第75話《包囲突破》
夜。
蒼紋騎士団のキャンプでは交代の時間が訪れ、
アーサーの姿が一時的に見えなくなっていた。
眠そうなメルセデスが焚き火の前で船を漕いでいる。
ストレージ内で、カリナが窓を覗き込みながら言った。
「アーサーが消えた。今が手薄よ」
マコトは頷き、手をかざす。
「レジデューアブソープ!
ウォーターバインド、細胞破壊!」
魔法残滓が黒い霧となって吸い込まれ、
ウォーターバインドのゼリー状の壁がみるみる崩れていく。
ルナが叫ぶ。
『今よ! ルシファー出して!』
「レジデューストレージ! ルシファー出す!」
光が弾け、ルシファーが外へ現れた。
メルセデスが目をこすりながら叫ぶ。
「……現れたわ!
……あれ? ウォーターバインドが消えてる!」
ルシファーは即座に詠唱する。
「――移!」
転移魔法を展開――
……しようとしたが、魔法陣が発動しない。
「え!? なんで!?」
その瞬間、地面に巨大な魔方陣が浮かび上がった。
ルナが叫ぶ。
『封魔法結界! マズイわ!!』
武装した蒼紋騎士団が一斉に姿を現し、
ルシファーを完全に包囲した。
ミサキとユウタも前に出る。
そして――
アーサーが闇から歩み出た。
「かかったな、“翼”……いや、ルシファー」
ルシファーは歯を食いしばる。
「……くっ」
ストレージ内でマコトが叫ぶ。
「カリナさん! 俺、出ます!」
「くそ! 私も出せ!」
マコトは即座に詠唱。
「レジデューストレージ!」
光が弾け、マコトとカリナがルシファーの前に立ちはだかった。
アーサーは満足げに微笑む。
「黒薔薇の翼……会いたかったよ」
カリナは大剣を構え、怒鳴る。
「畜生! 何が望みだ!」
アーサーは手を広げ、笑った。
「ふ……はははは……
話を聞きたいだけだよ、カリナ。
そして――五味マコト君」
マコトは観念したようにマスクを外す。
ミサキが目を丸くする。
「……え……なんか全然違うけど……後輩くんだ……」
ユウタも驚いたように言う。
「……なんか……大きくなったし……
イケメン化したな、五味くん」
マコトは苦笑しながら頭を下げた。
「ミサキさん、ユウタさん……お久しぶりです」
カリナも舌打ちしながらマスクを外す。
「くそ! 話だけ付き合ってやるよ」
最後にルシファーもマスクを外した。
その瞬間――
女子団員たちが一斉にざわついた。
「えっ……イケメン……」
「髪……綺麗……」
「翼様……素顔……!」
蒼紋騎士団の包囲は解かれないまま、
緊張とざわめきが入り混じる空気が広がった。
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