目標達成
そのまま、ひと気のない場所に到着する。
気のせいかもしれないが、その途中でアークを見かけたような。
何やら、焦った様子で中庭に入ったが……まあいい。
「あ、あのぅ……?」
「おっと、すまん」
「い、いえ……」
手を離すと、何故がカレンはもじもじしていた。
まあ、あんなに目立っては恥ずかしいか。
俺とて、いち早く逃げたかったし。
「カレン、災難だったな」
「い、いえ! 改めて、ありがとうございました! 二度も助けて頂くなんて……わたし、何も恩返し出来てません。何か、わたしにできることはありますか?」
カレンは上目遣いをし、俺に言ってくる。
よし、その言葉を待っていた。
俺はカレンの両手を握り、真剣に見つめる。
「カレン」
「ひゃい!? な、何でしょうか!?」
「俺と——スイーツ部を作ってくれ」
「そんな、まだ会ったばかりなのに……スイーツ部?」
「そうだ、スイーツ部だ」
そう、それこそが俺の狙いだ。
自業自得だが、ぼっちの俺に誘えるような人などいない。
だったら友達になったし、恩を売っておけばカレンは断りづらいだろう。
ククク、我ながら完璧な作戦である。
「……す、すみません、わたしったら」
「ん? それは断るということか? ふむ……まあ、無理強いはしないが」
「ち、違います! ただ……スイーツ部って何でしょうか?」
……おっと、俺としたことが慌てすぎたな。
このゲーム世界には、スイーツという概念がないのだった。
クッキーやパンケーキなどはあるが、アイスやかき氷などはない。
「……甘くて冷たいお菓子を作る部活だな」
「お菓子部ってことですか? それなら、確か一個あったと思いますよ?」
「それだと俺の求めるものではない。しかも、俺が入ったら迷惑がかかる」
俺はカレンに、先生に説明した内容を伝える。
すると、ようやく納得したようだ。
王子というものがあんまりよくわかってないから説明も大変である。
「つまり、新しく部活を作るってことで……そのためには最低二人が必要っててことですか?」
「ああ、それで合ってる。そして、君に頼もうと思ってな」
「わ、わたしでいいんですか?」
「ああ、君がいい」
何せ、俺に対する偏見がない。
そして、俺は恩に着せているから断り辛いだろう。
モブの女の子というのも大きい。
「そ、そんな……はい、わたしで良ければ」
「感謝する。そうと決まれば、早速職員室に向かうか」
「はい、末永くよろしくお願いします」
そう言い、顔を赤くしたカレンが頭を下げる。
しかし、末永くって何だ? 部活は三年間しかないが……まあ、良いか。
ひとまず俺はカレンを連れ、再び職員室を訪ねた。
すると、丁度タイミング良くセリーヌ先生とかち合う。
「あっ、リオン君」
「どうもです、セリーヌ先生。丁度良かった、部員を連れてきました」
「カ、カレンです!」
「同じクラスの女の子で平民……手が早いわねー」
そう言い、俺とカレンを見比べる。
何故か、少し不機嫌そうに見えるのは気のせいだろうか。
「そういうのではありません。ただ、都合が良かったので」
「まあ、貴族的なしがらみがないのは確かですねー」
「仰る通りです。それで認めてもらえそうですか?」
「それは問題ありません。リオン殿下の頼みですし、それにその……」
「別に濁さなくて結構です。要は、他の部活に入られても困るということでしょう」
すると、セリーヌ先生が苦笑する。
学園の先生からしても俺は扱いにくいし気にはしない。
むしろ、お礼を言いたいくらいだ。
「はは……それにしても、噂なんて当てにならないのね。リオン殿下、めちゃくちゃ良い子じゃない」
「まあ、噂なんてそんなものです。それで、顧問などは?」
「顧問なんだけど、私がすることになりました」
「セリーヌ先生が? ……それはちょっと」
彼女は主人公の攻略対象の一人だ。
それ目的で、こちらに来てしまうかもしれない。
すると、セリーヌ先生が頬を膨らませていた。
「ぶぅ……」
「どうしたのですか?」
「私では不満ということですか?」
「いや、そういうわけでは……」
「言っておきますが、伯爵家出身で且つ、いざとなれば貴方を止められる魔法使いは私くらいですよ。それ以外は、怖くて顧問になる人は少ないです」
それは確かにそうだ。
伯爵家出身且つ名門で知られるセリーヌ先生なら、俺にも意見は言えなくはない。
何より、風雷の魔導師としてゲーム内屈指の実力者だ。
「……わかりました、お願いします」
「えへへ、任せてね」
俺はスイーツとアークを天秤にかけ、スイーツの方を選んだ。
顧問だし他にも色々と忙しいので、そこまで関わることはないだろう。
ともかく、これで正式にスイーツが作れるぞ。
「早速、作りたいのですが……」
「も、もう? まあ、部屋は確保できたけど……少し待ってね」
そう言い、職員室の中に戻る。
俺はそこで、カレンを放置していたことに気づく。
「すまん、今日は予定あるか?」
「へ、平気です! 寮生活ですし、特に知り合いもいないので……」
「そうか。では、共にスイーツ道を歩もうではないか」
「は、はい? 良くわからないけど頑張ります!」
くくく、これで目的が一つ叶うぞ。
後はアークを避けつつ、人畜無害なスイーツ男子を目指せば良いのだ。




