第74話《袋小路のストレージ・残滓吸収Ⅲ》
ストレージ内。
外の様子を映す魔導窓を見ながら、カリナが眉をひそめた。
「……ちょっと、どうなってんのよ」
外では、蒼紋騎士団がウォーターバインドを囲むようにして、
完全にキャンプを始めていた。
焚き火、テント、見張り――
完全に“包囲網”だ。
マコトが窓を覗き込む。
「ミサキやユウタもいますね……」
ルナが冷静に状況を分析する。
『ここから移動するには、誰かが一度ストレージの外に出ないといけないわ』
ルシファーは青ざめた。
「そしたら……ウォーターバインドにドボンだね……」
カリナが腕を組む。
「ルナ、最適解は?」
ルナは少し考え、ため息をついた。
『……今のところ、ないわね。
あるとすれば、マコトが新たなスキルを手に入れるくらいかしら。
そろそろレベルアップしてもいい頃よね。ボス倒したし』
カリナは即決した。
「マコト、伝説竜の肉食って特訓するぞ」
マコトは背筋を伸ばす。
「ええ!……わかりました……!」
ルシファーも拳を握る。
「マコト、がんばってね!」
カリナが睨む。
「ルシファー、お前もだ」
「……はい〜」
――特訓開始
伝説竜の肉を食べ、
魔力を練り、
**残滓吸収**で体力を回復し
――それを十五回繰り返した。
三人の身体が同時に光に包まれる。
レベルアップ。
マコトが拳を握りしめた。
「よし……キター!!」
カリナが身を乗り出す。
「進化したか? 新スキルか?」
マコトはステータスを開き、目を見開いた。
「ありました! スキル進化です!」
進化スキル:残滓吸収Ⅲ(レジデューアブソープⅢ)
存在するものすべてから残滓(生命エネルギー)を吸収し、
対象物に付与効果を与える。
● 吸収できる残滓
すべて
● 効果
体力・魔力の回復・強化(大)
細胞の活性化(大)
細胞の破壊(大)
カリナがルナを見る。
「どうなんだルナ! 打開策あるか?」
ルナは少し考え、答えた。
『……ウォーターバインドの破壊くらいかしらね……』
カリナは頭を抱える。
「くそ! ダメか!」
その時、ルシファーが遠慮がちに手を上げた。
「あの〜……」
「なんだ!」
「僕、転移魔法覚えました」
ストレージ内が静まり返る。
ルナが即座に判断した。
『それならいけるわ。
追加スキルの“細胞破壊”でウォーターバインドを破壊して、
その後ルシファーをストレージから出す。
ルシファーは転移魔法を展開。
これでいこう』
カリナはルシファーの肩を叩いた。
「よし! でかしたルシファー!」
ルシファーは照れ笑いを浮かべる。
――その頃、外では
メルセデスがアーサーに詰め寄っていた。
「……本当ですか?」
アーサーは頷く。
「ああ……確かに言っていた。
“薔薇”がマコトと、
そして“黒”が
『レジデューストレージ。俺とカリナさん収納』と」
メルセデスは腕を組む。
「今まで分かったことを整理すると……
マコトとカリナで確定。
さらにストレージ能力を持っている、と」
アーサーはウォーターバインドを見つめた。
「その通りだ。
ウォーターバインドの上で消えたからな。
マコトとカリナはまだここにいるはずだ」
蒼紋騎士団の包囲は、
ますます強固になっていく。
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