尋問?
昨日の大盛況から翌日の夜、俺は自室にて考えていた。
成功はしたが、まだまだ足りない。
スイーツ布教のためにも、俺の破滅回避のためにも。
「さて、次の一手を考えなくてはいけない」
「御主人……むぅ」
「ええい、むくれるな。昨日は悪かったと言ったろうに」
昨日の大盛況から、アンナが珍しく怒っていた。
理由は至極簡単で、アンナもスイーツを気に入ってしまったらしい。
それを食べられてなかったことが不満だったと。
「ですが、お二人は先に食べてました。私は御主人様の一番の忠臣なのに」
「……それはそうだな。わかった、次の新作は一番に食べさせよう」
「ほんとですか!? 約束ですよ! フンフーフン……」
そう言い、分かりやすくご機嫌になる。
ゲームでは暗くて黙って従うようなキャラだったが……これも、リオンの行動効果か。
この子には辛い設定があるので、幸せになってもらいたいものだな。
「ああ、約束だ。それより、昨日はお金を取って良かったのか? 一応、アンナの言う通りにしたが」
「はい、当然です。タダより怖いものなどないですから。私だって最初は御主人様に救われた時、何かの罠かと思いましたし。あそこでタダで売ったら、後で見返りに何か要求されると思われるかと」
「ふむ……確かにそうか」
昨日のかき氷は当初、人気取りも含めてタダで出す予定だった。
しかし材料費もタダでは無いので、すぐに先生に許可どりをしたのだ。
そんなに高い値段設定にはしなかったので、幸いにも許可は取れた。
「それに次もタダにしないと不満を覚えてる人もいるかと」
「そうだな、一度値下げると上げた時に不満を言われると言うし。果物をくれた部員に、分け前は渡したのだな?」
「はい、きっちりと。今後も、いつでも言ってくださいと」
「ふむ、彼らとは良好な関係を築きたいものだ」
スイーツ作りにおいて、果物はかなり重要な要素だ。
その時、珍しく扉をノックする音がする。
俺の部屋に来るのはアンナくらいなので、中々に珍しいことであった。
アンナが頷き、扉をあけて対応する……そしてすぐに戻ってくる。
「どうした?」
「それが……国王陛下がお呼びのようです」
「何? 父上が……俺は何かしたか?」
「学校での噂とかの真偽を確かめたいのかもしれません」
「なるほど……よし、行ってくる。では、念のためにアレを持って行くか」
俺はすぐに部屋を出て、使いの騎士の案内の元、記憶を取り戻した時に行った部屋に入る。
部屋の中には父上と宰相殿、それに……王太子であるユーリス兄上がいた。
地味な顔ではあるが、相変わらず俺とは違い柔和な表情で人当たりが良さそう。
実際にユーリス兄上は誰にでも優しく、いつも笑顔でいる人だったか。
リオンはそんな兄上が嫌いだったが、 今の俺はむしろ好印象である。
「これはこれは、皆様お揃いで」
「リオンよ、よく来た。さて、話は何かわかるか?」
「いえ、皆目見当もつきません。俺は品行方正な学生生活を送っておりますから」
「ふむ、噂では聞き及んでいる。しかし、お主に……送り込んだ密偵は全てアンナに退けられた。故に、こちらも確かな情報がなくて困っておる。なので、今日は直接呼んだというわけだ」
(……あの子ってば何してんの!? そんなことしたら疑われるじゃん!)
監視をつけられることに関しては、何とも思わないことはない。
ただ以前のリオンのことを考えたら、当然の処置だろうとも思う。
俺は冷や汗をかくのを堪え、冷静に対処する。
「それは失礼しました。ですが、アンナは俺を思ってした行動なのでお許しください」
「あ、謝った……あのリオンが」
「国王陛下、落ち着いてくださいませ」
「う、うむ……して、何が目的なのだ? 平民の女子生徒に近づいたり、セシリア嬢を誘って何か怪しいことをしているとか。後は平民の男子を病院送りにしたと聞いたぞ」
そう言い、父上は訝しげな視線を向けてくる。
これが悪役の影響なのか、俺の日頃の行いの所為かわからないが……もしくは、ただ息子を心配している親の視線とかな……まさかね。
どちらにしろ、俺は俺の道を真っ直ぐに歩んでいくだけだ。
「そのどれもが間違っておりません。ただ、俺は自分が間違ったことはしてないと誓います」
「ほう? それは何に誓うのだ?」
「それは——スイーツに誓って」
「「「はっ?」」」
その瞬間、三人が全く同じ顔をした。
さながら『こいつ何言っての?』といった感じに。
全く、失礼な話だ。
すると、それまで黙っていた兄上が笑い出す。
「あははっ! リオンってば面白いや! ねえ、どういう心境の変化なのかな?」
「別にどうもこうもないです。ただ、自分のやりたいことを見つけたので」
「そっか、そっか……それがスイーツ?」
「はい、そうです。まあ、見せた方が早いですか」
俺が動くとゼノス殿が警戒するが、父上が手で制する。
俺は使っていない食器の上にふわふわの氷を入れ、そこに持っていたアレ……イチゴソースが入った瓶を注ぐ。
これにて、かき氷の完成だ。
「こちらをどうぞ」
「陛下、ここは私が」
「いや、目の前でやったのだ……私が食べよう」
そう言い、父上がスプーンですくって口に含む。
その瞬間、かっと目が見開く。
「こ、これは……」
「陛下!? リオン殿下……」
「待てい! これは……美味い。何だ、このふわふわの食感は……そして、甘酸っぱいソースとよく合う」
「くくく……それこそがスイーツです。ですが、まだまだ未完成といっていい」
「これで未完成……これが、お主のやりたいことか?」
「そうです、父上。それでは、俺はやることがあるので失礼します」
マントを翻し、颯爽と部屋を出ていく。
そうだ、俺に立ち止まって暇などない。
破滅ルート回避のため、次の行動に移さなくては。




