第50話 2億ガロの報酬
チョモバザールは今日も人で溢れていた。
屋台の香ばしい匂い、冒険者たちの笑い声、武具の金属音――
そのすべてが混ざり合い、独特の熱気を生み出している。
マコトとカリナは買い出しの袋を抱えながら、
雑踏の中を歩いていた。
ふと、街頭の魔導モニターが切り替わる。
『……本日の注目チーム! 蒼紋騎士団……』
その言葉に、二人は同時に振り向いた。
「カリナさん……あれって」
「……メルセデスだ。
蒼紋騎士団がダンジョン参加?……」
映像にはユウタとミサキの姿も映っていた。
マコトは思わず声を上げる。
「あ! ユウタさんとミサキさん!」
「知り合いか?」
「はい。一緒に召喚された二人です」
ルナが静かに告げる。
『マコトを追ってきたみたいね、捜索の一環でしょう』
その瞬間、画面が切り替わり、黒背景に白文字が浮かび上がった。
◆ 特別放送
黒薔薇の翼の方々へ先日は大変失礼いたしました。
我々の対応が不十分でした。
謹んで謝罪いたします。
その上でお願いがございます。
ギルドまでご連絡いただけないでしょうか。
また、ご連絡いただけない場合は
匿名ではなく本名で捜索させて頂きます。
カリナは舌打ちした。
「……! 畜生、そうきたか」
マコトは困ったように眉を寄せる。
「どうします……本名バレちゃいますね」
「殴り込むか……」
ルナが慌てて制止した。
『いやいやいや……ここはマコトに行かせよう!
カリナはストレージに隠れてて、ヤバくなったら出ればいいじゃない!』
マコトは勢いよく手を挙げた。
「はい! はい! 俺行きたいです!」
カリナは肩をすくめる。
「……しゃーねぇな。任せたぞ、マコト」
◆ チョモギルド
ギルドに足を踏み入れた瞬間、
ざわり、と空気が揺れた。
「おい……あいつ……」
「黒だ……黒薔薇の翼の黒だ!!」
「オーラが違う……!」
ギルド中から歓声が上がる。
マコトは戸惑いながら歩いた。
「……あれ? なんか俺人気者?」
冒険者たちが次々と声をかけてくる。
「この前のボス戦、エグかったぜ!!」
「あんな戦い初めて見た! また頼むぞ!」
「薔薇とのコンビ最高だ!」
マコトは照れながら受付へ向かった。
そこには――
以前カリナに胸ぐらを掴まれたラビリンスオーソリティの職員たちが
全員で深々と頭を下げていた。
「黒様。
運営責任者のマードックと申します。
先日はうちの職員が大変失礼いたしました」
「い、いえ……で、ご用件は……?」
◆ 運営の依頼
マードックは額に汗を浮かべながら説明した。「え〜……つまり……
第4階層のボス、ゴーレムロードの腹から
オークキングの死体を取り出して欲しいのです」
「……ああ、はい」
「色々試したのですが全く出せず……
契約上、このままでは階層ボスの運用に支障が……
もちろん報酬はお支払いしますし、
階層スキップも可能です」
ルナが囁く。
『カリナが出せって言ってる』
次の瞬間、ストレージが光り、
カリナが姿を現した。
「話はわかった。
マコト、ゴーレムから死体出してやれ。
死体は装飾品ごとこっちが貰うぜ」
「……はい」
カリナは指を突きつけた。
「スキップはいらねぇ。
第4階層から通常通り参加させろ」
「承知しました」
「でだ、報酬は?」
「5000万ガロでいかがでしょう」
「2億ガロだ。ビタ一文まけない」
マードックは青ざめた。
「……せめて1億ガロで……」
カリナは踵を返す。
「マコト、帰るぞ」
「わかりました!
1億5000万ガロで!」
「またな」
マードック
「ま、待ってください!!
出します!
2億ガロ! 出します!!」
カリナは満足げに頷いた。
「最初からそう言えよ」
非情なカリナ、しかしルシファーの予想通り《チョモ》への参加が継続となったのであった。




