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主人公に断罪される悪役に転生したけど、関わらずにのんびり過ごしたい  作者: おとら@9シリーズ商業化


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違和感

 それからの日々は平穏に過ぎていく。


 アークも絡んでこずに、何やら一人で鍛錬をしているとか……嫌な感じだ。


 そんな中、週末最後のイベントである模擬戦の日になった。


 俺達は学校の外に出て、歩いて鍛錬場に向かう。


「が、学校、広いですね。わたしの村より広いかも」


「そうなの? 確かに、歩いて全部を回ると結構時間はかかりそうね」


「まあ、乗合馬車があるくらいだ」


 二人の言う通り、この学校は広い。

 先生や生徒達が暮らす寮もあり、研究所などの様々な建物がある。

 イメージとしては、某ネズミーランドくらいはありそうだ。


「そういえば、カレンは寮生活なのよね?」


「はい、そうです。部屋が広くて、まだ慣れないですけど」


「そんなに広いのかしら? 確か、普通の部屋だったような」


「あっ……わたし、孤児院出身なので自分の部屋ってなくて」


 その言葉に、セシリアがしまったという表情をした。

 相変わらず、わかりやすい奴だ。


「そこでは、どういったことをしていたのだ?」


「わたしは年長者で、みんなのお姉さんみたいな感じでした」


「そうか。それでは、寂しいのではないか? カレンも、孤児院にいる子達も」


「はい、寂しいです。でも、頑張るって決めたんです」


 そう言い、顔を上げる。

 前髪がかかっているが、僅かに見える目には意志の強さが見えた。

 そして俺は、こっそりセシリアの脇を小突く。


「ひゃ!? な、何するのよ!?」


「お前は顔に出すぎだ。本人が気にしていないなら、俺達が気にする方が失礼だろ」


「あっ……そうよね。カレン、ごめんなさい」


「い、いえ! 謝ることなんてないです! えへへ……普通に接してくれる優しい人達」


 その後、鍛錬場に到着する。

 そこはドーム状になっており、イメージとしては東京ドームに近い。

 観客席があるのは、ここが闘技大会の会場でもあるからだろう。

 真ん中から四方に分かれ、クラスごとに集まるらしい。


「ふむ、四クラス合同か」


「ひ、人がたくさん……」


「きっと最初のオリエンテーションだからだわ。模擬戦の他にもやることあるから、いっぺんにやった方がいいものね」


「そうか、魔法適正もか」


 このゲームには魔物や魔獣という生物がいる。

 故に戦うこと、魔法を使えることは重要だ。

 ちなみに魔法は六属性あり、光、闇、火、水、風、土となっている。

 そしてそのどれにも属さないのが、俺の氷魔法と主人公の《《蒼炎》》魔法だ。


「そういえば、カレンは何の属性なのかしら? お世辞にも、戦いは得意じゃなさそうだし」


「うぅー……確かに運動は苦手です。えっと、光属性って言われました」


 その言葉に、俺とセシリアは顔を見合わせる。

 それも無理もないことで、俺の氷魔法ほどではないが光魔法も中々に珍しい。

 なるほど、それは学園に誘いが来るわけだ。

 しかしカレンは光魔法か……なんだ、この違和感は。


「それは凄いわね。ちなみに、どうしてわかったの?」


「その孤児院の先生が教会出身の方で、少しだけ光魔法を使えたんです。役に立ちたくて教わってみたら……出来ちゃったみたいで」


「使い手がいるといえ、正規の教育以外で発揮するか……類い稀なる才能だな」


「い、いえ! 本当に初歩の初歩しか使えませんから!」


 そこで俺はアークの視線に気づく。

 奴は俺を悔しそうに見つめていた。

 おそらく、こちらにセシリアが来てしまったからだろう。

 それにより、完全にヘイトを買ってしまっている。


「……流石に不味いか」


「何がよ?」


「セシリア、お前はアークと仲良する気はあるか?」


「……何を言ってるの? 平民とか関係なく、公爵令嬢の私が男性と軽々しく仲良くしていいわけないじゃない」


「ふむ、至極ごもっともな意見だ」


 一人娘であるセシリアの相手ということは、公爵家を継ぐ者である。

 なので男性陣も迂闊には近づけないし、セシリア自身が行くことも難しい。

 俺はセシリアを避けないと決めたが、別にアークの邪魔をするつもりはない。

 というわけでアーク……すまんが頑張ってくれ。


「……私といるの嫌なのかな」


「ん? 何か言ったか?」


「なんでもないわよ!」


 そんな会話をしていると、セリーヌ先生がやってくる。

 どうやら、全員集まったらしい。


「はい、皆さん揃いましたねー。それでは、これより魔法と武器の適性を見ていきます。事前に試験があった人は知っていますが、推薦の方もいるので」


「リオン、貴方のことね?」


「そういうセシリアもだろうに」


「ふふ、私の力は知ってるでしょ?」


「そりゃ……痛いほどに」


 何せ、俺を追い詰めるほどの魔法の使い手だ。

 ちなみに俺達は不正というわけではない。

 俺は氷魔法の使い手として、セシリアは土魔法の使い手として名が知られている。

 故に試験を受けることなく、正式な推薦枠という奴だ……コネで入った奴もいるが。


「それでは、ゴーレムに向かって一人ずつ魔法を撃ってもらいます。魔法が得意でない方も、鍛錬次第では向上するので全力でやってくださいね。さて、誰からやりますかねー?」


「はい! 僕がやります!」


 そう言い、アークが真っ直ぐに手を挙げる。

 よしよし、良いところを見せてやれ。

 ちなみにゴーレムとは土魔法で出来た人形のことだ。


「あら、元気がいいですね。それじゃ、アーク君にお願いしようかな」


「任せてください!」


 元気良く返事をし、アークがゴーレムの前に立つ。

 その際に、何故か俺の方を見てくる。

 なので俺は応援の意味を込めて、微笑んで見せた。


「っ……!?」


(なんだ? どうしてそんな顔をする?)


 それに対し、アークはまるで馬鹿にされて怒ったような表情をされた。

 そして拳を握りしめて、マトを見据える。


「リオン、何を不敵に笑ってるのよ」


「なに? ……そんな顔をしていたか?」


「ええ、それはもう。なんだろ……クククみたいな感じかしら」


「……気をつける」


 しまったァァァァ! 応援するつもりが挑発してしまった!

 良く良く考えてみたら、リオンの見た目は冷笑が似合う。

 俺が微笑んだつもりでも、そうは見えない場合があるってことだ。


「はい、いつでも良いですよー。ただし、使うのは初級魔法でお願いしますねー」


「出でよ火の玉——ファイアーボール!」


 轟音が鳴り響き、ゴーレムにヒビが入る。

 破壊力に優れている火属性とはいえ、なかなかの威力だ。

 それに奴はまだ覚醒していない……流石は主人公といったところか。


「へへっ、どうだ!」


「わぁー、これは凄いですね。うんうん、将来が楽しみです。では、次の方どうぞー」


 アークは一瞬だけドヤ顔をし、俺の横を通り過ぎる。

 その後、次々と生徒達が魔法を放っていく。

 やはりアークは優秀らしく、それ以降の生徒は傷をつけることすら難しい。

 そんな中、セシリアはゴーレムに傷をつけた。


「まあ、こんなものね。それにしても、あのアークって子やるわね」


「ふむ、そうだな。あれなら、婿養子にいいのでは?」


「さっきから何なのよ? いい加減殴るわよ?」


 言い終わりと同時に、鋭い右ストレートが飛んできた。

 俺でなかったら見逃しちゃうね。

 はい、これは二度目です。


「……既に殴っているのだが?」


「アンタが変なこと言うからでしょ」


「俺はな、お前の心配を……俺の側にいては」


「だから——私の生き方は私が決めるわ」


 だめだ、めちゃくちゃ意思が硬い。

 こうなると、やはりアーク自身に頑張ってもらうしか。

 すると、カレンが戻ってくる。

 横目で確認していたが、どうやら魔法が発動しなかったらしい。


「うぅ……攻撃は苦手です」


「まあ、向き不向きがあるので仕方あるまい」


「そうね。そもそも、光魔法の本領は回復にあるもの」


「うぅー……頑張ります」


 そして俺の番が来たので、マトの前に立つ。

 とりあえず、ストーリーは分からなくても壊しちゃいけないのはわかる。

 ここは、威力を抑えめに……これくらいか。


「アイスボール」


「おっ、流石はリオン君ですねー。しっかりと傷が付いてます」


「ありがとうございます」


 よし、ひとまず目立ちすぎることはなかった。

 その後、全員が終わったらいよいよ模擬戦の時間である。


「はい、それでは模擬戦を始めますよー。それぞれ二人一組だけになってやります。余らないように上手くやってください」


「はい! 先生!」


「アーク君、なんでしょう?」


「それは、誰を選んでもいいのでしょうか?」


「え、ええ、一応は……」


「では——リオン殿下、僕と戦ってください」


 そう言い、俺に剣を向ける。


 嫌な予感はしていたが……いよいよ来たか。


 さて、どう対応するのが一番だろうな。






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