部活
その日は初日ということで、午後はホームルームだけで終わる。
明日からの授業内容や、今後の予定など。
そして、最後に先生より紙が配られた。
「あと、今日から部活見学があります。この学校は交流を深めることも目的の一つなので、出来るだけ在籍することをお勧めしますよ。何かあるかは、各自渡した紙を見てくださいね」
「先生、質問をいいですか?」
「はい、アーク君」
「在籍していいのは、一つだけでしょうか?」
「明確な決まりはありませんが、二つか三つが限界かと。合う合わないはあるので、辞めるのは割と自由ですよ。上級生も、その辺りは理解しているので」
なるほど……この学校は将来のために通う。
家を継ぐ者は自分の家臣になる者、逆に家を継げない者は自分を使ってくれる者を。
冒険者や官僚になるとしても、上級生や横の繋がりは大事だろう。
現に主人公は、そのようにして繋がりを作っていくのだから。
「ふむ、部活か」
「リオンは何か入るの?」
俺が呟くと、横に座るセシリアが反応する。
その表情は、何かを伺っている様子だ。
ちなみに部活は前世と似たような種類がある。
「俺などが入ったら相手が困るだろ。はっきり言って、部活にならん」
「あぁー……それはそうね。みんな、扱いに困るわ」
こういう風に言ってくれるならマシだ。
ただ実際に入ったら、遠巻きされるだけだろう。
……あれ? 俺の友達作りむずくね?
「そういうことだ。それで、セシリアはテニスか?」
「そうなると思うわ。中等部から続けてるし、先輩にも誘われてるから」
「まあ、入らなきゃいけない決まりはない。とりあえず、俺は適当に……」
そこでふと気がつく。
王城で作れないのなら、《《学校で作ればいいのではないか?》》
ここなら誰にも文句は言われまい。
「どうしたの?」
「いや、何でもない」
「……怪しいわね」
「何も怪しくない。ほら、ホームルーム終わるぞ」
そこでホームルームが終わり、それぞれ部活見学に向かう。
アークといえば、セシリアの後を追って教室を出て行った。
「よしよし、これでセシリアも安心だろ……そういえば、今更だが」
今のアークは、どんな行動原理で動いているんだ?
前世では身分制度の廃止や、俺という敵を倒すために何度も立ち上がる。
しかし、今回は俺は何もしない予定だ。
「ストーリー的にはどうなる? というか、何で《《敵意を》》向けられてる?」
そもそも、ただのアークに俺を敵視する理由はない。
ただ世界の決まりというか、俺を敵視するようになっているとか。
もしくは、ゲームを知ってでもない限り。
……そうか、その可能性もあるのか。
「まあ、別にどちらでもいいか。結局、俺のやることは変わらない」
出来るだけヘイトを避けつつ、平穏に過ごそう。
そのための第一歩して、俺は目的地に向かうのだった。
◇
目的地である職員室に入ると、先生達がざわつく。
俺はそれを無視して、担任のセリーヌの元に向かう。
「セリーヌ先生」
「あ、あれ? リオン殿下? どうかなさいましたか?」
「別に殿下も敬語もいりませんよ。ここでは俺は生徒、貴女は先生なのですから」
「へっ? え、えっと……コホン、リオン君」
「はい、それでお願いします」
どうやら、無理矢理飲み込んだらしい。
こちらとしても、そちらの方が助かる。
先生が敬語など使っていたら、俺の印象が悪くなるし。
「そ、それで……先生に何の用かな?」
「部活についてお聞きしたいと思いまして」
「部活ですか? 紙は渡したはずですけど……」
「はい。俺が入ると、和を乱す可能性があります」
腐っても第二王子、いくら身分が関係ない学園とはいえ、中々そうはいかない。
不敬罪を恐れ、俺に遠慮することは間違いない。
それにゲームのリオンは、その性格から部活クラッシャーとしても有名だった。
終いには、自分の部活に誘ってくれたセシリアの好意に泥を塗るのだ。
「それは……そうかもしれない。じゃあ、入らないって報告かな?」
「いえ、違います——俺自身が、部活を作ってもいいでしょうか?」
そう、俺の目的はこれだ。
リオンは既存の部活には入らない方がいい。
だったら、自分で作ればいい。
「リオン君自身がですか……うん、いい考えかもしれませんね。そしたら、そこに入ってくる方々は、それを込みで入ってくるわけですし」
「ええ、来たい人はくるし避けたい人は来ないでしょう」
「ただ、部活申請は最低でも三人はいないと……」
「な、なんだと……?」
その言葉に俺は思わず膝をつく。
まさか、そんな落とし穴があるとは。
これでは、ぼっちの俺は不利ではないか。
「だ、大丈夫?」
「え、ええ、何とか」
「うーん……とりあえず、作るだけなら二人でも出来るかなぁ。わかりました、先生が掛け合ってみますねー」
「なんと……感謝します!」
「ひゃい!?」
俺はセリーヌ先生の手を両手で握り、感謝の気持ちを込める。
というか、頼りなさそうとか思ってごめんなさい。
「おっと、失礼しました」
「い、いえ……男の子に手を握られちゃった〜」
「はい?」
「いえ! なんでもありませんから! と、とにかく、リオン君は最低一人は捕まえてくださいね」
「わかりました、何とかやってみます」
俺にきちんとお辞儀をし、その場を去ろうとする。
すると、セリーヌ先生から声がかかった。
「そういえば、何部を作るのかな?」
「——スイーツ部です」
「……へっ?」
「では、よろしくお願いします」
今度こそ俺は、その場を離れて職員室を出て行く。
ククク……待ってろよ、スイーツ。




