きだ。甘いものはもっと好きだ」

「お酒のことは聞いてない。でも私も食べたい」

 玄関を出ると

「待っていましたよ。それで?どうやって行きますか?」

 リリエルが先に待っていた。

「こんなに良い天気なんだ。少し歩こう」

「いいですね。バスケット持って見晴らしの良いところでお弁当でも食べたいですね」

「お弁当。ピクニック。私もしたいな」

「それはまた次の機会にしよう。とっておきの場所がある。ミウリルは歩くのは平気か?」

「はい。私も思っていました。この青空の下、歩くなんていつ以来かなって」

「でも少ししたら別の手段で行く」

「はい。で?リリエルは?」

「もちろん、あたしも賛成です」


 現世のようにアスファルトで舗装されているわけじゃないけどとても歩きやすい道がず〜と続いている。道の両側には色とりどりの花が咲いていて風が通る度に良い匂いが鼻を翳めてゆく。

「良い匂い。名前は知らないけど可愛い花がたくさんですね」

「地獄の果て。良いところだ。静かに暮らすには持ってこいだな」

「ラフィはいつからなの?」

「さあな。数えるのが面倒なくらいだな」

「ふ〜ん。天使って長生きとか?」

「人間に比べたら雲泥の差だろう」

「そんなに・・・だったら私もこのまま天使なら同じくらい生きることができるの?」

「そうだな。でも現世に帰りたいんだろ」

「迷っちゃう、なんて。帰りたいよ。そして伝えたい」

「それまでは天使を楽しむんだな」


 馴染んでいる自分に驚いている。こんなに適応力あるんだ。


 どれくらい歩いたかな。振り返るとラフィの家はもう見えない。

 今さらなんだけど風景にも少しだけ飽きてきている。素敵なんだけどずっと同じって。それって同じところで足踏みでもしているみたいで進んでいる実感できない。


「どうしたミウリル」

「ちょっと疲れたかも。リリエルは平気なの?」

「平気です。でも・・・先生」

 少し先を歩くラフィは待っていましたとばかりに何かしている。

「ここからは乗り物で行こう。今呼んだ。すぐに来る」

「乗り物?タクシー?」

「似たようなモノだ」

「それってどうやって呼んだの?」

「これだ」

 ラフィの左手首に現世でも見かける端末を発見。

「え?ここって使えるの?」

 ポケットからスマホを出す。

「これはこっちの世界のモノ。それは現世のモノ。ここでは使えない」

「そうなんだ・・・」

 落胆している私の耳に知らない声が聞こえる。


「毎度ありがとうございます。今日はどちらまで」


 いつの間に?誰?それと目の前にあるのって人力車だよね。

「これに乗るの?」

「ああ。実は街までは遠いんだ。歩いていたら朝になる」

「え!そんなに?」

「それくらい遠い。ミウリルは乗ったことあるか?」

「いえ。初めてです。面白そう。よろしくお願いします」

 御者の人は私のこと真剣な眼差しで見ている。なんで?なんか変なのかな?

「あの、なにか?」

「え!あ。すみません。ついじっと見ちまって」

「?」

「美人だなって」

 ダイレクト。いきなりそんなこと言うなんてびっくりするんですけど。

「ありがと・・・です」

「あっしのことはランヴェルって呼んで下せい」

「ランヴェルさんね。私はミウリルです」

「さん付けはいいっす。同じ天使なんで呼び捨てで」

「え?同じ?」

「ですよ。あっしは自分のこと黒天使なんて思っていないです。ミウリルだって自分達のこと白天使なんて思ってないっすよね」

「黒?白?」

 えっと・・・なにそれ?黒?白?

 確かに目の前の天使はちょっと浅黒いけど、それって職業柄日焼けしているだけだよね。

「ねえ。リリエルは知ってるの?」

「そうですね。一般的に天界は白天使。地獄は黒天使。という感じで言われています。どっちも同じです。違うのは生まれた場所だけ。あたしは特に気にしてませんが考え方の古い天使は比べますね」

「意味が分からない」

「そうでしょうね。実際それ以外の差なんてないんです」

「二人共、歴史についてはまた今度にしよう。今日は良い天気なんだ」

 ラフィの言葉にリリエルは素直に頷いた。

 歴史か・・・これもあまり触れられたくないのかな?それにいずれ現世に帰る私にはあまり関係のないこと。どうせ生き返ったら記憶を失ってしまうのだから。

「じゃ、出発でよろしいですか?」

「お願いします」

 並んで人力車に座る。リリエル、私、ラフィ。天使も三つ並べばちょっと窮屈なのは仕方のないこと。どうしても身体が密着してしまう。

 リリエルの返事で動き出す人力車。石か窪みか分からないけどちょっと揺れた。

 私は思いっきりラフィに身体を押し付けてしまう。

「最初だけだ。すぐに慣れる」

「・・・・・・・」

「なぜワタシのこと睨んでいるんだ?」

「・・・だって」

 その先はあまり口にしたくない。だって・・・思いっきり胸を押し付けちゃったんだもん。絶対、感触伝わったよね。無意識に胸を押さえていた。

「気にし過ぎだ。地獄でも事故はある」

「やっぱり分かってんじゃん」

「ではパフェの他にプリンも付けよう」

 プリン・・・それも悪くないけど・・・自意識過剰なのかな?

「あ!ミウリルだけ?ずるいです先生」

 リリエルが太ももに手を掛けて抗議する。う〜生足直接ってこそばゆい・・・

「もちろんワタシ達だって付ける」

「それじゃ意味ないと思います」

「言っただろ。今日は良い天気で気分もいい。それにミウリルの歓迎会も兼ねている」

「歓迎会?私の?」

「そうだ。それにはまず買い物」

 そんなたわいもない会話が不思議と楽しかったりもする。

 人力車から望む空は確かに青くて澄んでいた。


☆☆☆☆☆☆


 朝。

 ルシェルからのメールで目が覚めた。

『本日10時までにお越し下さい』

 ぼんやりした眼で見て時間を確認。まだ七時前。

 本日は学園が休みということで朝食がいつもより一時間遅く8時からになる。

「もうちょっと寝てたかったのに・・・」

 瞼を擦りながらベッドから出て思いっきり背伸びをする。昨夜もハニエルのおかげで気分が良かった。

「・・・そうだ」

 このままお風呂に向かう。カーリ様に会うんだ。キレイにしてかなきゃ・・・・

 廊下にはまだ誰の姿もなかった。静かな中でスリッパの擦れる音がはっきりと聞こえる。

 窓から見える空は一点の曇りもない新しい青色で染まっていた。


「・・・ふぅ・・・気持ちいい」

 湯船に身体を沈めるとどうしても自然と出てしまう言葉だ。

「おはよう。カッパさん」

 カッパはいつものように大量のお湯を常に供給し続けている。

 ぼんやりとしていた意識は次第に目覚めてゆく。

 ユラユラ揺れる表面には天窓から差し込む光が同じようにユラユラと揺れている。


 一番風呂って気持ちいい。誰もいない静かな大浴場。


「私が天使・・・って」

 天窓の真下に歩いてゆく。

 そして。

 光をたっぷりとこの身体で受け止めて両手を羽根のように広げてみる。

 やっぱり・・・好きだな。本物の美有には悪いけど私はこの姿のまま生きていきたい。

 なんならこのままずっと天使として生きていてもいい。


「おや?先客か」

 声に反応して思わず湯船の中に身体を沈める。

「なんだ。ミュリエルじゃん。おはよう。一人?早いね」

 湯気の間から現れたのは

「ヴィヴィ・・・おはよう。そっちこそ」

「休日は一番風呂に入るって決めてるんだ」

「そうなんだ。なんかごめん」

「別にいいって。私の専売特許ってわけじゃないから」

 ヴィヴィエルは隣りに座ると

「あ〜朝風呂最高」

「だね。あのさ。ハニエルには昨夜伝えてあるんだけど」

 ヴィヴィエルは手を大きく伸ばして

「知ってる。ハニエルから連絡もらったよ、夜中に」

「そっか。ということで私はちょっと用事が出来たから。終わったら連絡する」

「ああ。合流できなかったらハニエルが悲しむ」

「そこまで?でもさヴィヴィは嬉しいんじゃない?」

「なんで?」

「だってハニエルと二人きりになれるんだよ」

「私は自分の気持ちよりハニエルの気持ちの方が大事なんだ」

「そうなんだ。でもさ・・・ううん。もし合流できなかったらハニエルのこと慰めて欲しいな」

「もちろんそのつもり。だから安心して遅れてくれ」

「ま、そうなったら」

 二人同時に深呼吸。

「上気せそう。先に出るね」

「ああ。また後で」

「うん。また後で」


 部屋に戻って窓から入ってくる風で身体の火照りを鎮める。

「そろそろ朝ご飯かな」


 コンコン。


「おはよう。ん?ミュリエル、もうお風呂?」

「おはよう。なんか早くに起こされた。それで。お風呂でヴィヴィに会ったよ。昨夜、私のこと伝えてくれたって聞いた」

「うん。簡単にね。今からご飯行くでしょ」

「もちろん。お腹減ってきた」

 ハニエルは一度だけ私の首筋の匂いを確かめる。

「うん。いいね」

「ハニエルのおかげだよ。行こ」

 こうやって手を繋ぐことが普通のことになりつつある。

 今だけ。私は天使という今を楽しんでいるだけ。


 現世に戻ったら記憶は無くなる。今は愛おしい気持ちで溢れているのに・・・


☆★☆★☆☆


 迎えに来たのはランヴェルだ。これだと私専属みたい。

「おはよう。ミュリエル。良い天気だな」

「ホント。おはよう。今日もよろしくね」

「はいよ。任せとけって。カーリ様のところでいいんだよな」

「そう。ん・・・どうしようかな」

「どうした?」

「ルシェルの話だとすぐに終わるって。だから待っててもらうのもアリなのかなって。今日は友達と街でお茶をする予定なんだ」

「まあ。俺は構わないけど。その分料金も嵩む」

「そっか。いくら経費だからって無駄遣いできないか。分かった。また呼ぶよ」

「ああ。その方が賢明だな。それじゃ出発といくか」


 相変わらずのスピードであっという間に到着。

「じゃあな」

「うん。またよろしく」

 ランヴェルはあっと言う間に行ってしまう。

 私は正門の前に立って

「やっぱり凄いお屋敷だよね・・・えっとルシェルは・・・いない。入ってもいいのかな?」

 開かれているってことは入ってもいいってことだよね。

「お邪魔します・・・」

 敷地内に一歩。特にセキュリティ的なモノの発動はなさそう。そのまま屋敷に向かって歩いていった。


「扉に着いたのはいいけど・・・呼び鈴って」

 見渡したところそんなものは発見できなかった。端末を見ると約束の時間まであと三分だった。このまま時間になるまで待っていた方がいいのか、それとも早めの方がいいのか、こういう時ってどうするのが正しい常識なのだろう。

 ここは地獄。果たして現世の常識が通じるかどうかも分からない。


 そんなこんなで迷っていると

「おはようございます。ミュリエル様。お待ちしておりました」

 音もなく扉が開くとこの間のメイドさんが出迎えてくれた。

「おはようございます。あの私のこと『様』はなくていいです」

「そういうわけにはまいりません。カーリ様とルシェル様がお待ちです」

 え?いるんじゃん。だったら迎えにきてくれてもいいのに。

 ちょっと悶々とした気持ちになったが案内されるまま二人の元に向かった。 


 案内された部屋は最初に来た時と同じ。そして座っている場所も同じだった。

「おはようございます。カーリ様。おはようルシェル」

「おはようございます。時間ぴったりですね」

「だって遅れるなんて考えられないよ」

「良い心がけです」

「おはよう。ミュリエル。こっちには慣れてきたか?」

「だんだんですが。毎日楽しく過しています」

「そうか」


 一通りの挨拶が済むと昨夜まとめておいた領収書と残った現金をルシェルに渡した。

「では確認します」

 今度はルシェルからメイドの手に渡って

「しばらく掛かります。その間お茶でもしましょう」

 言うまでもなく目の前にはすでにお茶が用意されていた。

 温かい紅茶とプリン。お皿の上でプッチンされた状態でプルプルと存在をアピールしている。

 そして。

 これまた言うこともなくルシェルの分はすでに三分の一は彼女によって崩されていた。

「美味しいですよ。固めで。私は固め派です。ミュリエルはどっちですか?」

「私も固め」

「ですよね」

「いただきます」

 暫しプリンと紅茶を堪能しつつ、これまでのことを話した。

「あの。まだ見つけられなくて」

「すぐには無理でしょうね。だってまだ四日目でしたっけ」

「そうだね。ちょっと聞いてもいい?」

 私は天界の天使について質問する。なぜ同じ天使なのにあんな目で見るのか。

「まあ、仕方ないことでしょう。ヘブヘルタワーが出来るまであまりお互いのことを知らなかったんです。簡単に行き来できなかったのが理由です。こっちは天界にどんな存在がいるのか、向こうはこっちにどんな存在がいるのか、想像でしかなかったんです。それに地獄で罪を償って天界に行った魂からいろいろ聞いていたのでしょう。実際にかなり昔は拷問地味た場所もありましたから」

「拷問?」

「聞いたことありませんか?『焦熱地獄』とか『等活地獄』とか」

「知らない。聞いたことない」

「罪の種類によって地獄は八階層に分かれていました」

「そうなんだ・・・」

「リンシ達には執行役の天使が鬼のように見えていたのかもしれません。そのイメージが潔癖な天界の天使に想像力を働かせたのでしょう。自分達とは違う恐ろしい存在だと」

「それで同じに扱われるのを嫌がっている」

「そういうことです。でもそれも昔の話。今はその認識は改善されています。でも一部は毛嫌いしている、とでも言った方が分かりやすいですかね」

 そういうことなんだ。だったらあの時の天使はそっちの部類の天使だったってことか。

「しかしミュリエルも災難でしたね。たまたま喧嘩を売られたのが古い考えの天使だった」

「ほんと怖かったんだから。何されるか考えただけでも・・・」

 サブイボが出る。 

「今度から相手を選んで喧嘩を売ってください」

「もうしない。でも・・・あんな扱い受けたら」

「そこは抑えましょう」

「ホント。区別されることって嫌なの。私は普通の私でいたいだけなの」


 目の前のプリンは固め。他にもトロトロなめらかプリンだって存在している。

 でもどっちもプリンだ。プリンに変わりない。種類はある。けれど区別なんてされていない。

 こんなこと考えている私の方が偏屈なのかな。

 こだわっているのか執着しているのか。多分どっちもだろうな。

 元の世界に戻ったら・・・私は普通の私になっているのだろうか・・・


「ミュリエルよ」

 最後の一口を食べ終わったカーリ様が口を開く。

「かつて私は天界の天使だった」

「え?」

「天界にいた頃。地獄の住人とはなんとも醜くおぞましい。そんな植え付けられた知識でこの世界のことを見ていた」

「・・・はぁ・・・そうなんですか」

「今はそうは思っていない。だが現実を見ても過去の知識に縋っている天使は今もいる。それは何故だと思う?」

「・・・わかりません」

「区別していることによって安心感を得ているんだ」

「どういうことですか?」

「人の世界も天使の世界も誰かを踏み台にしないと生きられない存在がいる。確かに区別するのは間違っている。何が上で何が下か。誰が決める?何が決める?」

 それって難しい問題なんだよね。私だって誰が決めたのって聞きたい。


「あ、すみません。熱い会話の途中ですが」


 ルシェルが申し訳なさそうに間に入ってきた。


「清算。終わりましたよ。問題なく処理されました。それとこれが今日からの分です」

 そっか。ミスがなくてよかった、よかった。

「それじゃ今日はもう終わりですよ。お友達と合流しますか?それともカーリ様とお話しますか?お好きな方を選んでもらっていいですよ」

 差し出された経費の入った封筒を受け取って

「どっちもって言いたい。でも待ち合わせの方が先だから行きます」

「なかなか早い決断ですね」

「・・・あのカーリ様」

「気にすることはない」

「また私と話してください」

「構わない。仕事の後ならな」

「ありがとうございます」


 屋敷を出るまでルシェルは見送ってくれた。

「では頑張ってください」

「うん。また報告する」

「はい。ではまた」

 ルシェルは屋敷に戻ってゆく。

 ランヴェルを呼ぶとすぐに来てくれた。

 そして。

「ミュリエル」

 真剣な眼差しで他に誰もいないのに小声で話す。

「見つけたかも」

「え?」

 あまりにも突然のこと。

「ほ、ホント?」

 つい小声で返してしまう。

「とてつもなく似ているだけかもしれない」

「どこで会ったの?」

「まあ、焦るな」

「焦るよ。だってそのためにこうしているんだから」

「確かに似ていた。でもミュリエルの情報とちょっと違うんだ」

「違う?どういうこと?」

「だからな。端的に言うとお前そっくりの天使だ。天界の。探しているのはリンシだよな」

「じゃあ天使違いってこと?」

「俺には分からねぇ。自分の目で確かめるんだな」

「どこに行けばいいの?」

「街に行くんだろ。そっくりさんの天使も街にいる」

 私と同じ顔をした天界の天使?

 探しているのは同じ顔をしたリンシのはず。

 他人の空似って言葉もあるんだ。もしかしたら本当に似ているだけってこと?

「急ごう。見失ったら大変だ」

「乗った乗った」

 人力車は疾風のように走り出す。瞬きをする間もなく目の前には街の入口があった。


 さすが。休日ということで街にはたくさんの天使とレイスで賑わっている。こんなに混んでいるんだ。今夜、リンシも加わったらどんなことになるのかな?

「さ。着いたぞ」

「ありがとう。それでその天使ってどんなカッコしてるの?」

「そう言えば最初にお前に会った時と似てたな」

「制服ってこと?」

「それにあと二人の天使もいる。一人は子供だがもう一人は・・・」

「なんで濁すの?」

「かなりの上級天使だな。フードを被っていたけど俺には分かる」

「子供と上級・・・分かった。探してみる」

「くれぐれもこの間みたいなことになるなよ」

「分かってる。それとありがとう」

「たまたまだ。連絡くれたら迎えに行く」

 

 私は頷いて答えると急いで街の中に入っていった。


 人混みでなかなか前に進むこともできないどころか周りだってちゃんと見ることができない。

「こんなんじゃ分かんないよ」


 焦る気持ちを抑えれば抑えるほどますます気持ちが乱れてゆく。


 天界の天使。あなたは私の探している人とは違うの?

 それとも美有。あなたなの?

 私は天使になった。

 ならあなただってその可能性があるって今気が付いた。


 答えを出す前に探さないと。そして確かめないと。

「一緒に帰ろう。みんなが待っている現世に」


 私はハニエル達のことをすっかり忘れてしまっていた。

さあ。六月に突入。台風大変でしたね。

読んでいただきありがとうございます。

この間まで箱根でのんびり。

天気にも恵まれ美術館巡りがメインの旅行でした。

久し振りに自然に囲まれてリフレッシュ。

これから物語を進めるための英気を養いました。

快調に?書いていこう。という意気込みで精進しています。

次回もよろしくお願いします。

読んでいただくことがなによりの楽しみになっています。

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