第45話 思惑
蒼紋騎士団――
大陸最強と謳われる国家直属の精鋭部隊。
その本部の奥深く、
作戦室には巨大な魔導モニターが並び、
淡い青光が室内を照らしていた。
アーサー団長と副団長メルセデスが、
無言で映像を見つめている。
モニターには《チョモ》第2階層の中継映像。
赤い装備の女――“薔薇”が、
リザードロードを一瞬で切り刻む姿が映し出されていた。
アーサーは腕を組んだまま呟く。
「……今から見せるのは《チョモ》第2階層の映像だ。
今バズっているパーティ、黒薔薇の翼。
こいつがメンバーの“薔薇”だ」
メルセデスは目を細めた。
「……これは……
疾雷斬に……消裟斬……」
アーサーは頷く。
「だよな。
私の知る限り、この技を使えるのは――
お前と、カリナだけだ」
メルセデスは静かに言った。
「間違いありません。
大剣二本でこの技を使えるのは……姉だけ。
この女はカリナです」
アーサーは別の映像を呼び出した。
「カリナはダンジョンにいる。
そして“薔薇”と名乗っている……
そしてその前の第1階層――
黒薔薇の翼のもう一人、“黒”の映像だ」
モニターには、
黒装束の男がスケルトンキングを倒すシーンが映る。
メルセデスは眉をひそめた。
「……スケルトンキングが縮んだ……?」
「ああ。見たことのない術式だ。
注目するのは――ブレスレットだ」
映像を拡大すると、
黒の腕には金色のブレスレットが光っていた。
メルセデスは息を呑む。
「金色……!
ウチの“追放勇者”……!」
アーサーは苦笑した。
「ああ。
死霧の森から生還した追放勇者。
名前は――マコト…ヴァルガだ…」
メルセデスは資料をめくりながら言う。
「大分絞れますね。
偽名の可能性もありますが……
近々の追放勇者で“マコト”……
何でも“ゴミの気持ちがわかるスキル”だとか……ぷ……」
アーサー
「……そうだ……ぷぷ……」
メルセデス
「だ、団長……ぷ……笑わせないでください……ぷ……」
二人はしばらく肩を震わせたあと、
真顔に戻った。
アーサーは資料を閉じる。
「……ふぅ。
メルセデス、マコトと一緒に召喚された勇者が二名いる。
同郷だそうだ。
そいつらを連れて《チョモ》へ行ってくれ。
ダンジョンに入る可能性もあるから、団員も連れて行け」
「わかりました」
「ちなみに――
明日、黒薔薇の翼が第3階層に入るそうだ」
「承知しました。
2時間後に出発します」
メルセデスは敬礼し、部屋を出ていった。
アーサーはモニターを見つめながら呟く。
「……カリナ……
お前は何をしに《チョモ》へ来た……?」
《チョモ》近郊ホワイトクルセイダー本部・会議室
白いローブをまとった者たちが、
静かに魔導モニターを見つめていた。
映っているのは――黒薔薇の翼。
長髪の金髪、マリオが言う。
「リーダー……
今、話題の二人です」
短髪の金髪、ジャスティスは
画面の“薔薇”を見て口角を上げた。
「……こいつらか……
いいね……欲しい……
特に“薔薇”が……」
黒髪センターパートのタケシは、
無言で画面を見つめていた。
その瞳には、
何かを思い出すような影が揺れていた。




