前途多難
休日が明けて、学校が始まる。
改めて覚悟を決めた俺は、馬車に乗って移動し校門に降り立つ。
すると、あちこちから視線を感じた。
「リオン殿下だ……」
「なんでも、平民を病院送りにしたとか」
「やっぱり、怖い方なのかな……」
(ふむ、概ね予想通りか)
あの後聞いたが、アークは俺の氷魔法で全身傷だらけだったとか。
なので流れは別として、実際にアークは病院送りだから間違いではない。
それでもやはり、極端に俺が悪い方に歪曲されている。
「ふっ……今に見てるが良い」
「ちょっと、何を朝から凶悪な顔をしているのよ?」
振り返ると、そこには呆れた表情のセシリアがいた。
だがその視線は俺に悪意はなく、いつも通りの対応だった。
現場を見ていたとはいえ、セシリアは俺に対する意識が他の者と違う。
もし俺の予想が当たっているならば……こちらから攻めていった方が良いか。
「失礼な、俺は爽やかな笑顔をだな……」
「嘘でしょ? 世界征服でもするのかと思ったわ。不敵な笑みはともかく、普段は普通に笑えてるから無理しなくて良いわよ」
「そうか……感謝する。それより、セシリアは今日も綺麗だな」
「……はぇ? な、何言ってるのよ!?」
「いや、真紅の髪は今日も艶があり素晴らしい。その強気な瞳も——グヘェ!?」
言葉の途中で、思い切り拳が飛んできたぞ!?
俺でなかったら肩が外れてるね!
痛みを堪えつつ振り向くと、そこには耳まで真っ赤になったセシリアが。
「な、な、何なのよ〜! リオンのバカァァァァ!」
「ま、まてーい!」
こ、これでは、周りに悪印象が……俺は好感度を上げようとしただけなのに。
一体、何を間違ったというのか……どうやら、道は中々に険しいようだ。
その後、教室に入ると何やらざわざわしていた。
これは、また俺の悪口でも始まるのかと思ったが……なるほど、原因はカレンか。
「なあ、あれってカレンか?」
「めちゃくちゃ可愛いじゃんか」
「おい、声かけてみろって」
男子達は目の色を変えて、カレンをじろじろと見ている。
反対に、女子は少し嫌な視線を向けているな。
そんな中、カレンの隣に座るアークが立ち上がった。
「やめないか! カレンが困ってるだろ!」
「ふぇ!? わ、私は別に……」
……カレンはオロオロして、どうしていいのかわからない様子。
というか、アークはアホなのか?
逆に目立ってカレンが困っているではないか。
「カレン、おはよう」
「お、おはようございます!」
「うむ、そちらの方が似合っているな」
「あ、ありがとうございます……えへへ」
カレンがリラックスしたのを確認し、アークに向き合う。
あちこちに包帯を巻き、俺を睨みつけていた。
今となっては理由もわかるので、対処するのも容易い。
ここは下手に出ておこう。
「アークとやら、怪我は平気か?」
「……ええ、お陰様で」
「そいつは良かった。すまない、怪我をさせるつもりはなかったのだ」
「っ……!?」
俺が謝ったことに驚いたのか、アークの表情が固まる。
よし、これで少しは周りにも良い印象を与えただろう。
俺としては、本来は負けるつもりだったからな。
「今後は気をつけよう」
「な、なっ……」
「ではな」
そうしてセシリアと隣である、自分の席に着く。
幸いにして俺に視線が向き、カレンに対する話題は減った。
これでカレンとアーク、そして生徒達の好感度を上げたに違いない。
「くくく、完璧だ」
「何が完璧なのよ? めちゃくちゃ挑発してるじゃない」
「むっ? どういう意味だ?」
「いや、あの言い方と顔じゃ手加減をしてあげた……まあ、いいわ。それより、朝のアレはなんだったのよ?」
「俺は思ったことを言ったまでだ」
「そ、そうなの? ……ふーん」
そう言い、そっぽを向く。
ふーむ、好感度を上げるというのも難しいものだな。
そして午前中の授業を終え、昼休みとなる。
ちなみに休み時間になっては、アークが必死にカレンに話しかけていた。
むしろ、何故最初からいかなかったか謎である。
「さて、どうするか」
「何してるのよ? お昼ご飯いかないの? 私はカレンを誘って行くわ」
「まあ、いいか……ああ、行くとするか」
アークのために別行動をしようと思ったが、そこまでアークに気を使うこともあるまい。
何故なら……アークは今、女性達に囲まれているからだ。
「アーク君、この間は平気だった?」
「あ、ああ、これくらいなんともないさ」
「凄かったよねー」
なるほど、主人公補正というやつか?
いつのまにか、貴族平民問わずに人気者ではないか。
ならば俺は俺で、好きにやらせてもらおう。
食堂で食べながら、俺は二人に相談を持ちかける。
「カレン、セシリア、今日は部活に来れるか?」
「火の日はテニス部もないし、私は平気よ」
「わたしも予定通り平気です!」
「そうか、助かる。では、今日の部活では二人に協力してもらいたいことがあるのだ」
俺が説明をすると、二人が快く了承してくれた。
良かった、これを成すには一人では限界がある。
それでは、俺の破滅フラグ回避作戦その一を始めるとしようか。




