第9話 魔王の視線と、地獄の剣稽古
◆ 魔国アビス=ノワール 魔王城
深淵の魔力が渦巻く玉座の間。
黒と紫の炎が揺らめき、空気そのものが震えている。
ゴスロリ服の少女――
魔王の側近 ビビア が静かに跪いた。
「魔王様……お伝えしたい事が」
白いローブを纏い、金髪・青い瞳の美しい男。
魔王 ゼリオ・アビスロード が柔らかい声で返す。
「……なんだい、ビビア」
「はい。ヴァルガ・ブラッドレイジが発見されました」
ゼリオは目を細め、微笑む。
「……ヴァルガ……久しぶりだなぁ……三百年ぶりかな。
確か罠にかかって死ななかった?」
「はい。一説には“魔具になった”とも……
ですが、確かに発見されました。
……が、すぐに消えました」
「……なるほど……」
ゼリオは軽く指を鳴らす。
「――ルシファー」
金髪の少年が突然転移してきた。
手にはフォークとケーキ。
「うわっ!? まただよ父上!
勝手に転移させないでって言ってるでしょ!」
「わるいわるい……仕事だよ、ルシファー。
え〜っと……ちょっと待ってね……」
ゼリオは目を閉じ、魔力で“世界”を探る。
数秒後――
彼は楽しそうに笑った。
「アルヴァリア近くの遺跡だ……二人組……
こいつら、黒竜殺したよ……うける……
美人とガキだ。探ってきて、ルシファー」
ルシファーはケーキを口に放り込み、ため息。
「……わかったよ。
帰ったらご褒美ちょうだいね」
光と共に姿を消す。
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◆ ◆ 森の中 開けた場所
カリナの剣が月光を反射する。
「構えろ」
「……こうですか? うわ……カリナさんの剣、めちゃくちゃ重い……」
「肘をまっすぐ」
小枝でマコトの肘を パシッ と叩く。
「いった……!」
「腰を落として」
また パシッ
「……こ、こうですね……」
「よし。十回振れ」
「じゅ、十回……?
絶対無理ですこんな重いの……!」
「いいからやれ」
カリナが“殺気のないのに怖い目”で睨む。
「ひぃぃぃ〜!」
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数分後。
「はあ……はあ……十回……終わりました……」
カリナは無表情で言い放つ。
「お前にはそれを二万回やってもらう」
「……む……無理に決まってるでしょ……!」
「大丈夫だ。残滓吸収をやってみろ」
「……え? はい……やってみます……
残滓吸収!」
森中の粒子がマコトに吸い込まれ、
身体が淡く光る。
「……あれ? 体力が回復してる!?
疲れが……吹っ飛んだ……!」
カリナは腕を組み、満足げに頷く。
「やはりな。
お前の“ゴミスキル”、とんでもないスキルだぞ。
限界を感じるたびに残滓吸収を繰り返せ」
マコトは拳を握りしめた。
「……なるほど……
二万回、はじめます!!」
「よし!」
カリナの笑顔は、なぜか一番怖かった。
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