第79話《迫る第四王子》
中央広場は夜でも明るかった。
屋台の灯り、魔導ランタン、観客の笑い声――
まるで祭りのような熱気が渦巻いている。
カリナはその真ん中で、豪快に酒瓶を掲げた。
「やっぱり賑やかなとこで飲む酒は最高だな!」
マコトは屋台のチキンを頬張りながら言った。
「たまにはいいですね〜。
なぁ、ルシファー」
しかしルシファーは返事をしない。
巨大魔導モニタを凝視したまま、微動だにしない。
「ルシファー?」
マコトが肩を叩くと、
ルシファーはゆっくりと振り返った。
その顔は――真っ青だった。
「マコト……ヤバいです……」
「……え?」
「第四王子に見つかりました」
「? はい?」
その瞬間、メメの実況が広場に響き渡る。
『お〜っとすごいスピードだ〜!
第1階層に続いて第2階層も最短記録でクリア!
黒薔薇の翼の記録を塗り替えていく〜!』
観客がざわつく。
「黒薔薇の翼の記録抜いたってよ!」
「誰だよあいつら!」
カリナは酒瓶を落としそうになった。
「何ぃ!?
うちの記録抜いただぁぁぁぁ〜!!」
『チーム名――デビル・ダークネス・ファントム!
快進撃だ〜!』
マコトは即座に言った。
「ダッサ……」
カリナは逆に感動していた。
「めちゃくちゃカッコいいチーム名だな!」
「えぇ……」
巨大モニタには、逆立った銀髪の男が映る。
その斬撃は速すぎて残像が残り、
魔力の軌跡が青白く光っていた。
モンスターが触れた瞬間、
肉体が“斬られたことに気づく前に”崩れ落ちる。
観客が悲鳴と歓声を上げる。
「速すぎる!」
「何あの斬撃……」
「人間技じゃねえだろ!」
ルシファーは震える声で言った。
「マコト……この銀髪が第四王子グラディウスです……
何度も殺されかけました……」
マコトはチキンを落とした。
「ええ!!」
ルシファーは手を震わせながら続ける。
「第四王子は……
僕の兄弟の中でも“戦闘特化”の化け物です。
気障で荒くて……
僕を見るとすぐ殺しに来るんです……」
カリナが酒を飲みながら言う。
「お前、兄弟仲悪すぎだろ」
メメの実況がさらに加速する
『お〜っと!
デビル・ダークネス・ファントム、
第3階層も最短記録で突破〜!!』
『黒薔薇の翼の記録をまた更新!
これは……とんでもないチームが現れましたね〜!』
マコトは深呼吸した。
「……ルシファー、
あの銀髪……どれくらい強いの?」
ルシファーは即答した。
「僕の全力を使っても、
一撃で返されます」
「…………」
マコトは固まった。
カリナは酒瓶を置き、立ち上がる。
「よし。
面白くなってきたじゃねえか」
「いや面白くないですよ!!」
「黒薔薇の翼の名にかけて、
第四王子ぶっ倒すぞ!」
「無理無理無理無理!!」
ルシファーが全力で否定した。
中央広場の夜は、
嵐の前の静けさに包まれていった。
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