第56話 崩落する天井、乱れる階層
第4階層に入って間もなく、
カリナは背後の気配を感じ取り、低く呟いた。
「……追ってきてんな、蒼紋騎士団」
振り返るまでもなく、
蒼紋騎士団の足音と魔力の気配が迫ってくる。
ルシファーは翼を広げながら提案した。
「二人ともストレージに入りませんか?
僕だけなら翼を使ってモンスターを飛び越えて逃げてみせます」
ルナが即座に判断する。
『ゲートは三人でくぐったから、
ルール上は問題ないわ』
マコトは頷き、手をかざした。
「よし……
リデジューストレージ!
俺とカリナさん収納!」
光が走り、二人の姿が消える。
蒼紋騎士団の追撃前方でメルセデスが叫んだ。
「……! 黒と薔薇が消えた!
翼しかいない!」
ルシファーは十体のゴーレムの頭上を
白い翼で軽々と飛び越えていく。
その後を追おうとした蒼紋騎士団に、
ゴーレムたちが一斉に襲いかかった。
「……クソ!
総員、ゴーレムを倒すぞ!!」
メルセデスは剣を構えながら舌打ちした。
その間に、ルシファーの姿は完全に見失われた。
――チョモアーケディア―実況席
中央広場前の実況席では、
メメがゲストを紹介していた。
『今回はゲストに、
【蒼牙の四刃】から
レオン・ヴァルハルトさんにお越しいただいてます!
レオンさん、ありがとうございます!』
レオンは軽く手を振った。
『いえいえ。
私が無理を言ってゲスト枠に入れてもらったんですよ』
『そうなんですってね。なぜですか?』
『ええ……黒薔薇の翼の“薔薇”を近くで見たくてね』
『うわ〜! 問題発言ですね〜!
ファンがざわつきますよ!』
『いやいや、あくまでプレースタイルに興味があるだけですよ』
『との事です!ファンの皆さん安心して下さいね〜! ゲスト紹介でした〜!』
ルシファーは翼を広げ、
高速で階層を駆け抜けていた。
その時、ルナの声が鋭く響く。
『マコト!
ルシファーを収納して!!』
「えっ!?」
マコトが反応するより早く、
天井が――落ちてきた。
石の塊が轟音とともに迫る。
ルシファーの瞳が大きく見開かれた。
「!! 潰れる!!」
――第4階層入口。
入口の魔導モニターに突然ノイズが走った。
次の瞬間、
ゲートの非常扉がガシャーンと閉まり、
赤い警告灯が回り始める。
非常サイレンが鳴り響いた。
――チョモアーケディア―実況席
メメが叫ぶ。
『……! な、何事でしょうか!?』
レオンは険しい表情で巨大魔導モニタを見つめた。
画面にはダンジョンの壁や天井が入れ替わっている映像が流れる。
『これは……
クリア後に行われる“ダンジョンシャッフル”ですね。
プレイ中に起きるなんて……
非常サイレンが鳴ったということは、
エラー……でしょうか。
プレイヤーが無事ならいいのですが』
中央広場がざわつき、
冒険者たちの不安が広がっていく。
――ストレージ内
ルシファーは胸を押さえ、震えながら言った。
「……死ぬかと思った……」
マコトも額の汗を拭う。
「……ふぅ……危なかった……ギリでした…」
カリナは眉をひそめた。
「何ごとだよ……」
ルナが静かに告げる。
『異常ギミック魔導波を検知したわ。
通常プレイ後に行われるダンジョンシャッフルよ。
運営のエラーじゃない……
外部の犯行。
今回の第4階層……何か変ね』
ストレージ内の空気が、
一気に冷たくなった。
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