↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/15

荷物持ち


サイラの説明を聞いて、ようやく理解できた。

二度目の覚醒。

かつて特別な力が目覚めた者に、稀に起こる現象。



通常、力のレベルは一度目の覚醒の後で安定し、それ以上大きく変化することはない。

だが、極めて稀なケースでは——本人の力がそれまでの限界を突然超えてしまい、二度目の覚醒が起こることがある。

その場合、力が爆発的に上昇することがある。

低いランクから、はるかに高いランクへと変わることさえあるという。



だからこそ、二度目の覚醒は極めて稀な現象とされている。

ほとんどの覚醒者は、これに達することは決してない。

それでも——既知の規則に従わない、例外的なケースというものも存在する。

通常の方法では説明のつかないケースが。

自分の手を見た。

胸の奥に、希望のようなものが染み込んでくるのを感じた。



「もしかして……俺も?」

サイラが、俺のそばに小さな装置を置いた。

黄金色のドーム。緩やかな曲線を描く縁。そして頂上には、淡く光る紫色の結晶。

「これは魔力を感知する道具よ。ここに手を置いて」

隠しきれない興奮とともに、その結晶に手を置いた。

……。

待った。

一秒。

二秒。

……。

結晶は、一度も光らなかった。



何も。

きらめきひとつすら。

「き、期待してる結果があるんだけど……」

まだ残っていた興奮の勢いで、そう言った。

「結果は? もし本当に二度目の覚醒だったら、俺の新しいランクは?」

サイラが、結晶を見つめる。

そして、俺を見た。

その瞳の中には、まだ理解できない何かがあった。

「ごめんなさいね」

彼女は静かに言った。

「あなたのことを、少し買いかぶっていたみたい」



「……何があったんだ?」

胃の奥に、冷たいものが這い上がってくるのを感じながら、そう尋ねた。

「結晶は、一度も光らなかった。つまり、あなたには力の欠片すら残っていない。あなたの力は……ほぼ空っぽよ」

「……待てよ」

言葉が、つっかえる。



「その道具、何か故障してるんじゃないのか? どうしてそうなるんだよ。あんた、俺に二度目の覚醒が起きたかもって言っただろ!」

「そう起きたと思っていたわ」

彼女は、あっさりと答えた。同情の色など、ほとんど感じられない。

「でも、そうではなかったみたいね」

彼女は、装置のボタンを押した。

淡い光線が放たれ、俺の顔全体をスキャンする。



しばらくして、装置の側面に小さな穴が開いた。

そこから、一枚のカードが出てくる。

俺のハンター身分証だった。

サイラは、それを俺に手渡した。

「お大事にね。それじゃあ」

そして、一度も振り返ることなく、部屋を出て行った。

……。



俺は、枕に頭を沈めた。

手の中のカードを見つめる。

写真には——黒い髪、黒い両目。何の特徴もない、平凡な表情。

名前:黒崎ミナト。

ランク:E。

職業:荷物持ち。

……。

「に、荷物持ちだと!?」

ベッドの上で、勢いよく身を起こした。

「俺が……ハンターたちの荷物持ちだって!?」

怒りに任せて、カードをベッドに叩きつけた。

「期待した俺が……馬鹿みたいじゃないか」

再び枕に頭を沈める。重いため息が漏れた。

「これがいつもの俺の運か。まったく新しい世界に来てもなお、俺はずっと透明人間のままらしい」



それにしても……。

サイラは、これを奇妙な状況だとすら思わなかったのか?

六回も刺されて死んだ男が、ゲートを通り抜けて、生存者たちの中に突然現れ——それなのに、まったく力を持っていないという結果?

少しも気にした様子がなかった。

まるで、この世界ではごく当たり前のことだとでもいうように。



突然——。

頭の真上に、黒い画面が現れた。

素早く顔を上げる。

「……これが見えてるのは、俺だけなのか?」

触れようとした。

だが、手はすり抜けるだけだった。まるでホログラムの画面のように。

「触れられないのか?」

そこには、こう書かれていた。

『通知』

未読メッセージがあります。

……。



思い出した。

首を斬られた後、あのゲートに投げ込まれたとき——似たような画面が現れた。

あれが、俺をこの命に呼び戻したのか?

まるで、ゲームのようだ。

ゲームをプレイしているとき、時々ゲーム内で未読メッセージが届くことがあったのを思い出す。

その読み方は、いつも単純だった。

「メッセージボックスを開く」

特に何も期待せず、声に出してそう言ってみた。

……。



目の前の画面が開き、いくつもの小さな画面に分かれて、俺を四方から取り囲んだ。

黒く光る文字列。無機質な枠。細い線が、まるで生きているかのように動いている。

数分間、俺はそれを読み続けた。

「これは、プレイヤーの成長を助けるために設計されたシステムです。プレイヤーがシステムの指示に従わなかった場合、罰則が科される可能性があります」



「……何も分からない。マジで複雑すぎるだろ」

隣に現れた別の画面に目をやる。

『通知』

デイリークエスト:力の増強に努めよ。

「……確認、でいいのか?」

そう口にした瞬間、新しいリストが現れた。

『クエスト情報』

【デイリークエスト:筋力トレーニングが到着しました】

目標:

腕立て伏せ 〔0/100〕

腹筋 〔0/100〕

スクワット 〔0/100〕

長距離走 〔0/10km〕

「腕立てに、腹筋に、スクワット……それから長距離走?」

呆然と、そのリストを見つめる。

「これを全部達成しないと……罰則を受けるってことか?」



「一体何なんだよ、これは」

再びベッドに横たわり、額を手で押さえた。

「冗談にも限度があるだろ」

「病院に入院してる身で、こんなことをやる体力、一体どこから捻り出せって言うんだよ」

「どうなってるんだ、これは、本当に……」

答えは、見つからなかった。



ただ、目の前に浮かぶ画面たちが、静かに、冷たく漂っているだけだった。

まぶたが、重くなっていく。

眠りに落ちる直前、画面の隅に、最後に何かが見えた。

カウントダウン。

残り3時間。

罰則発動まで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。