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ワタシ死ねないみたいです。あと○○になる方法、探してます。  作者: マナマナ


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飛ぶ特訓と公衆電話

 ラフィは何か唱えている。口は動いているのに音がない。それは食事の時と同じ。一体誰に?何に?届けているのだろう。

 やがて

 私自身が淡い光に包まれる。微かな温もりと微かな祝福を与えてくれる。

 昨夜よりも心が軽い。朝よりも自分でいたいと思う。

 目を閉じて私に向けられいることを感じる。


「終わった。目を開けるんだ」


 ゆっくりと瞼を開ける。見える景色は何も変わっていない。強いていうならラフィの翼がないことくらい。

 自分の手を見る。私は本当に天使になったの?って思うくらいなにも変化はない。


「ミウはたった今から天使となった」

「ホントにしちゃいましたね。知りませんよ」

 リリエルの言葉には笑顔で返す。

「あの」

「天使になった感想か?」

「感想・・・あまり変わっていないように・・・」

 喋り終わる前に

「ひゃ!!!」

「これでも信じられませんか?」

 リリエル・・・・・・胸じゃない。なに?背中がゾクゾクするんですけど。

「これは先生の翼の一つです。大事にしてください」

「つ・・・つばさ・・・?」

「自分の姿。ちゃんと見た方がいいですよ」


 リリエルに連れられて鏡の前に行く。


「・・・・・・・」

「なんか言ったらどうですか?」

「・・・・・・翼・・・ほ、ほんとに?」

「ホントです。現実を受け入れて下さい。なんだったら自分の意思で動かして実感して下さい」

 真っ白な一対の翼・・・これが天使になったということ?

「う、動かすって・・・」

「そうですね。肩でも廻す要領でって言えば分かりますか?後は慣れですね」

 肩・・・意識。お、重い・・・

「何か重いね」

「失礼な天使ですね。翼は象徴ですよ。さ、もう一度」

 リリエルは自身の翼を展開して動かす。

「こんなに簡単なのに」

「それってリリエルが初めから天使だったからで、私はたった今なの」

「仕方ありませんね。後でちゃんと教えます。一旦戻りましょう」

 リリエルは翼を収める。

「そのやり方教えて」

 教えられた通りにやってみるとこっちはすぐに出来た。

 翼のなくなった私はいつもの私として鏡に映っていた。手で肩甲骨を触っても翼の余韻もなかった。

 ほんと。どこに収納されているの?疑問が増した。


「すみません。急に席を立って」

「別に謝ることじゃない。それとこれを」

 カードを目の前に差し出す。最初は真っ白だったカード。今では私の顔写真と名前が記載されている。

「あの・・・名前が違いますけど」

「天使だから人間の名前は使えない。こっちで勝手に付けさせてもらった」

 もう人間じゃない・・・天使だって・・・気持ちは不思議と複雑が入り交じっている。

「名前・・・『ミウリル』・・・名残がある」

「気に入ったかな?一応その辺は考慮したんだ」

「・・・ミウリル・・・可愛い・・と思います」

「ま。そのうち慣れる。頭使ったから甘いものが欲しいな」

 ラフィは立ち上がって台所に歩いてゆく。


 カードを手にしてじっくりを見る。マイナンバーカードみたい。

「良かったですね。翼と名前を与えられるなんて。リンシだったミウは絶対に経験できない幸運を受けたんですよ。先生に感謝してください」

「・・・うん。まだ・・・よく分からない。けどこれで元の世界に帰れるなら」

「天使の歴史に残ることかもしれませんよ」

「歴史?そんなに?」

「それだけの幸運だってことを受け止めて下さい」

 幸運ってなんだろうな。でも今はこうしていなきゃならない。

 天使にならなければ死んじゃうかもしれない私はどんな興味を抱かせたのだろう。ラフィは私を通して何を見たいのだろう。


「おおい。ちょっと手伝ってくれないか」

 奥から声が聞こえる。

「行きましょう。先生は絶対にケーキを用意しているはずですから」

「ケーキもあるんだ」

 リリエルに手を引かれる形で一緒に台所に向かった。


☆★☆★☆★


 家の外に出ると朝の日差しが木洩れ陽となって私達の頭上に降り注いでいる。

 昨夜は真っ黒だった樹々は初夏を思わせるような新緑の葉を気持ち良さそうな音を奏でながら風に揺れていた。

 確かここって地獄だったよね。想像している世界とは全然違っている。

 もしここが天国なんて言われても素直に受け止めているだろうな。 

 なら本物の天界ってどんな世界なのかな?興味が出てきた。

「あのさ。リリエル。聞いてもいい?」

「はい。何を聞きたいんですか」

「リリエルって天界の天使なんだよね」

「はい」

「それでね。ここって地獄でしょ。私にはすごくキレイな世界に見えるんだ。だったら天界ってもっとキレイなのかなって。それを聞きたい」

「そうですか・・・・・・天界・・・・・知りたいんですか?」

 リリエルは答えるか答えないか、迷っているみたい。

「そうですね。天界に行くまでお楽しみってことでどうでしょう」

「え?なんで教えてくれないの?」

「あたしには上手く説明出来ないからです。先生に聞いた方が適切だと思いますよ」

 なんか歯切れが悪いなぁ・・・言いたくない理由でもあるのだろうか。

「そんなことよりも翼を使えるように訓練です」

 急に話題を変える。間髪入れずに自身の翼を展開。

 確かに練習するために今こうしているんだけどね。

 だったらラフィに聞くよ。言われた通りね。

 私も自分の翼を展開。この動作は苦もなくクリアできている。

 それにしても翼を展開するとやはりそれなりの重さを感じるのは私が天使未経験だからなのかな。

 例えるなら終業式のランドセルみたい。


「いいですか。同じように広げてください」

 リリエルは閉じている翼を横に大きく開く。こうすると思っていた以上に大きいことが分かる。

 私は肩甲骨辺りに意識を集中。意志が伝わるのを感じる。両手を広げる感覚で翼を開いてゆく。

 上手くいっているのかな?リリエルに視線を合わせると

「おお。いいですね。その調子です。もう少し、頑張って」

 さらにイメージを強くする。背中から翼が動いているのが伝わってくる。

「出来ました。いいですよ。第一段階クリアです」

 やった。小さくガッツポーズ。でも少しでも気を抜くとすぐに元に戻ろうとする。

 これって駄菓子屋さんにあるアレだよ。吹いて空気を入れて丸まっている紙を伸ばして遊ぶ、アレだって。えっと・・・名前聞いたことないけど。アレに似ている。

 常に息を吹き込むように意識する。これはこれで結構疲れる。慣れたらそんなことなくなるのかな?


「では第二段階」

 リリエルは実際に羽ばたかせてみる。

「現世ならこれで空が飛べます」

「なんでここだと飛べないの?」

「正確には飛べないのではなく飛ぶことを禁止しています」

「禁止?だって飛んだ方が楽なんじゃないの?」

「説明しましょう。ここでも天界でも不用意に飛ぶと思い通りにできないんです。全く関係のないところに飛ばされて下手したら死んでしまう。そういった事故が規制されていない時代にはたくさんありました。だからお互い行き来は難しかったんです。今だってたまにありますよ。酔っぱらって飛んで行方不明になったとか」

「はあ・・・そうなんだ」

「そうなんです。理解していただけましたか?でも。そんなこと言ってもほんのちょっとなら飛べます。例えばあの枝から枝くらいなら。あと低ければ。ということで第二段階やってみましょう」


 地獄とか天界って夢のような世界でなんでもできると思っていた。

 けど実際は違うんだ。

 あと。気になったけど天使が行方不明ってその後はどうなったの?


「さあさあ。これをクリアできたら実践です」

「実践?飛ぶってこと?」

「それ以外なにがあるんですか?」

「そうだけど。いきなり過ぎるでしょ」

「なにごとも最初が肝心。飛びたくないんですか?気持ちいいのに」

「気持ちいい・・・・・・」

「そうです。人間だった頃、思ったことありませんでしたか?果てのない大きな空を飛んで大きな雲で一休みって。天使になった今なら出来るんですよ、それが」

 リリエルは両手をコブシにして力説してくれた。


 人間だった頃・・・自分がそんな風に言われるなんて考えたこともなかったな。でもいつかは現世に帰る。その時が来たらどんな風に思うのかな?


 私は少し歩いて森が拓けている場所まで行って目の前に広がる空を見る。

 ここにも現世と同じように果てのない空が青色一色に染まっていて、遥か遠くの場所には大きな夏のような雲。あの場所で寝転がったら永遠に眠ってしまいそう。

 それくらい気持ち良さそうに見える。


「さて。ミウリルの気持ちは固まったみたいですね」

「うん。天使の今じゃないと経験できないことだよね。やってみる」

「その意気です。飛べない天使なんて『豚に真珠』『猫に小判』『馬の耳に念仏』です」

「なんか詳しいね」

「それほどでも・・・ありますけど」


 意識を翼に集中。どんな感じならいいのかな?

 腕を翼のように動かすイメージ。こんな感じ?

「お。いいですね」

「いい感じ?」

「まあ、腕も一緒に動いてますけど動かせてます」

 え?・・・ほ、ホントだ。腕も動いている。

「では今度は足先を意識してください」

「もう第三段階?」

「そうですよ。地面を感じてください」

 革靴の底を通して地面を感じる。私は確かに地に足を付けて立っている。

「今度は地面から離れるイメージです。自分自身を空に近づける感覚と言えば伝わりますか?」

「こ、こう?」

「いいですね。五センチ浮いてます」

「ほんと?」

「気を抜かないで。落ちます」

 目を閉じてもっと空を感じてみる。空が近くなるイメージ。


「どうだ?上手くいっているかな?」

 この声。ラフィ。見に来てくれたんだ。

「ご覧の通りですよ」

「おお。いいねぇ。でも・・・ミウリル。そろそろ降りた方がいい」

 目を開ける。え?

「ちょ、ちょっと、え?」

 ラフィ達の姿は足元。こんなに高くって・・・・・・

「あ!!!」

「聞こえてるなら今度は地面に近づくことを意識するんだ」

 私はまだ着替えていない。慌てて服を押さえる。

「駄目。真下に入らないで」

「どうしたんだ?早く降りてこないと飛ばされてしまうぞ」

「だから駄目って言ってる。お願い見ないで・・・きゃ!」

 意識が乱れて力がふっと抜けると身体は重力に従って

「きゃあ!!!!え?」

 急にラフィの顔が目の前にあった。

「気を抜くと簡単に落ちるって言われただろ」

 私のことを抱きかかえてゆっくりと降りてゆく。

「あ、ありがとう」

「お礼の割に睨んでいるように見えるが」

「見たでしょ。見るなって言ったのに」

「なんのことだ?」

 それを私の口から言わせるの?

「安心してください。見えていませんよ」

 リリエルが答える。

「そんなの分かんないじゃん」

「だから眩しくて見えなかったんです。先生は本当に見ていません」

 ラフィは隣りで『うんうん』と頷いている。

 別に見られたからって減るもんじゃない。けど気分的に何かが減る・・・う〜モヤモヤするけど納得するしかないのかな・・・

「わ、分かった。でも嘘はイヤ」

「嘘なんて地獄じゃ通じません」

「?」

「要するに地獄で嘘は言えないってことです。そんなことしたら即謁見室行きです。そして怒鳴られて罰金です」

「怒鳴られるって誰に?」

「誰って。閻魔大王カーリ様に」

「閻魔?ホントにいるんだ」

「もちろんです。怒ると怖い天使です」

「天使?」

「はい。かつては天界の天使だったんです」

「・・・・・・」


 来たばかり。だから仕方のないことだけど現世でのイメージとはずいぶんかけ離れている。地獄に見えないのに地獄でしょ。天使がいて。嘘は言えなくて。翼があるのに飛べない。


「慣れてください。現世に帰ったらここで過した全ての記憶がなくなるんです。だから今は天使として楽しむのもアリですよ」

「記憶がなくなるってホント?」

「人間は死なないと来ることの出来ない世界なんです。現世では必要ないでしょう」

 なんて答えたらいいのか分からない。天使として楽しむって。何も残らないなら意味ないと思うけど。

 でも。空を飛んだ記憶だけ残すことってできないのかな?一つくらい思い出欲しいな。


「そうそう。服が乾いたから取込みついでに畳んでおいた」

 よかった。乾いた。これで下着・・・畳む?

「なんで睨んでいる?」

「だって触ったんでしょ」

「仕方ないと思うが」

「・・・はぁ・・・」

 深く溜息。

「・・・・・・ありがとうございますは言います」

 私は着替えるために一人先に歩き出す。振り返った顔は怒っているはずなのに笑っていた。

 生まれた時からもう一人の存在があって、だから他人と違っていて、病気で死ぬところだったのに元気になって、一人になったと思ったら知らない子がやって来て、気がついたら天使だって。

 こんな体験した人なんていないよね。

 この笑顔は自分のヘンテコな運命に対してってことなんだろうな。


 今日は良い天気になりそうだね。


☆☆☆☆☆☆


「あ〜今日も終わったね」

 終業を知らせる鐘が学園の中を駆け巡るとみんなそれぞれに動き始める。これから部活が始まるんだ。

「ミュリエル、行くの?」

「えっと・・・そうだね・・・でもまだ早いかな」

「なら見学でもしていかない?」

「見学って・・・いきなりって大丈夫なの?」

「もちろん。どうかな」

 窓の外にあるのは夕焼けすらまだまだでたくさん青色が残っている空がある。

「いいよ。ハニエルが何部か気になるし」

「あ。まだ言ってなかったね」

「行けば分かる。だからそれまで楽しみにしてる」

 ハニエルが手を差し出したので私も手を差し出した。

「行こっか」


 廊下にはたくさんの天使が行き交っている。こんなにいるんだ。

 繋いでいたのは手のはず。それがいつの間にか腕になっている。

 あまりにも自然な流れで気がつかなかった。

 でも。

 昨夜のことがあったせいか、今はこうしている方が落ち着く。

 私達の姿はとても自然なことなの?誰も何も言うことはしない。そもそも感心がないとか?

 実はもの凄く感心があるのに何も言えないだけなのかもしれない。

 現世でこんなことしようものなら、あっという間に注目の的になって噂は竜巻のように広がってゆく。

 やはりここが地獄でみんな天使だということで感覚が違うのかな。

 おかげで誰かに突っ込まれることもなく平和に廊下を歩いているわけだけど。


「二人共仲良いね」

 いきなり正面に現れた天使が話しかけてきた。

 私達より頭二つは身長差があるから二人して見上げる。

 カボチャのような黄色い髪は耳が見えるほどショートカットでおまけに毛先はクルッと丸まっている。私のことを見る瞳は暮れてゆく太陽のような濃い赤色をしていた。

 それに何か文句があるわけでもなさそう。むしろ恥ずかしがっているみたい。


「彼女は?」

「初めましてだよね。彼女は・・・」

「ハニエル。自分の名前くらい自分で言う」

 食い気味に言葉を被せてくる。

「私はヴィヴィエル。ヴィヴィって呼んでくれ。あなただろ。チャレンジメニューに成功したまでは良かった。その後すぐに失神したってことで有名な天使。転校初日に話題になったって聞いた」

 あの味・・・思い出しちゃった・・・二度と挑戦しないけどね。

「私はミュリエル。よろしくねヴィヴィ」

「どんな顔してるか見たかった」

 ヴィヴィエルはじっと私のことを見て

「納得かな。でもさ・・・」

 ヴィヴィはハニエルの方に視線を移して

「昨日今日なのに仲が良過ぎる。もしかして昔からの知り合いとか?」

「違うよ。ミュリエルとはホント会ったばかりなの。それで何か用なの?」

「別に。ただの挨拶だよ」

「私達これから部活なの。あなたもでしょ」

「うん、そう。あのさハニエルちょっと聞いて」

「?」

「今度の休日。一緒に遊びに行かない?」

「遊びに?ずいぶん久し振りですね。誘ってくれるの」

「うん。お茶したくなった。久し振りに」

「それって二人で、ってこと?それともミュリエルも、ってこと?」

「私は二人がいい。いつものように。でもハニエルが希望するならミュリエルも一緒で構わない」

 はっきりとモノを言う。それに正直だ。

「とても良い提案ね。返事は後でもいい?それとも待てないから今すぐとか?」

「後でもいいし、今でもいい。ハニエルが決めて」

「じゃあ・・・」

 ハニエルは腕に力を入れて

「ミュリエルも一緒がいいかな」

 そうなる予感はした。けれど彼女の希望は二人。お邪魔になっているよね、私。

「え?でも・・・ヴィヴィは二人がいいって・・・」

「それはヴィヴィの第一希望でしょ。私は第二希望に賛成なんだけど」

「分かった。なら時間と場所は後で連絡する。じゃあ私も部活だから」

 ヴィヴィエルは行ってしまう。ずいぶんあっさりと決まった、でいいのかな。

「ねえ。ホントに良かったの?」

「だって向こうの提案だよ。私は選んだだけ」

「お邪魔じゃない?私」

「そんなことないからヴィヴィは提案したんだよ。ねえどこ行きたい?」

「どこって言われても・・・まだよく知らないし」

「なら一緒に考えましょ。お風呂で」

 お風呂。私が帰ってくるのを待っていてくれるんだ。

「いいよ。分かった。お風呂で」

「私達も行こう」

「うん」

 私達は腕を組んだまま部室に向かって歩き出した。

 窓から見える景色に夜はまだ遠かった。

 

☆★☆☆★★


 再び夜が訪れる。今夜で三日目。当たり前だが何の成果も得られていない。

 私は昨夜と同じ黒い服に着替えて街を歩いて適当な店を覗いて廻る。


「いらっしゃい。今日も来てくれたんだ」

「はい。夕飯まだなんで。あのいいですか?」

「もちろん、大歓迎。さ、昨日と同じ席でいいかい?」

「空いてれば。あの席って落ち着くんです」

「こうしているってことはまだ見つけてないってことだよね」

「はい。そうなります。それにすぐに見つかるなんて思ってもいません。リンシは夜だけだし、私には門限があります。時間が限られ過ぎています」

「あんたより早く見つけてバイトにしないと」

 バイトのこと、諦めていないみたい。ちょっと苦笑い。

「それで?今日はなに食べる?」

「オススメで」


 この間。私はいろいろ学んだ。それに夜の街に気持ちも身体も馴染んできている。

 自分がこの世界の住人になりつつあるのを感じている。


「ん?」

 人混みを気にしながら通りを見張っていると端末が震える。

「こんばんは」

「ルシェル。こんばんは」

「どうです?順調・・・ではないですよね」

「まだ三日目だし。見つけるにはまだ時間が掛かりそう」

「まあ。根気良く頑張るしかないですね。それで明日は学園休みですよね」

「うん」

「そしたら迎えを寄越すので明日カーリ様のお屋敷まで来てください」

「あ、明日?急だね、ずいぶん」

「もしかして何か予定でも?」

「えっと・・・」

 まさかクラスメイトと遊びに行くなんて言える立場じゃないのは分かっている。けど同級生同士のお出掛けって楽しみにしていた。ここは素直に言った方がいいのかな?


「あ。そういうことですか。別に特別な用件じゃありません。経費を一回清算してもらおうかと。あまり貯めるとかえって面倒だと。それにすぐ終わります。お友達と合流できると思いますが。いかがです?」

「そういうことなら明日窺います。それに質問もあります」

「了解です。では明日」

 こうしてルシェルとの通信は終わった。

 今夜も何もなさそう。昨日みたいなトラブルだって回避できる。

 こうして見ていると天界の天使と地獄の天使の違いが少しだけ見えてくる。

 なんていうか感?みたいな。決定的な違いってないけど空気感みたいなモノが私達と違う。これが私が獲得した情報だし、これこらいしかまだ進歩していないってことなのかな。

 時間を確認するとそろそろ門限になる。

「今日も空振りか。もっと良い方法ってないのかな」


「・・・ってことらしい」

「だから裏通りにあるんだろ。ヤバいじゃん」

「でも確実に話せるって」

「その情報ホントなんだろうな」


 人混みの中、というよりちょっとだけ表通りを逸れた路地から聞こえてくる。

(何の話してるんだろう?)

 気になって声の方に近寄ってみる。

 見えたのは・・・リンシだよね。男二人でなにコソコソしてるんだろう?


「裏通り怖えぇって」

「だから二人で行けば大丈夫だろ。一人はぜってぇヤバい。でも二人いれば大丈夫みてぇだし」


(裏通りってそんなに危ないの?ランヴェルにも絶対一人は駄目だって言われてるけど二人なら行けるってこと?)


「バイトでやっと溜まった金だろ」

「そうだけど」

「あと二日で俺達にはお迎えがくる。もう街にはいられない」

「・・・だよな。本当にこれが最後か」

「明日が最終リミットだ」

「ああ。だったら今夜は飲もう。必要な分以外は余り金みてえなもんだから。最後の晩餐ってことでよ」

「・・・まあ。それでもいいけど・・・」


(わ、こっちに来る?)

 慌てて表通りで後ろを向く。どうやらリンシは私のことに気が付かなかったみたいで人混みの中に消えてゆく。

 『話せる』って言っていたよね。それって誰と?

 裏通り・・・いずれはここも探さないとならないのかな?見るからに怪しい雰囲気だよね・・・

「あ」

 タイムリミット。端末は門限を知らせている。

 

 帰りの人力車の中で

「ねえ。裏通りって入ったことある?」

 ランヴェルに聞いてみる。

「まさか。興味があるのか?」

「興味っていうか知らないから知っておいた方がいいのかなって」

「そうだな。天使なら平気か」

「どういうこと?」

「最初に会った時。お前はリンシだった。だから忠告した」

「リンシが行くとどうなるの?」

「まあ、いずれ誰かから聞くかもな。教えてやる。もしリンシが一人で裏通りに入ったら飲み込まれて二度と戻ることはできない」


 なんか急に怖いこと言ってるよね。背筋が寒いんですけど。


「飲み込むって・・・もしかして大型のモンスターがいるのとか?」

「は?そんなのが街に出たら大騒ぎだ。飲まれるってのは魂が闇に飲まれるってことだ。一度飲まれた魂は二度と戻ることはない」

「飲まれた後って」

「消えるだけ。跡形もなく」

「それって一人の時だよね。二人いれば平気なんでしょ」

「確かに。でも二人共平気なわけじゃない。一人を犠牲にしている間に逃げるんだ」

「うわ・・・そうなんだ。でも天使は平気ってことでしょ」

「まあな。でも絶対じゃない。特にミュリエルのように見習いレベルだと飲まれる可能性もある」

「え!そうなの?」

「ま。行かないのが一番。それにただ入っただけなら逃げることはリンシでもできる。問題なのは公衆電話なんだ」

「そういえばあるって教えてくれたよね」

「ああ。リンシが裏通りに入るのはそれがあるからだ」

「?」

「公衆電話は現世と繋がれるんだ」

「え?現世?」

「そう。だから迎えが来る日。最後に現世にいる大切な人と話す。会話が出来るならしたいって思うのが人情なんだろ」

 現世に電話できる?それって私でも出来るってこと?

「おい。今自分も、って考えてただろ」

 その通りです。ずばり言い当てられて顔が赤くなる。

「悪いこと言わねえ。やめとけ」

「なんで?」

「だってよ・・・つうか到着。明日の朝迎えにくる」

「ま、待って」

「理由なんて一つだろ。死んだ後、本人から電話って。向こうからしたら恐怖体験でしかねえだろ。そんな気持ちにさせたまま成仏ってできるのか?」

「・・・確かに」

 でも。私は死んではいない。

 けど・・・・・・いろいろな考えが巡るから結論なんて出ないよ・・・

「分かった・・・お休み。明日もよろしくね」

「ああ。じゃあな」

 そしていつものように消えてしまう。

 現世に電話か・・・したいの?したくないの?

 今は私の気持ちが分からないよ。

 

 またハニエルに・・・・・・

 

 私はモヤモヤした気持ちのまま戻っていった。


毎日の湿気が私を悩ませます。

読んでいただきありがとうございます。

湿気で頭が廻らないので、ついにエアコン起動。

午前中にアップしたかったのにこの体たらく。

前みたいに小分けでアップの方が良いのでは?

などと思っている今日この頃。でもなかなかペースが掴めない。

なのでかなりごちゃごちゃしてすみません。

次回も読んでいただけるよう精進しよう。いや、します。

ので、次もよろしくお願いします。

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