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主人公に断罪される悪役に転生したけど、関わらずにのんびり過ごしたい  作者: おとら@9シリーズ商業化


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作戦成功

カレンとセシリアは、ひたすらソース作りをしている。


俺はその横で、新しいものにチャレンジすることにした。


同じ味では芸がないし、種類は二つはあった方が見栄えも良いだろう。


鍋に水と砂糖を入れて弱火で煮詰めていく。


すると気になったのか、隣で作業をしているセシリアが覗き込んできた。


「リオンは何をしてるの?」


「これはな、新しいソースを作っている。バリエーションを増やさないと、すぐに飽きてしまうからな」


「それはそうね。でも、そんなに砂糖を使って大丈夫なの? 私たちが食べるくらいなら良いけど、生徒達に渡すってなったら大変よ?」


ファンタジー世界あるあるかもしれないが、この世界でも砂糖は貴重だ。

全く出回らないということはないが、無限にあるわけではないし値段も高い。

スイーツ作りにおいて砂糖はなくてはならない存在……こちらも対策を考えねば。


「そこだな……どうしたら良いと思う? この辺りは、セシリアの知恵を借りたい」


「そ、そう? 仕方ないわね……他国から輸入するか、自分で用意するかしら?」


「やはり、そうなってくるか。しかし、輸入はコストが高いな。そうなると、自分で育てる……手間と時間がかかる」


「そうね……蜂蜜とか取れたらいいんのだけれど」


「それだ……セシリア! 良くやった!」


その手があった!

砂糖がなければ、蜂蜜を使えばいい!

しかも砂糖より健康に良いから糖尿病にもなりにくい!


「別に大したことじゃないわよ。でも、蜂蜜こそ難しいわ。魔物や魔獣がいる森へといかないと取れないもの」


「それはそうだが……俺に名案がある。とにかく、今はこれを成功させよう」


蜂蜜に関しては後回しにして、作業を続ける。

それが終わったら粗熱をとり、《《カットしたメロン》》と混ぜ合わせる。

どろっとしてきたら一度冷やして完成だ。


「よし、これで準備完了だ。やはり、イチゴがあるならメロンもなくてはな」


「どういうこと? 別に共通点とか無いと思うけれど」


「そういうものなのだ」


多分、これは俺にしかわからない感覚かもなぁ……アークもいたか。

ソースができた頃、アンナが戻ってくる。

なのでソースを入れた器を持って、部活生達がいるグラウンドに向かう。

そこには屋台が置いてあり、アンナに手配していたものだ。


「アンナ、宣伝はばっちりか?」


「はい、ただ御主人様の悪評が酷いので逆効果かもしれません」


「……そういやそうだったな。道理で、人が並んでいないわけだ」


夕方なので、まだ部活生達がグラウンドに沢山残っている。

しかし、屋台回りには人っ子一人見当たらない。


「これは、デモストレーションが必要になるか」


「どういうことよ? 普通に売ってはダメってこと?」


「ああ、そうだ。味を知る前に、まずは人を呼べるモノを用意せねば」


「でもでも、わたし友達いませんし……」


俺は当然のこと、セシリアも友達は少ないだろう。

しまった、ぼっちしかいない部活だった。

これは友達が多い者を引き込む必要があるかもしれない。


「大丈夫だ、俺に良い案がある。作戦変更だ……アンナ、お前の出番だ」


「御意、何なりとお申し付けください」


「では命ずる——カレンとセシリアを脱がせろ」


「な、何言ってんのよ!?」


「ふぇ!?」


「承知致しました。お二人共、覚悟してくださいませ」


「ちょっ!? どこ触って……」


「はぇ〜!?」


何処にそんな力があるのか、アンナが二人を担いで消えていった。

そして待つこと十分適度……頬を赤らめた二人がやってくる。

タイツと生足が眩しいその姿は、アンナと同じ黒のメイド姿だった。

ただスカート丈は短く、二人の頭にはカチューシャまで付いている。


「うぅー……なんで私がこんな目に」


「あ、足がスースーしますぅ」


「ふむ、二人共よく似合っているぞ。さあ、その姿で宣伝だ」


「……あんたが、ただ見たかっただけじゃないでしょうね?」


「だ、断じて違うぞ!」


ほんの少し、ほんのすこーし……そう思わなかったと言ったら嘘になる。

何せ、二人共めちゃくちゃ似合うのは目に見えていた。

特に谷間のあたりが素晴らしい……俺とて、健全な男子なのである。


「さあ、お二人共お願いしますね」


「仕方ないわね、やるからには本気よ」


「が、頑張ります!」


そうして三人によるビラ配りが始まる。

すると、唯一の希望であるセシリアに人が食いつく。

セシリアは友達こそいないが、その男前な性格から女子生徒には人気なのだ。


「あっ、セシリア様! メイド姿可愛いです!」


「ほんとだ! 素敵! でも、今日は部活ないのにどうしたのですか?」


「え、えっとね、リオンの手伝いをしているわ。良かったら、食べていかない?」


「くくく……一度食べたら飛ぶぞ?」


「だから、その冷笑をやめなさいってば。というか、言い方……はぁ」


「何をいうか……コホン、とりあえず食べてくれると助かる」


こんなところで言い争いをしてはいけない。

そして二人は俺とセシリアを見比べて……静かに頷く。

きっと、断ったらひどい目に合うとか思ったのだろう。

まあ、俺としては食べてくれるなら問題ない。


「良かったわ。それじゃ、すぐに作るから待ってて。リオン、二人前お願い」


「ふっ、お安い御用だ……氷よ」


「じゃあ、わたしがソースをかけちゃいますね……はい、出来ました」


そうして出来た、二種類のかき氷の器を女子生徒に渡す。

二人の目はキラキラし、そのかき氷を凝視していた。

ふふふ、見たことないだろう。


「わぁ、これひんやりする」


「この白くふわふわしたのが氷なのでしょうか?」


「ええ、冷たくてふわふわしたのが氷よ。さあ、席について食べてちょうだい」


セシリアに促され、二人は用意したテーブル席に座る。

そしてスプーンを使い、恐る恐るかき氷を口に含む。

すると一転し、その表情が歓喜に包まれる。


「うぅ〜! 冷たくて頭がキンキン……あれ……でも美味しいわ! こちらはイチゴのジャムかしら? 甘酸っぱくて癖になるわ」


「本当に冷たくてふわふわで……美味しい。こっちは甘いメロンをかけた感じですか?」


「そっちも美味しそうね……あの」


「「交換しよう?」」


二人の生徒が顔を見合わせ、同じ言葉を口にした。

そしてクスクスと微笑み合う。

それを見たからか次々と人が集まってきた。


「ねえ、あれ何かな?」


「なんだろ? ちょっと行ってみるか?」


「気になるよね」


最初は躊躇っていたが、女子生徒が食べる姿に耐えきれず徐々に人がやってくる。

食べた者が目を見開き、それぞれシェアなどをして食べ進めていく。


「どうやら、俺の狙い通りにいったようだな」


「どういう意味よ?」


「人とは自分が美味しいと思った物を知ってほしいという欲がある。そして他人が食べている物が気になる」


「そういうこと……それを広めるし、一種類だけじゃ満足出来ないからリピーターになるわけね」


「そういうことだ。そして抜け出せなくなる……くくく、完璧だ」


いずれは、その味覚から逃れられなくなるのだ。


その時こそ、スイーツが世界を変えてくれるはず。


そして、俺を破滅ルートからも救ってくれるというわけだ。




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