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主人公に断罪される悪役に転生したけど、関わらずにのんびり過ごしたい  作者: おとら@9シリーズ商業化


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搾乳は命懸け

 その後、王都から出て近くにある放牧地に到着する。


 ちなみに、俺のお腹は痛いです。


 でもリオンの矜持として、情けない振る舞いはできない。


 我ながら、こいつ(リオン)めんどくさい性格してるわ。


「ここが放牧地か……あのオーガバッファローがいる」


「はい、そうです。その異名は、オーガを突進で殺せるほどの力があるからとか」


「それは、街中になどおけないだろうな」


「暴れだしたら、壁などを簡単に破壊出来ますからね」


 そう、今回の目的は牛乳を手に入れること。

 しかし牛乳はオーガバッファローからしか取れないから難易度は高い。

 まずは責任者のゴルバに挨拶に行き、説明を受けることに。

 ちなみにゴリマッチョのおっさんである……それくらいでないと務まらないということだ。


「オーガバッファローは近づくと怒り狂って手がつけられません」


「ふむ、ではどうやって乳を手に入れているのだ?」


「草木を食べている時や、お腹いっぱいの時は唯一大人しくなるのです。その間に、我々は隙をついて搾乳をします」


「なるほど……出回らないわけだ」


 それだと搾乳自体も時間が取れないので量がない。

 取れたとしても予約が優先で、なかなか手には入らない。

 それでどんどん値上がっていくというわけだ。


「やはり危険ですぜ? リオン殿下の頼みなら私が……」


「いや、それには及ばん。その度にお主を頼っていてはいけない。とりあえず、自力でやってみるさ」


「わかりました……では、お気をつけて。そしてなるべく殺さないで頂きたい。彼らは仲間意識が強いので。いざとなれば、こちらの扉に飛び込んでください。私はここで待機していますので」


「情報と助言に感謝する。まあ、最悪の場合は逃げるとするさ」


「ちなみにですが……ここで何が起こったとしても責任は負えません。冒険者の方と同じように、誓約書にサインして頂いても良いでしょうか?」


「む、無論だ」


 俺達が署名をすると、まるでジェラシックパークの恐竜がいそうなゲートが開く。

 あちこちにゲートがあり、それによって中の魔獣を出さないようにしているとか。

 中も区分されていて、それぞれに違う魔獣もいるとか。

 合っているかわからないが、サファリパークのような感じか。


「よし、いくぞ」


「大丈夫です? 震えてません?」


「ふ、震えてなどない! さあいくぞ!」


「はいはーい」


 どうやら、署名の文字がぶれていたことはバレていたらしい。

 だって怖いじゃんか! なんだよ入るのに署名がいるって!

 いや……これもスイーツのためだ。

 ゲートをくぐり中に入ると、そこは草原が広がっていた。


「こうしてみると、外と変わらんな」


「大きな壁で隔てていますけど、中身は自然のままですからね。ただ魔物がいないだけマシかと」


「確かに魔物にも気をつけながら搾乳は無理だな」


 リオンの知識にあるが、放牧がここまで来るのも大変だったらしい。

 なんとか家畜化を目指して、やっとこの程度というわけだ。

 そんな会話をしつつ歩くこと五分程度、すぐにお目当ての魔獣を発見した。

 赤い皮膚に太い二本のツノ、体長二メートルを軽く超える巨体。


「……なんだあれ、バケモンじゃないか」


「冒険者に頼む人が多いわけですね。あんなのに体当たりされたら、身体が粉々になりますよ。いくら、身体強化の魔法をかけたとしても……どうなるやら」


「よし、ここはお前に任せた。俺は後ろで待ってると……何をする?」


 振り返ると、俺の腰にしがみつくアンナが。

 平常心を保っているが、心なしか焦っているように見える。

 殺していいならなんてことないが、今回は逆に殺してはいかんから難しい。


「何を言っているのですか? ここは御主人様にお譲りします」


「貴様、それでもメイドか……!」


「搾乳はメイドの仕事ではありません。そもそも、あれだけの啖呵を切って恥ずかしくないので?」


「ぐぬぬぬっ……腹をくくるか。よし、行ってくる」


「御主人様、骨は拾いますからね」


「それ死んでるからな?」


 軽口を抑え、俺はゆっくりと草を食べている一頭に近づく。

 一瞬だけ目線があったが……すぐに逸らす。

 それを確認し、貸してもらったバケツを持って牛の乳房に触れる。


「よし、そのまま良い子にしてろよ……ん? 少ししか出ないな」


 あれ? これってこんなに難しいのか?

 全然、出てこないが……その時、何か嫌な予感がする。

 前を見ると、オーガバッファローと目があった。

 そのまま時が止まったかのように見つめ合う。


「「………」」


「は、はろー」


「フルァァァ!」


「うひゃー!?」


 我ながら情けない声を上げて尻餅をつく。

 当然、僅かに入っていたミルクも溢れる。


「アァァァ!? 俺の大事なスイーツの元が! 貴様、俺を誰だと……」


「フルル……」


「おいおい、待て……なんで助走を……わかった! 俺が悪かった!」


「フルァ!」


「ヌォォォォ!」


 俺は急いで来た道を戻る。

 すると、前には先に走っているアンナの姿が。

 おかしい、あんなに距離は離れてなかった。


「待てまてーい! なんで先に逃げてるぅぅ!?」


「嫌な予感がしたので!」


「ええい! 主人を置いて逃げるメイドがあるか! 俺のために命をかけるのではないのか!?」


「それはそれこれはこれです!」


 ま、まさか、ここでアンナに裏切られるとは!?

 これも死亡フラグの一環なのか!?


「……ええい! 死んでたまるかアァァァ!」


「フルァ!」


 そして魔力による身体強化で走ること数分、ゲートが見えてくる。

 ゲートの下にはゴルバがいて必死に手を招いていた。

 その中をアンナが滑り込む。


「御主人様! 早く早く!」


「だめだっ! 間に合わない! リオン殿下、あなたのお命の方が大事ですので倒しても構いません!」


「いや、そうはいかない! こいつは大事な魔獣だ!」


 なにせ、俺のスイーツ作りには欠かせない存在。

 そんな魔獣を一頭でも殺すわけにはいかん。


「そ、そこまでして魔獣と我々のことを……」


「よくわからないが、もうゲートを閉めていい!」


「そ、それでは、貴方が……」


「いいから王族として命令だ!」


 その言葉が効いたのか、ゴルバがゲートを閉め始める。

 俺は後ろに迫るオーガバッファローとの距離を確認し、地面に氷魔法を発動させる。

 俺はそこに向かって、勢いよくスライディングをかます!


「ウォォォォォォ!」


「フルルル〜!」


 俺の声とオーガバッファローの声が響き……止む。

 俺は後ろを振り返り、ゲートの内側にいることに安堵する。


「ふぅ……間に合ったか」


「御主人様! 凄いです! 滑りました!」


「ふふ、そうだろそうだろ……俺を置いて逃げたことは忘れんぞ」


「あれれ? おかしいですね」


「まあ、いい……ともかく、失敗だな」


 まさか、牛乳を手に入れるのがこんなに大変だとは。


 というか、命がけじゃないか。


 やれやれ、これは作戦を立てんといかんな。


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