食べ物の恨みは恐ろしい
退屈な授業になるかと思ったが、思ったより身になる。
流石は宮廷魔術師のセリーヌ先生だ。
今は、風魔法の応用や俺の氷魔法について話している。
「風魔法は便利で、使い方よっては音を拾って索敵などにも使えます。逆を言えば、音もなく忍び寄ることも」
「ああ、うちのメイドがそうですね。おかげで、俺は気を休めることができます」
アンナは風魔法の使い手で、攻撃系は下手だがそれ以外は上手い。
それもあり、暗殺者に適していたのだろう。
今では、俺を驚かすために使っているが……あれ? 休まってなくね?
「流石は王族です、良い護衛を抱えていますねー。それと、リオン君の氷魔法ですが……水魔法では使えないんです」
「ええ、そうみたいですね。逆に、俺も水魔法は使えません」
「その辺りは不思議ですよねー。一応、水が凍ったのが氷ということはわかってるのに。まあ、だからこそ貴重と言われているんですけど」
「その辺りの考えはお任せします」
理由はともかく、俺は氷魔法を使えれば良い。
それよりも俺には気になることがある。
色々と調べたところ、俺の目的の物が近く手に入る可能性があるのだ。
「先生、授業もいいのですが……退屈なんですよね」
「だ、ダメですよ? いくら二人きりだからって……」
「なんの話です? 俺は郊外授業はいつなのかと」
「そ、そうでしたか! えっと……来週にオリエンテーションがありますね。丁度、一週間後ですかねー」
「なるほど……場所は何処ですか?」
「北にある森ですね。あそこは初心者の森と言われ、奥にさえ行かなければ比較的弱い魔物や魔獣しかいないので」
やはりか……あそこには俺の欲しいものがある。
どう考えても何かしらのイベントがあるだろうから、俺はそれと無関係でいたい。
そうなると、別行動を取るのが一番良いだろう。
「それは楽しみですね。座ってばかりでは肩がこりますので」
「もう、先生と違ってまだ若いんですから……はぅ」
「自分で言ってダメージを受けないでください。大丈夫ですよ、先生はお若いですから」
「へっ? ……リオン君くらいの歳の人から見ても?」
「ええ、もちろんですよ」
むしろ、人気があると言っても良い。
十代の男子にとって、年上の女性は魅力的に移るものだ。
まあ、セリーヌ先生の場合は少し意味合いが違うが。
ともかく、アークにとっても攻略対象なので歳は関係ない。
「そ、そうなんですねー。そっかー、関係ないのかー」
「なんで棒読みに?」
「な、何でもありません! ささっ、授業の続きをします!」
そうして再び授業を受け、あっという間に時間が過ぎる。
そろそろ良いかと思い、アイスクリームの状態を確認すると……。
「よし、出来てますね」
「わぁ……白い湯気が出てる。それに、真っ白で綺麗ねー」
「ふふふ、そうでしょう? では、食べてみますか?」
「い、良いのかな? それじゃ、遠慮なく……」
「ええ、もちろん」
秘密を共有するには賄賂が必要である。
これを食べれば、セリーヌ先生もスイーツにメロメロになるはず。
引き続き顧問でいてもらうためにも。
その時、俺は何処からか視線を感じる。
「……これは殺気?」
「リオン君! 何かいるわ!」
「流石はセリーヌ先生だ。危ないので、先生は俺の後ろに」
「私は先生! 生徒に守られるわけにはいかないです!」
「……良き先生ですな」
「て、照れちゃうな〜。というか、王族を守るのは当たり前です」
俺が前に出ようとすると、逆に先生が前に出てきた。
そして襲撃に備えていると、カーテンの裏から見知った人が現れた。
俺のメイドであるアンナだ……だが、下を向いて何やら様子がおかしい。
「なんだお前か、びっくりさせるなよ」
「リオン君の知り合い? というか、何処から? そもそも、いつから?」
「まあ、こいつは特殊なんで。アンナ、セリーヌ先生は敵じゃないから……なんで短剣を取り出す?」
「ご、御主人様の嘘つき〜! 次は私に一番に食べさせるって言ったじゃないですか〜!」
「ギヤァァァァァ!? わ、悪かったァァァァ!」
「許しませんよぉ〜!」
俺は短剣を振り回すアンナから逃げ出す!
そうだ! そういや約束したんだった!
食い物の恨みは恐ろしいのだ……どうやら、自ら破滅フラグを立ててしまったらしい。




