アーク視点
(くそっ……何故、奴は声をかけてこないんだ!)
アークこと、主人公の俺は焦っていた。
このアガレスト学園というゲームに転生したと気づいたのは五歳の時。
やり込んだ大好きなゲームで、ハーレムルートまで攻略したほどだ。
(それに気づいてから、この学園にするまでシミュレーションを死ぬほどしたのに……)
出だしは良かった。
孤児の俺を拾ってくれた両親の元、魔法や剣の修行をしたり。
ルートに沿るために力をつけてきた。
(そして、最初のイベントである王女救出イベントをこなしたのに)
この国の第一王子の妹、ラーラ-フレイヤ。
その王女が乗った馬車が襲われるのが、このゲームの始まりだ。
そのお礼として、この学園に入る事を勧められる。
そしてラーラ王女を含む女性達を攻略しつつ、魔王となるリオンを倒すゲームだ。
(それなのにどうして? 何故、《《奴の行動が違う?》》)
まずは出だしから躓いた。
この学園の最初のイベント、それはいずれ聖女となるカレンを助けるイベントだ。
本来なら、あの場面ではリオンは登場しない。
奴は馬車に乗ったまま校内に入り、それを眺めて通り過ぎる。
そこで主人公である俺が助けに入り、そこでカレンとのフラグを立てるのだ。
(なのに、どうして奴が助けに入ったんだろう?)
おかげで出鼻をくじかれてしまった。
助けに行こうとしたら、いきなりリオンが現れたから。
しかも、めちゃくちゃカッコよく……悔しい!
(何だあれ!? めちゃくちゃかっこいいじゃんか!)
助けたのに礼も求めずに、颯爽と去って行く。
クールで、あれはあれで良い。
俺も、あんな風にしたかった。
(……って、何を敵を褒めているんだ)
それは置いておいて、次のイベントもなかった。
庶民である俺が遅刻ギリギリで入り、そこをリオンに目をつけられるのだ。
『貴様、平民の分際で俺を待たせるとは何事だ』と。
(そうだ、それが主人公と悪役であるリオンの初対面のイベントだったはず)
なのに、リオンは何も言わず静かにしていた。
あそこで俺にいちゃもんをつけて印象を更に悪くし、隠れヒロインでもあるセシリアが仲裁に入る。
それによって、アークとセシリアのフラグも立つというのに。
(そこからセシリアと対立しつつも親しくなって、最後にはリオンを見限るんだ)
この最初のイベントを逃したら、挽回は難しいのだろうか?
……いや、まだ諦めるのは早い。
リオンの行動が違う以上、イベント進行にも変化があると見て良い。
「よし、まだまだこれからだ」
「あのぅ……大丈夫ですか?」
「あ、ああ、大丈夫さ」
「なら良いですけど……」
隣に座るカレンが、心配そうに覗き込んでくる。
そうだ、この子は野暮ったいけどゲーム一のおっぱいの持ち主だ。
アークと仲良くなるにつれて垢抜けていき、いずれ聖女の力に目覚めるのだ。
(でも、やっぱり隠しキャラは魅力的だよなぁ。セシリアはツンデレで可愛いし)
カレンは寮生活で機会はあるし、チョロインだからどうにかなりそう。
ただセシリアは中々に厳しいかも。
でも俺は主人公な訳だし、話しかければフラグが立っていくはず。
そして昼休みのタイミングで、セシリアに話しかける。
しかし、リオンは何処かに行ってしまった。
これを機に喧嘩をふっかけてこないかと思ったんだけど。
まあ、邪魔をされないからよしとするか。
「何かしら?」
「えっと、初めまして、アークといいます」
「初めまして、セシリア-ブリギッドよ」
うわー……近くで見るとめちゃくちゃ綺麗だ。
紅髪は艶があって、顔にも気品が溢れてる。
うん、これは是非とも攻略しないと。
もう一人難易度の高い人がいるから、今のうちにこっちの好感度を上げよう。
「それで、何の用かしら?」
「その、僕とお昼ご飯でもどうでしょうか?」
「私が貴方と? ……悪いけど、男性とのお食事にはお父様の許可が必要だわ」
……しまったァァァァ!? いきなりすぎたか!?
でも、こちらから話しかければ主人公補正がかかるはず。
そして、俺がめげずに話しかけようとすると……。
「あっ、リオン……悪いけど、私は行くわね」
「ちょっ……」
引き止めるも、セシリアは俺を通り過ぎてリオンの元に向かう。
そこにはカレンとセシリアを侍らせた、憎っくきリオンの姿が。
——どうしてこうなったァァァァ!?




