第54話 契約崩壊、白い影
第4階層の中止が続き、三日目。
ラビリンスオーソリティ本部の会議室では、
責任者マードックを中心に緊迫した会議が行われていた。
「……ゴーレムロードが契約を打ち切りたいと?」
部下の職員が震えた声で答える。
「はい……“契約違反で訴える”と主張しておりまして……」
マードックは机を叩いた。
「直してやったではないか!
契約違反には当たらん!
こちらは 2億ガロ も払ったんだぞ!」
「ですが本人が……“これ以上続けられない”と……」
マードックは苛立ちを隠さず言い放つ。
「何としてもやらせろ!
契約違反はむしろ向こうだ!
逆に 2億ガロ返してもらうぞ!」
職員たちは青ざめながら頷いた。
◆ ゴーレムロードのボス部
屋巨大な石室の中央で、
ゴーレムロードは膝を抱えて震えていた。
ラビリンスオーソリティの職員が淡々と告げる。
「……というわけでして、契約不履行には当たりません。
戦わない場合、ゴーレムロードさんが 2億ガロ を支払うことになります」
ゴーレムロードは絶望した声を上げた。
「……そんな……2億ガロなんて払えるわけない……
あんな目にあったんですよ……
あなたも見てたでしょう……
もう戦うなんて……できません……」
職員は冷たく言う。
「心中お察ししますが……
我々の立場では、これしか言えません」
「……鬼……悪魔……人でなし……!」
「ではよろしくお願いします。
再開は 5時間後 です」
職員は淡々と部屋を後にした。
ゴーレムロードはその場に崩れ落ち、
石の床に涙を落とした。
「……もう嫌だ……もう戦いたくない……」
その時――
静かに足音が響いた。
白いローブをまとった男が、
暗がりから姿を現した。
ホワイトクルセイダーのマリオだった。
「……何やらお困りのようで、ゴーレムロードさん」
ゴーレムロードは涙で濡れた顔を上げる。
「……君……誰……?」
マリオは優しく微笑んだ。
「あなたにとって、とても良い話 を持ってきました」
「……良い話……?」
「はい。
あなたはもう、戦わなくていいようになります」
ゴーレムロードの目が揺れた。
「……本当……?」
「本当ですとも。
あなたはよく頑張りました。
ひどい運営ですね……
“人でなし”とは、まさにあのことです」
ゴーレムロードは嗚咽を漏らした。
「……ですよね……ですよね……」
マリオはそっと肩に手を置いた。
「我々にお任せください。
悪いようには絶対にしませんから」
その声は甘く、
しかし底知れない冷たさを含んでいた。




