セリーヌ先生の個別授業?
その日の放課後、俺は一人で行動していた。
二人は予定があるし、それを邪魔したら風評被害を食らってしまう。
かといって二人に伝えたら部活に出るというかもしれないので、伝えることはせずにまずは職員室に入る。
「あれ? リオン君? 今日は部活の日じゃないよ?」
「すみません、セリーヌ先生。実は、今日も部室を使いたくて」
「うーん、一応決まりとして最初に決めた日以外はダメなんだけど」
「そこをなんとかお願いします!」
俺は先生の手を握り、真剣な表情で見つめる。
俺は一刻も早く、アイスクリームを作りたいのだ。
すると願いが通じたのか……セリーヌ先生が頷く。
「し、仕方ですねー。それなら、先生が特別に付き合ってあげます」
「なんと……お忙しいところ申し訳ない。ですが、鍵さえ貸して頂ければ……」
「いえ、ここはきちんとしないと……あれ、誰もいない部屋で二人きり……?」
なるほど……セリーヌ先生は軽い性格だが、根は真面目という感じだったか。
アークの奴の、そういやセリーヌ先生には何もアクションを起こしていないのか?
……まあ、俺が考えることではないか。
「わかりました。それでは、お願いします」
「コホン……では、行きましょう」
そうして先生を連れて部室に入る。
俺は早速、倉庫の中から1本だけ牛乳ボトルを取り出す。
大量に持っているのがバレるのは困るので、残りは自室の金庫に入れてある。
「リオン君、それ牛乳かなー?」
「はい、そうです。先生……今から起きることを秘密にできますか?」
「いいけど……な、何をするの? ダメよ、私と貴方は生徒なのに」
何やらセリーヌ先生がもじもじしているが、許可が出たので作業を始めることにした。
まずは鍋に牛乳と砂糖を入れて中火にかける。
それを木ベラで時々混ぜていく。
「……あれ? 何をしているのかな?」
「見てなかったのですか? なるほど、私は何も見ていませんという……流石はセリーヌ先生だ」
「よくわからないんだけど……褒められてるのかな?」
「ええ、もちろんですとも。では、安心して作業します」
どうやら秘密を守るというより、見なかったことにしてくれるようだ。
仕入れが確定していないので、この商品はまだ秘密にしておきたい。
湯気が出てきたら弱火にして、木ベラで混ぜながら十五分ほど煮詰めていく。
この時に沸騰させたり、煮詰めすぎると失敗だ。
「それで、これは何を作っているのかな?」
「アイスクリームというスイーツですね。まあ、その試作品というか」
「リオン君がしたいって言ってたやつですねー。あっ、甘くて良い香りがしてきた」
「ここからが見極めが難しいのですよ。牛乳が沸騰すると塩分が出てしまうので」
「そういう知識は何処から得たのかな? 私、知らないんだけどなー」
不味いな……セリーヌ先生は宮廷魔導師なこともあり博識な方。
セシリアやカレンのような誤魔化しは効かないか。
俺は覚悟を決め、セリーヌ先生に顔を近づける。
「ひゃっ!?」
「セリーヌ先生、これは俺の秘密に関わること。どうしても知りたいなら……」
「わ、わかりましたからー!」
セリーヌ先生は後ずさり、口をパクパクさせている。
ふむ、どうやらわかってくれたらしい。
俺としても強硬な手段は取りたくないので助かる。
そうこうしている間に、牛乳がいい感じになった。
「これをバットに移して、氷水を貼った容器につけると」
「これは何をしてるのかな?」
「粗熱を取っています。これ以上火が入ると、味が落ちてしまうので。あとは、これを氷で凍らせれば完成ですね」
本当は卵があったり、他にも行うべき工程があるが、今回はお試しなので良しとしよう。
すると、セリーヌ先生が頬を膨らませる。
年甲斐なくと思わなくないが、めちゃくちゃ似合ってはいた。
人によっては死人が出るだろう。
「へぇー、勉強もこれくらい熱心なら先生は嬉しいのだけれど」
「くっ……それについてはすみません」
「アーク君みたいに熱心なのも困りますけどねー」
「……何かしたので?」
「うんと……勉強以外の質問が多くてですねー。私の趣味とか聞いてきたり」
なるほど、しっかりと動いていたわけか。
しかし、上手くいってない感じか。
個人的には、まずは一人一人攻略すべきな気もするが。
「趣味ですか……」
「あれれ? 気になっちゃう感じですかねー?」
「いえ、特には」
「うぅー……こうなったら今から先生が特別授業をします!」
「なんでそうなるんです?」
「とにかくです!」
「……はぁ」
まあ、時間はあるし良いか。
今後のためにも、セリーヌ先生の機嫌は取っておかないと。
俺は大人しく先生の授業を受けるのだった。




