表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未知標  作者: 一族
796/806

第七九五話 踊り場(二七)

 孝子が乗ってくれた、とみるや、祥子は、がぜん身を乗り出してきた。

「はい。やっぱり、私たちも漫画に出していただきたいな、って思いまして」

「え。なんのこと? 漫画って?」

 当然、那美が首を突っ込んできて、当然、孝子は無視する。

「ほう」

「先輩と須之内先輩にも話を通してあります。お許しを、いただけますか?」

「ちょっとー。無視しないでー」

「うるさい。今、祥子と話してるんだよ」

「私も混ぜてー」

 言い返したな。この愚妹が。許さん。孝子が火を吐こうとした瞬間だった。

「那美さん! 黙っていていただけませんか!? こちらは切羽詰まってるんです!」

 祥子の怒声だった。びくりとして、さすがの厚顔無恥も押し黙る。演技派め。やる。にやりとして、孝子、発射準備は万端となっていた業火をのみ込んだ。

「祥子。構わなくていい。続き」

「はい。いよいよ郷本さんが動きだしたみたいなんです。それを受けて、小早川さんも本気になられて。もう、ここまでカラーズが乗りかかってることに、その一員たる私が与しないなんて、あり得ません」

 尋道氏は基佳に一任姿勢だったはずだ。その男が動きだした、とは。一体、何をやったのか。孝子はさらなる説明を祥子に求めた。

「お姉さん。アストロノーツのウィノナ・ルイスは、ご存じですか?」

 知らぬ。が、アストロノーツの、と枕詞がある以上、アストロノーツが招いた外国籍選手の名であろうことは、容易に想像できた。

「はい。そのウィノナ・ルイスなんですけど、日本の漫画が好きなんですね。日本語を覚える参考書に漫画を使っているぐらいで。で、例の漫画にも興味を持って」

「取り込んだ?」

「はい。電光石火でアドバイザーとして迎え入れられました。出演も、するみたいです。留学生扱いで、結構な早期から」

 なるほど。いつもながら、手が早い。

「静ちゃんは、なんだって?」

「正直に申し上げますと、依然、さっぱり興味はないみたいです。ただ、そのままでいいし、読まなくてもいいので、私の顔を立てると思って、協力してください、って頼み込みました」

「別に、あの子ごとき、そこまでしなくてもいいでしょうに」

「そういうわけにはいかないんです。須之内先輩には快諾いただけたので、先輩が一人だけ不在だと悪目立ちしてしまいます。変な勘繰りを招かないためにも、参加していただくべき、と判断しました。発端は、漫画、あんまり興味ないし、みたいな態度を取った私にあるのはわかっています。謝罪して、撤回します。お許しをいただけなかったら、私、立つ瀬がありません。伏してお願い申し上げます」

 伏して、ときた。まさしく、そこまで、言わなくてもよいのだが、ここは、祥子の誠意を買うべきだった。許そう。

「ありがとうございます!」

「うん。あ。そうだ。あの男は、何か言ってた?」

「はい。ご自身に存念はないので、お姉さん次第、と。それぐらいの用事だったら、繁多とはいえ伺ってもいいでしょう。ただし、長話はせず、許可だけもらったら、即刻、打ち切るように、と言い付かってます」

 尋道め、孝子の飽きっぽい性質を把握している。行き届いていた。よろしい。孝子は莞爾として笑った。

「さあ。今ごろ、もつは頭を抱えているだろうな。みにょーりさんも、どう裁いていくのやら。見ものだね」

「ケイちゃん。そろそろ教えてよ。なんの話ー」

 孝子は舌打ちした。またぞろ、こいつか。無関係の者が首を突っ込んでくるんじゃない。聞き流すことだ。収まりきっていなかった火の気が勢いを取り戻し始める。

「孝子ちゃん。私も知りたいな」

 決定打となった。前方左側にコンビニの立て看板が見えた。ウインカーを左に出し、ルームミラー、サイドミラー、目視まで全て確認よし。駐車場に乗り入れる。

 直ちに降車し、取り出したるはスマートフォン。尋道に向けて発信し、つながり次第、発したのは、

「ナミスケとサーヤちゃんは、切れ」

 この指示であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ