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主人公に断罪される悪役に転生したけど、関わらずにのんびり過ごしたい  作者: おとら@9シリーズ商業化


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三人目の部員

……うん? 誰かに揺すられてる?


段々と意識が覚醒していき、耳に声が聞こえてくる。


「ねえ、起きてってば。まったく、こんな可愛い女の子放って昼寝するなんてリオンくらいよね」


「わ、わたしは可愛くないですよぉ」


「そうかしら? きちんと整えたら可愛いと思うけど……」


「そ、そうですか? むしろ、リオン様の寝顔が可愛らしいですね」


「そ、そう? 私には憎たらしく見えるけど……まあ、見れないことはないわ」


何やら、好き勝手に言われているな。

確か、姉上も似たようなことを言ってたか。

気まずいので、今起きたふりをして目を開ける。


「ふぁ……何を見ている?」


「べ、別に見てないわ」


「ご、ごめんなさい〜」


「カレン、謝ったら見てることがばれちゃうわ」


「はっ……そ、そうでした」


「ふふ、仕方ないわね」


どうやら、俺の寝ている間にまた仲良くなったようだ。

しかしエミリアと仲のいい女子など、原作にはいなかったはず。

この辺りはどうなっているのだろうか。


「ちょっと、いつまで寝ぼけてるのよ?」


「リオン様、もう一時間も寝てたんですよ?」


「なに? それはすまなかったな……よし、もう出来ているだろう」


俺は氷棺の中に収められた容器を取り出す。

それを少し大きい容器で蓋をして、思い切りひっくり返す。

そして、蓋をあけると……そこにはカラメルソースが乗った黄金に輝くものが。

そう、俺が作ったのは特殊なプリンだ。


「わぁ……綺麗ですぅ」


「綺麗ね……何かしら? 茶番蒸しみたいだけど」


「まあ、作り方は似ているかもな。とりあえず、切り分けるとしよう」


身を崩さぬように包丁を入れ、お皿に盛っていく。

ぷるんと身が揺れ、俺は成功を確信する。

それをテーブルに並べ、俺は二人の対面に座る。


「さあ、食べていいぞ」


「ありがとうございます! わぁ……フニフニしてますね」


「あ、ありがとう……本当ね、でもどっしり感もあるわ」


「ほら、まずは食べてくれ」


俺に急かされ、二人が同時に口に含む。

すると、目が見開かれる。


「おいし……何よこれ、甘くて濃厚で……上に乗ってる苦味が、甘さを際立たせているわ」


「お、美味しい……口当たりが滑らかで、すっと入りました。こんなの、食べたことないです」


「どれ、俺の食べてみるか……ごくん……うまっ」


 口に含んだ瞬間、濃厚な卵の味がダイレクトに伝わってきた。

 牛乳を使ってないからこそ、この卵の味が伝わる。

 カラメルソースの苦味と砂糖の甘みが合わさり、複雑な味を醸し出している。


「くくく……たまらん」


「なんて邪悪な顔をしているのよ、まるで悪の親玉だわ」


「放っておけ、顔がアレなのは今更だ。そもそも、人のこと言えんだろ?」


「悪かったわね、愛想がない顔で。そういえば、料理名はあるのかしら?」


「ああ、トシーノ・デ・シエロって名前だ」


「やっぱり、初めて聞く名前ね」


「昔の文献では、修道院にいる女性の方々が作ったんだとか。別名、天の豚脂とも言われるらしい」


 確かスペインで作られてる代表的なお菓子だったはず。

 これの特徴と良いところは、牛乳を使わないことだ。

 通称、牛乳を使わないプリンとも呼ばれているとか。


「確かに脂みたいにプルプルしてたわ。それにしても、相変わらず変な知識だけはあるのね」


「だけとか言うなし。ほら、食わないなら下げるぞ」


「た、食べるわよ……んっ〜!」


「これ、止まりません……!」


「そうだろ、そうだろ……美味いな」


その後、俺たちは夢中で食べ進める。

気がつくと、八人前程度あったプリンは無くなっていた。

ちなみに振り分けは俺が二、二人が三である。


「全部、食べてしまったか」


「わ、私としたことが……お代わりなんてはしたないわ」


「でもでも、美味しかったから仕方ないと思います!」


「そうよね! 私達は悪くないわ!」


「ですです! 美味しいのがいけません!」


くくく、順調にスイーツにハマっているな。

これで、もう逃れることは出来まい。

この調子で信者を増やしていき、スイーツの良さを広げていこう。


「しかし食べ過ぎには注意だ。見ての通り、砂糖を大量に使っているからな」


「うっ……確かに。レディとして、気をつけないと」


「わ、わたし、帰りは遠回りして帰ります」


と言いつつ、俺も気をつけないと。

なにせ、前世ではそれが原因で倒れているのだから。

……ランニングでも日課にするか。


「さて、では洗い物をして帰るとするか」


「あっ、それくらいならわたしがやります!」


「そうか。では、任せよう」


カレンが嬉しそうに微笑み、洗い場に皿を持っていく。

すると、セシリアが俺の服の端を掴む。

振り返ると、何やらもじもじしていた。


「どうした? もうお代わりはないぞ?」


「そ、そんなに食い意地は張ってないわ……確かに美味しかったけど」


「うむ、セシリアに言われるなら自信がつくな」


なにせ、相手は公爵令嬢だ。

この世界の美味いものを食べつくしていると言っていい。

俺は第二王子ということもあり、暖かく美味い飯など数えるくらいだ。

……そうか、今なら何でも食べられるのか。


「悔しいけど食べたことないわ。それで、これがアンタのやりたいことなの?」


「ああ、そうだ。全てのしがらみを捨て、俺はスイーツ男子になる」


「ふーん……それじゃ、私が手伝ってあげるわ。幸い、テニスの部活とは一日しか被ってないから」


「何? いや、それは……」


「私がいた方が便利よ? お父様にだって言い訳できるもの。それに、三人いた方が周りからも特別扱いに見えないわ。何より、私は……リオンの味方でいたい」


その言葉が、俺ではなくリオンに突き刺さる。

この子は俺と離れた方が良いとわかっているのに、それを俺のエゴで決めてしまって良いのかと。

ここはゲームの世界かもしれないが、そこに生きてる人達はゲームのキャラではない。

ならば、それを思い通りにしようとするなど傲慢か。


「セシリア……ふっ、そんなにスイーツが気にいったか?」


「そ、そうね! アレが食べられるなら色々なことに目を瞑るわ!」


「ならば、交渉は成立だ……よろしく頼む」


「よ、よろしくね……えへへ」


握手を交わすと、セシリアがフニャっと笑う。


不覚にも、それを可愛いと思ってしまうのだった。

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