第37話 セットアップ
VIPルームは、外の喧騒とは別世界だった。
深蒼の絨毯、磨き上げられた黒檀のテーブル、壁には魔石ランプが柔らかい光を灯している。
まるで王族の応接室のような空間に、マコトとカリナは落ち着かない様子で座っていた。
ルナの声が静かに響く。
『今回は30階層までを想定するわね。
まずはカリナから』
「おう! 頼む」
『剣はそれでいいけど、装備がバラバラだからセットアップでいこう』
「セットアップ?」
『《チョモ》は全世界に中継もされるから、美しい方がいいでしょ』
カリナは「ああ、そうだったな」と頷いた。
マコトは首をかしげる。
「……中継?」
カリナは脚を組むと、説明を始めた。
「ここのダンジョンはな、前時代文明の遺産で……
元々“無限にモンスターが湧く訓練用ダンジョン”なんだよ。
運営が存在しててな……まあ、中継してギャンブルや広告に使うってわけだ」
「……よくわかんないっすね」
ルナが補足する。
『あなたのいた世界で言うと、RPGゲームの戦いをLIVE中継して、広告で利益を得るって感じ。
トップランカーはスポンサーもつくから、賞金以外にも報酬が入る』
「ああ〜なんとなくわかりました」
カリナは肩をすくめた。
「まあ、見た目良くしとけば恩恵があるってことだな」
『そういうわけで、カリナは“派手担当”だから目立とう!
血薔薇装備シリーズで』
店員が運んできたのは、深紅に輝く装備一式だった。
兜、胸甲、腕甲、脚甲――すべてが薔薇の紋様を刻んだ鮮烈な赤。
カリナが装備を身につけると、まるで血の女王のような迫力が漂った。
「おお〜……美しい。私しか着れないな、これ!」
ルナが続ける。
『マコトは唯一無二のスキルと攻撃が今後も予想されるから、ミステリアスな黒が最適解。
黒蛇装備シリーズ』
黒い箱が開き、漆黒の装備が姿を現した。
蛇の鱗のような光沢を持つ黒。
動くたびに影が揺れるような不思議な質感。
マコトが装備すると、空気が一瞬ひやりとした。
カリナが感嘆の声を漏らす。
「おお〜いいね〜! ガチで強そうだわ」
「そ、そうですかね……照れます」
『マコトの武器はオーダーしましょう、いくらかかってもいいわ、伝説竜ノクス=ドラグレアの鱗を10枚渡して、形は………』
「了解!」
ルナが締めくくる。
『二人とも、マスクもつけて。
アルヴァリアから指名手配されてるからね』
黒と赤のマスクが手渡される。
二人は顔に装着し、鏡に映る自分たちを見つめた。
赤の血薔薇。
黒の蛇影。
まるで“ダンジョン攻略者”としての新しい姿が完成したようだった。




