セシリア視点
……もう! なんなの!?
私はよくわからない相手に迫られて困惑していた。
「あ、あの……」
「だから、どうしたというのかしら?私に話があるんでなくて?」
「い、いやーいい天気ですね」
「そうかしら? たった今曇りになって、部活を休憩にしたくらいよ」
校舎一階の玄関にいたら、アークという平民の男の子がやたら話しかけてきた。
私の身分や容姿目的の男の子は沢山いるけど、そのどれとも感じが違う。
声をかける割に全然内容がないし、そもそも慣れてなさそうだわ。
終いには、何が言いたいのかわからない。
「あはは……」
「私は罰したりしないわ。何かあるなら、はっきり言って平気よ」
「そ、それは……あっ!」
「な、なに?」
「しまった……この放課後にイベントがあったはず。確か、中庭でカレンが絡まれて……そこを俺が助けに入るんだ。そしたら仲良くなって一緒に孤児院に行ったり部活をしたり……」
「なにをぶつぶつ言っていますの?」
「すみません! 僕はこれで! また話しましょう!」
一方的に言うだけいい、アークという方は去っていく。
はっきり言って、私以外の貴族だったら大変な目にあってるわ。
ずっと話しかけておいて、なにも理由を言わず去るなんて。
「まあ、正直言って……私も気分はよくありませんけど」
「あら、セシリアさん」
「セリーヌ先生、どうしたのですか? お忙しいのに、放課後に学園にいらっしゃるなんて」
振り返ると、目線の下にセリーヌ先生がいらっしゃった。
彼女は学校の先生であると同時に、我が国に十人しかいない宮廷魔術師の一人だ。
家柄は私の方が上でありますが、例え先生でなくとも敬意を払うべき方ですの。
「んー……実は、リオン君が部活を作りたいって言ってるのよー」
「リオンがですか? ……一体、なんの部活を?」
「なんでもスイーツ部っていうのを作りたいとか。私にもよくわからないけど、そっちの方が色々といいかなーとは」
「それは……そうですね」
リオンは良くも悪くも目立つし、王族なので扱いは難しい。
最悪の場合、私が先輩方に頼み込んでテニス部に勧誘することも考えていた。
そうしないと、リオンはどんどん孤立してしまうと思ったから。
「ふふ、噂通り仲が良いのですねー」
「そ、そんなことありませんわ。ただの幼馴染ですし……」
「あら、そうなんですねー。では、私にもチャンスが……そうしたら、顧問になった方が良いかなぁ」
何やらセリーヌ先生が女性の顔をしているような。
まさか、リオンが何かしたのかしら?
……なんでしょう、このモヤモヤ感は。
「リオンが何をご無礼でも?」
「いえいえー、そういうわけではないですよ。ただ、顧問になれそうな人がいないので私がなろうかなって思ってます」
「セリーヌ先生が……あの、魔法倶楽部や術式研究会にも誘われても断った方が」
どちらも古くからある由緒ある部活で、エリート揃いの学生が集っている。
今だって、先生には勧誘をかけているはず。
先生はお忙しいのもあって、それを断ってるとか。
「ま、まあ、私くらいしかリオン殿下を抑えられませんからねー」
「いえ、そういうことでしたから私が入りますわ。そもそも、部活にするには三人が必要ではなかったでしょうか?」
「カレンさんが入ってくれるみたいですし大丈夫ですよー。一応、二人でも平気なように許可はとりました……それでは、私は職員室に戻らないとなので」
私の返事を待たずに、セリーヌ先生はタタッと足早に去っていく。
その足取りはなんだか軽いように見えた。
「一体、リオンは何を? そもそも、スイーツって? というか、カレンを部員にって……むぅ」
なんだか、無性に腹が立ってきた。
リオンってば急に変になるし、かと思えば昔に戻ったのかなとか。
なのに、私のことは避けようとするし。
「なんだか……気にくわないわね」
そうだ、私はリオンの監視役でもあった。
国王陛下に頼まれ、どうか面倒を見てやってくれと。
だったら、今だって近くで観察する義務があるわ。
「よし、決めたわ。リオン、覚悟しなさい——私を遠ざけようたってそうはいかないわよ」
リオンが不穏な動きを見せた以上、放ってはおけない。
カレンだって、リオンと二人きりなんか危ないわ。
今後の予定を立てた私は、部長のもとに相談に行くのだった。




