荷物持ち
サイラの説明を聞いて、ようやく理解できた。
二度目の覚醒。
かつて特別な力が目覚めた者に、稀に起こる現象。
通常、力のレベルは一度目の覚醒の後で安定し、それ以上大きく変化することはない。
だが、極めて稀なケースでは——本人の力がそれまでの限界を突然超えてしまい、二度目の覚醒が起こることがある。
その場合、力が爆発的に上昇することがある。
低いランクから、はるかに高いランクへと変わることさえあるという。
だからこそ、二度目の覚醒は極めて稀な現象とされている。
ほとんどの覚醒者は、これに達することは決してない。
それでも——既知の規則に従わない、例外的なケースというものも存在する。
通常の方法では説明のつかないケースが。
自分の手を見た。
胸の奥に、希望のようなものが染み込んでくるのを感じた。
「もしかして……俺も?」
サイラが、俺のそばに小さな装置を置いた。
黄金色のドーム。緩やかな曲線を描く縁。そして頂上には、淡く光る紫色の結晶。
「これは魔力を感知する道具よ。ここに手を置いて」
隠しきれない興奮とともに、その結晶に手を置いた。
……。
待った。
一秒。
二秒。
……。
結晶は、一度も光らなかった。
何も。
きらめきひとつすら。
「き、期待してる結果があるんだけど……」
まだ残っていた興奮の勢いで、そう言った。
「結果は? もし本当に二度目の覚醒だったら、俺の新しいランクは?」
サイラが、結晶を見つめる。
そして、俺を見た。
その瞳の中には、まだ理解できない何かがあった。
「ごめんなさいね」
彼女は静かに言った。
「あなたのことを、少し買いかぶっていたみたい」
「……何があったんだ?」
胃の奥に、冷たいものが這い上がってくるのを感じながら、そう尋ねた。
「結晶は、一度も光らなかった。つまり、あなたには力の欠片すら残っていない。あなたの力は……ほぼ空っぽよ」
「……待てよ」
言葉が、つっかえる。
「その道具、何か故障してるんじゃないのか? どうしてそうなるんだよ。あんた、俺に二度目の覚醒が起きたかもって言っただろ!」
「そう起きたと思っていたわ」
彼女は、あっさりと答えた。同情の色など、ほとんど感じられない。
「でも、そうではなかったみたいね」
彼女は、装置のボタンを押した。
淡い光線が放たれ、俺の顔全体をスキャンする。
しばらくして、装置の側面に小さな穴が開いた。
そこから、一枚のカードが出てくる。
俺のハンター身分証だった。
サイラは、それを俺に手渡した。
「お大事にね。それじゃあ」
そして、一度も振り返ることなく、部屋を出て行った。
……。
俺は、枕に頭を沈めた。
手の中のカードを見つめる。
写真には——黒い髪、黒い両目。何の特徴もない、平凡な表情。
名前:黒崎ミナト。
ランク:E。
職業:荷物持ち。
……。
「に、荷物持ちだと!?」
ベッドの上で、勢いよく身を起こした。
「俺が……ハンターたちの荷物持ちだって!?」
怒りに任せて、カードをベッドに叩きつけた。
「期待した俺が……馬鹿みたいじゃないか」
再び枕に頭を沈める。重いため息が漏れた。
「これがいつもの俺の運か。まったく新しい世界に来てもなお、俺はずっと透明人間のままらしい」
それにしても……。
サイラは、これを奇妙な状況だとすら思わなかったのか?
六回も刺されて死んだ男が、ゲートを通り抜けて、生存者たちの中に突然現れ——それなのに、まったく力を持っていないという結果?
少しも気にした様子がなかった。
まるで、この世界ではごく当たり前のことだとでもいうように。
突然——。
頭の真上に、黒い画面が現れた。
素早く顔を上げる。
「……これが見えてるのは、俺だけなのか?」
触れようとした。
だが、手はすり抜けるだけだった。まるでホログラムの画面のように。
「触れられないのか?」
そこには、こう書かれていた。
『通知』
未読メッセージがあります。
……。
思い出した。
首を斬られた後、あのゲートに投げ込まれたとき——似たような画面が現れた。
あれが、俺をこの命に呼び戻したのか?
まるで、ゲームのようだ。
ゲームをプレイしているとき、時々ゲーム内で未読メッセージが届くことがあったのを思い出す。
その読み方は、いつも単純だった。
「メッセージボックスを開く」
特に何も期待せず、声に出してそう言ってみた。
……。
目の前の画面が開き、いくつもの小さな画面に分かれて、俺を四方から取り囲んだ。
黒く光る文字列。無機質な枠。細い線が、まるで生きているかのように動いている。
数分間、俺はそれを読み続けた。
「これは、プレイヤーの成長を助けるために設計されたシステムです。プレイヤーがシステムの指示に従わなかった場合、罰則が科される可能性があります」
「……何も分からない。マジで複雑すぎるだろ」
隣に現れた別の画面に目をやる。
『通知』
デイリークエスト:力の増強に努めよ。
「……確認、でいいのか?」
そう口にした瞬間、新しいリストが現れた。
『クエスト情報』
【デイリークエスト:筋力トレーニングが到着しました】
目標:
腕立て伏せ 〔0/100〕
腹筋 〔0/100〕
スクワット 〔0/100〕
長距離走 〔0/10km〕
「腕立てに、腹筋に、スクワット……それから長距離走?」
呆然と、そのリストを見つめる。
「これを全部達成しないと……罰則を受けるってことか?」
「一体何なんだよ、これは」
再びベッドに横たわり、額を手で押さえた。
「冗談にも限度があるだろ」
「病院に入院してる身で、こんなことをやる体力、一体どこから捻り出せって言うんだよ」
「どうなってるんだ、これは、本当に……」
答えは、見つからなかった。
ただ、目の前に浮かぶ画面たちが、静かに、冷たく漂っているだけだった。
まぶたが、重くなっていく。
眠りに落ちる直前、画面の隅に、最後に何かが見えた。
カウントダウン。
残り3時間。
罰則発動まで。




