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主人公に断罪される悪役に転生したけど、関わらずにのんびり過ごしたい  作者: おとら@9シリーズ商業化


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ルールの壁

 セリーヌ先生が鍵を持ってきて、そのまま案内するということに。


 ちなみに校内には部活棟の建物が併設されており、一階にある通路で繋がっている。


 そこの通路を抜けて二階に上がり、真ん中辺りの部屋に入る。


 そこは調理実習で使われるような部屋で、テーブルや調理キッチンが揃っていた。


「おおっ、思ったより綺麗で設備も充実してそうだ。こんな部屋、よく空いてましたね」


「まあ、うちの学校で調理をするような物好きは少ないのでー。隣の部屋に調理部があるけど、人が少ないからこっちは余ったみたい」


「そうですね。貴族といえば、人を雇って作らせるものですから」


「そうなんですね。でもそのおかげで、わたし達にも仕事があるって院長先生も言ってました。お掃除だったり、お食事作りだったりとか」


 ……そういう考え方もあるか。

 何も貴族制の全てが悪ではない。

 一部の腐った者達は別として、きちんと民に還元したり雇うことで貧困から救ったりする。

 まあ、そんなこと言ったらゲームそのものを否定してしまうか。


「素敵な院長さんだな」


「えへへ、そう言ってくれると嬉しいです……会いに行きたいなぁ」


「ん? 会いに行けないのか?」


「あんまり治安が良くないので、学園の生徒になったら危ないかもって」


「あぁー、そういうことか」


 ここの生徒になれる人は限られていて、皆が特別な才能を持っている。

 そしてほとんどは貴族なため、それと間違えられる可能性もある。

 場合によっては身代金や才能を利用するため、攫われたりしてしまうだろう。


「はいはーい、話は後でね。とりあえず、ここが部活部屋になります。さっきも言ったけど、ほとんど人は使ってないから綺麗よね。それで、活動日はどうするのかな?」


「そうですね……その前に、俺一人の時でも活動していいですか?」


「うーん……あんまりイメージはよろしくないかも。それこそ、王子のわがままと見られちゃったり。たまにならいいけど、基本的には部活って誰かとやるものですから」


 俺の目的はイメージアップでもあるわけだし、それはよろしくない。

 そうなると、部員確保も必要か。

 後は曜日……この世界は火の日、水の日、風の日、土の日、氷の日、光の日、闇の日か。

 ちなみに光と闇の日は休日扱いになっている。


「それはごもっともな意見です。カレンは、いつなら平気だ?」


「えっと、火の日と土の日だと助かります。実は、バイトもしているので」


「なるほど……それじゃ、ひとまず火と土を活動日にするか」


「それでは、そちらで登録良くしておきます。今日は火の日ですし、このまま使って良いですから」


「セリーヌ先生、色々とありがとうございました。それでは、顧問の方もよろしくお願いします」


「いえいえー、こちらこそリオン君が良い子で先生の胃が和らいだので……って、ごめんなさい」


 慌てて謝罪するが、何も咎めることはない。

 実際のゲームでは、俺とアークが対立して大変だったし。

 きっと担任になる時点で、胃が痛かったに違いない。


「お気になさらずに。大丈夫ですよ、俺は平穏に過ごしたいので」


「それを聞けて安心ですねー。では、先生はこれで」


 そうして鍵を渡し、セリーヌ先生が部屋を出て行く。

 よし、これで改めて第一目標を達成だ。


「さて、どうするか」


「早速、何か作るんですか?」


「ああ、折角だしな。ただ、この部屋の保管庫には何もないか。まあ、使ってない部屋だ無理はない。そもそも、あまり保存もきかない」


 氷魔法を使えるのは俺だけなので正確にいうと冷蔵庫はない。

 そしてこの大陸は一年を通して暖かく、雪や冬というのものがないのだ。

 高い山とかあるなら氷や雪くらいあるだろとか思うが、そこはリオンの特別感を出すためになくしてるかもしれない……知らんけど。

 ちなみに、どうやって様々な食材を保存しているというとダンジョンで手に入るアイテムボックスというものがある。


「とにかく、氷などを用意出来るのは俺だけということだ」


「そもそも、氷って何ですか? えっと、魔法を見たから何かはわかるんですけど……」


「水が凍ったモノだな」


「だったら、水魔法が使えたら使えないんですか?」


「良いところに気がついたな。わからないが、多分無理だろう。そもそも、俺は水魔法が使えない」


「よくわからないけど、そういうものなんですね」


 俺が水魔法を使えない理由も、多分ゲーム的な仕掛けだとは思う。

 もし水が使えたら、火を使うアークに簡単に勝ててしまうし。

 別に水は豊富にあるし、そこはあまり問題視してない。


「さて、そうなると借りる必要があるな」


「確か、隣が調理部だって話でした」


「では、借りに行くとしよう。カレンはここで待っててくれ」


 カレンを置いて、隣にある調理部に頼みに行く。

 しかし、そこで気がついてしまった。

 この世界がファンタジー世界だということに。

 部屋に戻ってきた俺は、絶望から膝をつく。


「くそっ、まさか素材集めも大変だとは……!」


「ど、どうしたんですか?」


「一番大事なものがなかった。そうだ、牛乳や卵などは高級品か」


 この世界には魔物や魔獣と言った普通ではない生き物で溢れている。

 魔物は倒したら魔石という魔法を込められるモノになり、魔獣は前世でいた生き物が進化したような生物だ。

 魔物に打ち勝つためか、基本的に強く凶暴で捕まえたり倒すことも難しい。

 長い年月をかけて家畜化された魔獣もいるが、今すぐに用意できるものではなかった。


「クッキーとかだって、わたし達では食べられないくらい高級ですし……じゃあ、今日は中止ですか?」


「……いや、そんなことは我慢できん」


「じゃあ、どうするんですか?」


「……アレにするか?」


 俺はすぐに思いつき、再び隣の調理部に行く。

 そして目的の物を貰い、すぐに戻った。

 目的の物とは……イチゴである。


「リオン様? 急に出て行ってどうしたんですか?」


「おっと、すまん。ちなみに、カレンは料理の経験は?」


「えっと、孤児院にいた頃は料理のお手伝いをしてました」


「よし、即戦力だな。では、イチゴを適当にカットしてくれ」


「はい! 頑張ります!」


 フンスフンスという効果音が聞こえてきそうに、両拳を握りしめている。

 どうやら、少し硬さも取れてきたようだ。

 俺はその間に砂糖の計量と、粗熱を取る用にバッドに氷水を入れる。

 そこから更に器を乗せたら、カレンの作業も終わった。


「そしたらイチゴに砂糖をまぶして、10分くらい待つ。それを火にかけて、ソースを作ろう」


「イチゴジャムみたいな感じですか?」


「あぁー……似たようなものだ。しかし、厳密には違う」


 煮詰め過ぎるとジャムになってしまう。

 逆それでは、アレは作れない。

 その後雑談をして、10分が経過する。


「そしたらイチゴから水分が抜けるので、これを鍋に入れて火にかける。あとは弱いとろみがつくまで混ぜる」


「あれ? やっぱりジャムと同じ?」


「これを煮詰めていくとそうなるな。だから意外と見極めが難しい……まあ、不安なら少し早めに止めるのがいいだろう」


 混ぜる役目をカレンに任せ、俺は自分にしか出来ない作業をする。

 器を用意し、その前に立って集中。

 普段の攻撃用ではない、全くの別物だ。


「普通の氷ではダメだ……ふわふわ……白い……スノーアイス」


 俺の手から、白くふわふした雪が舞う。

 それが器に積もっていく。


「わぁ……綺麗……」


「くく、そうだろそうだろ。よし、そっちもいいな」


 とろみが付いていたので用意したバッドに乗せ、そこで粗熱を取る。

 それを俺が用意した雪氷にかければ完成だ。


「出来たぞ。これが——かき氷だ」


「かき氷ですか?」


「まあ、食べてみるといい」


 不安だと思うので、まずは俺が口にする。

 すると雪のようなふわふわの食感と、イチゴの程よく甘酸っぱい酸味が口の中に広がった。

 普通は冷凍イチゴを使うので、酸味がきつかったり味が落ちたりする。

 しかし生イチゴなのでそんなこともなく、本来の旨みを引き出すために砂糖の量も減らした……糖尿病で倒れたしね!


「これは美味い……生のイチゴを使っていることで、甘すぎないのがいい……これは止まらないぞ……!」


「お、美味しそう。よーし、えい——ふぇ?」


 口に入れた瞬間、カレンが目を見開く。

 そして俺を一瞬見たあと、スプーンをよそってかき氷をもう一口。

 くくく、その旨さには抗えまい。


「どうだ?」


「お、美味しいですぅ! ふわふわで、イチゴが甘酸っぱくて! どんどん食べ——あぅぅ!?」


「くく、急いで食べると頭を痛くするぞ?」


 我慢できずに一気食いしてしまったようだ。

 あのキーンという感じも、かき氷の醍醐味だな。


「い、いってくださいよぉ〜!」


「はは、すまんすまん」


「うぅ〜……でも、こんな食べ物初めてです」


「そうだろう? これこそがスイーツだ。ちなみに、これにレモンや蜂蜜をかけて美味いぞ」


「これがスイーツ……わたし、この部活に入って良かったです!」


「では、これからもよろしく頼む」


 俺がそういうと、満面の笑顔で応える。


 今回はスイーツとは言ってもかき氷……やはり、卵と乳製品が必要だな。


 俺はスイーツ作りのため、今後の行動について考えるのだった。






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