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主人公に断罪される悪役に転生したけど、関わらずにのんびり過ごしたい  作者: おとら@9シリーズ商業化


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フラグ立てる悪役

 ……甘くみたな。


 職員室を出て、人を探してみたが……俺を見るとあからさまに目を合わせようとしない。


 そして俺が廊下を歩くと、道を開けるように壁際に行く。


 これでは、誘いようがない。


「というか、誘ったら脅迫になってしまうではないか」


 前世の記憶がある故、無理矢理誘うような真似はしたくない。

 学園の生徒は多くはないので、悪評はすぐに広まってしまう。

 それこそ、アークに攻撃する口実を与えてしまうではないか。


「さて、そうなると張り紙か? 自主的に来てもらうのが一番だが……ん?」


 廊下を歩いていると、中庭が目に入る。

 そこにはカレンと、赤い制服を着た貴族達がいた。

 何やら、揉めているように見える。


「また絡まれてるのか? 全く、仕方のない奴だ」


 流石に毎回俺が助けるのもアレだと思ったが、見て見ぬ振りをするのは気分が良くない。

 仮にといえ、友達になったわけだしな。

 同時に、俺の中に悪い考えが浮かぶ。


「ふむふむ、それは良い考えかもしれん。あちらも、ただで助けられるのは気後れするだろう」


 そう決めた俺は、窓を乗り越えて中庭に入る。

 そのまま、噴水近くにいるカレンに近づく。

 すると、あちらも俺に気づいたようだ。


「あっ……」


「カレン、こんな場所でどうした?」


「い、いえ、その……」


 どうやら、助けを求めて良いのか迷っている様子。

 その頼りきりにならない姿勢は素晴らしい。

 よし、これならメンバーに入れても良さそうだ。


「おい、貴様」


「あとは、願いを聞いてくれるかどうか」


「聞いているのか!」


「……ん? まさか、俺に言っているのか? もしそうなら、まずは自分の名前を名乗ったらどうだ?」


 振り返ると、そこには憤慨している貴族の生徒がいた。

 しかし、俺が何者かに気づいていないらしい。


「俺はエレン-レアル! 同じ貴族だろうが邪魔をすると許さんぞ! 今は、不正をしたこいつに躾をしているところなのでな!」


「不正?」


「こんなただの平民がSクラスなどおかしい! レアル伯爵家出身の俺がAクラスだというのに!」


 なるほど、そういう感じか。

 だったら、遠慮はいらない。

 レアル家なら尚更な……むしろ、好都合だ。


「何もおかしくあるまい? 平民がSクラス、つまり試験を受けた上で学園が決めたことだ。それこそ、平民では不正のしようがないが?」


「う、うるさい!」


「もしくは、自分が不正をしたから周りもしているとでも思ったか?」


「なっ——」


 どうやら、図星だったらしい。

 レアル家は俺にすり寄ってきた一族だ。

 アンナに調べさせたところ、黒い噂が次々と出てきた。

 俺の平穏の邪魔になるなら——消すか。


「なるほど、レアル家は不正をしているのか。これは、後で調べさせないといけないか」


「な、何を言っている!? そもそも、貴様は誰だ!?」


「伯爵家に連なる者だというのに、俺の顔を知らないとは……」


 それだけ、王族に敬意を払っていないということだ。

 そもそも、子供とはいえ擦り寄ってる相手の顔を知らないとか舐めてるな。

 すると、カレンが恐る恐る手を挙げる。


「あ、あのぅ……その方はリオン殿下です」


「……なに? あの怠惰で傲慢なリオン殿下!? 何故、平民などを助けに……」


「友人を助けるのに理由などいるまい? さて、不敬罪は許すが……不正については、お主の家に問いただすとしよう」


 俺がそう言うと、男があからさまに慌て出す。


「ま、待ってください! 家には連絡しないでください!」


「何もやましいことがないなら構わんだろう?」


「くっ——貴様のせいでェェ!」


「きゃぁ!?」


 男がカレンに殴りかかろうとするので、その拳を打ち払う。

 目を瞑ったカレンが目を開け、こちらを伺ってくる。


「……あれ? あ、ありがとうございます」


「平気か? おい、貴様……どんな理由があろうと、女性を殴ってはいかんだろうが!」


「ひぃ……!?」


 俺の喝に男が腰を引く。

 こちとら、前世の頃から姉に言われてきた。

 女性を殴るような男にはなるなと。

 そしてどんな理由だろうと、先に殴った方が悪いとも。


「大人しくしろ、今ならお前自身は見逃してやる」


「そ、そう言うわけに行くかァァァァ! 炎の槍よ、敵を燃やし貫け——フレイムランス!」


 何を血迷ったのか、殺傷力のある魔法を発動させた。

 避ければ、カレンに当たってしまうだろう。


「よ、避けてください!」


「それには及ばん……凍てつく槍——アイスランス」


「なぁ!?」


 迫り来る炎の槍に氷の槍で向かい打ち、俺の魔法が相手の魔法を飲み込む。

 そのまま相手に当たり、吹き飛んで気を失う。


「が……」


「加減はしたぞ。さて……いるな?」


「はっ、ここに」


「……なんでいるんだよ?」


「呼んだのはご主人様では?」


 俺の横には澄まし顔のアンナがいる。

 多分いるだろうなと思ったが、本当にいるとは。

 ……びっくりして声が出そうになったのは内緒である。


「コホン……そうだったな。さて、後始末は任せていいな?」


「死体は残らないようにいたします」


「ええっ!?」


「殺すな! カレンが勘違いしてるだろ!」


 俺は思わず、アンナの顔面にアイアンクローをかます。

 女性に暴力はいけないって? 前言撤回! 時と場合によるよ!

 手を離すと、しおらしく女の子座りをしてくる。


「およよよ……お嫁に行けない身体に」


「……なんか、お前も変わったな」


「今のご主人様に合わせてみました……ダメですか?」


「いや、好きにしろ」


 なんだかんだで、リオンはアンナには感謝してるしな。

 俺自身も、ゲームで最後まで裏切らないのは知っているし。

 好きにさせるくらいの度量は示したいところだ……程度によるが。


「ふふ、そうしますね」


「冗談はさておき、本人と家に釘を刺しておけ。俺の平穏を邪魔するなら容赦しないと」


「御意」


 今度は殊勝に頷き、気を失った席とを担いでその場を後にする。

 どうでもいいが、あの細腕の何処にそんな力があるのやら。

 ふと周りを見ると、ギャラリーが集まっていた。


「ふむ、目立ちすぎたか」


「え、えっと、何がなんだが……」


「カレン、とりあえず場所を変えるぞ」


「は、はい——ひゃぁ!?」


 俺はカレンの手を引き、その場を後にする。


 どうでも良いことだが、女の子と手を繋いだのはいつ以来だったろうか。


 ……悲しくなるからやめておこう。




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