帰宅後
二人は、自宅のゲート(魔法陣)を設置した小部屋に姿を現した。
クレメンスは扉に向かって手をかざし、開扉すると、廊下に出た。そのままスタスタとリビングへと向かう。ロジーナはその後を無言でついて行った。
リビングに荷物を置いたクレメンスは、そのまま部屋を出ようとした。
「クレメンス」
ロジーナに呼ばれ、足を止め、振り向いた。
「……ありがとう」
視線を落とし、小さな声でポツリと言ったロジーナに、クレメンスは思わず破顔した。
「穏便にすんだのは、正式な書類がそろっていたからだ」
「そうだけど……。でも……」
ロジーナは顔を上げ真っ直ぐにクレメンスを見る。
「ごめんなさい」
「ん? お前が謝る要素はなにもないだろ?」
クレメンスは不思議そうに首をかしげた。
ロジーナは首をふるふると左右に振った。
「いいえ。私、ちょっと意地を張ってた」
「お互い様だ」
事もなげに笑う。
「でも……」
ロジーナは再び視線を落とした。
と、ふいに抱き寄せられた。
「お前が無事で良かった」
クレメンスの少しかすれた声が頭上からふってくる。
ロジーナはクレメンスの背に手をまわししがみつく。
「次からは、クライアントについて、もっとちゃんと調べるわ」
しばらくの間の後、ロジーナは顔を上げた。
「そうだな」
クレメンスは「フッ」と笑い、腕の力を緩め、ロジーナを解放した。
「ねえ、貴族の評判の調べ方を教えて」
真剣なまなざしのロジーナに、クレメンスは目を細めた。
「わかった。帰ったら詳しく話そう。すぐに戻る」
クレメンスはそう言い残し、ゲートの小部屋へと向かった。




