第66話 《静寂のボス部屋、勝者の影》
崩れ落ちていた空間が、ゆっくりと元の形を取り戻していく。
黒い霧は薄れ、歪んでいた壁は静かに収束し、
まるで悪夢が引いていくように、ボス部屋は“正常”へと戻っていった。
気がつけば――
立っているのはマコトひとりだった。
他の冒険者たちは、まるで糸が切れた人形のように床へ倒れ込んでいる。
蒼紋騎士団も、レオンも、ルシファーも深く意識を失っていた。
マコトはその場に崩れ落ちる。
「……ヤバい……身体が動かない……
狂戦士モード……ハンパない……」
呼吸は荒く、筋肉は焼けるように痛む。
視界が揺れ、意識が遠のきかけたその瞬間――
マコトの身体が淡く光を帯びた。
レベルアップの光だ。
「……ラッキー……
疲れが……吹っ飛んだ……」
光が消えると同時に、
倒れていたルシファーの身体も同じように光を放つ。
ルシファーはゆっくりと目を開け、上体を起こした。
「……あれ?
何がどうしたの……?」
マコトは苦笑しながら答える。
「とにかく……勝ったよ」
その声に反応するように、
ストレージの中からカリナの怒鳴り声が響いた。
「マコト! 早く出せ!!」
「はいはい……レジデューストレージ、カリナさん出す」
光が弾け、カリナが姿を現す。
「よくやった、マコト!」
マコトは肩を落とした。
「……全く制御不能でした、ヴァルガ……」
ルナが静かに告げる。
『あれが本来の狂戦士の姿ね……』
ルシファーは頬を膨らませる。
「みんなだけ分かっててずるい〜」
その時、救護班がボス部屋に駆け込んできた。
気絶した冒険者たちを次々と担ぎ上げ、外へ運び出していく。
――チョモアーケディア
メメの声が響き渡る。
『ボス部屋映像、復活しました〜!
……黒薔薇の翼の三人以外、全員倒れている〜!
いったい何が起きているのか〜!?
……はい、はい…ウイナー判定出ました!ウイナーは黒薔薇の翼だ〜!!』
中央広場の観客席が爆発したように盛り上がる。
「黒薔薇の翼が勝ったのか!」
「あのレオンが気絶してるぞ!」
「とにかくすげぇ! 黒薔薇の翼!!」
カリナは周囲を見回し、眉をひそめた。
「レオンとかメルセデスとか、起きたら厄介だ。
今のうちにずらかろう」
マコトとルシファーは頷いた。
出口ゲートの魔法陣が淡く光り、
三人の姿がゆっくりと現れた。
その瞬間だった。
――轟音のような歓声が、すり鉢全体を揺らした。
「出たぞ!!」
「黒薔薇の翼だ!!」
「今回も最速クリアだってよ!!」
ルシファーが興奮する。
「……これ、たまりませんね…」
ニヤリとするカリナ。
「だよな〜」
こうして――
黒薔薇の翼、第4階層クリア。
静まり返ったボス部屋に、
彼らの足音だけが響いていた。
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