第36話 《チョモ》への準備
ギルド内の食堂は、夕方の喧騒でざわついていた。
冒険者たちの笑い声、皿のぶつかる音、酒の匂い。
その中で、カリナは豪快に肉を噛みちぎり、ジョッキを煽っていた。
「ぷはぁ〜! やっぱ肉と酒は最高だな!」
その横で、マコトはストレージ内に入る。
ストレージの中は静かで、外の喧騒が嘘のようだった。
白い光に包まれた空間で、ルシファーはベッド代わりのソファに横たわっている。
マコトは心配そうに言った。
「……まだ完治してないけど……」
ルシファーは苦笑しながら天井を見上げた。
「……多分、ストレージの外に出たら激痛が走るだろうね。
でも……出るしかないんだろ?」
「うん……パーティ登録しないと……」
ルシファーは拳を握りしめた。
「わかった。僕も男だし……魔王の息子だ。
多少の痛みには耐えられるよ」
マコトは深く息を吸った。
「……わかった。じゃあ行くよ」
「いつでもいいよ、マコト」
「リデジューストレージ!
俺とルシファー、出す!」
光が弾け、二人は食堂の真ん中に現れた。
その瞬間――「ギャァァァァァァ!!!」
ルシファーは床に崩れ落ち、全身を震わせた。
痛みが波のように押し寄せ、身体が跳ねる。
カリナは慌てて駆け寄り、ルシファーの口を押さえた。「我慢しろ!!男だろ!」
「……モゴモゴ……死ぬ……殺す気か……モゴモゴ……!」
汗が滝のように流れ、ルシファーは痙攣していた。
マコトは受付嬢に叫ぶ。
「お姉さん! 鑑定&登録お願いします!!」
受付嬢は驚きつつも、慌てて水晶板を取り出した。
「は、はいっ! わかりました!!」
光がルシファーを包み、数値が浮かび上がる。
ルシファー レベル102 ランクS
受付嬢は目を丸くした。
「も、問題ありません!
こちらが《チョモ》参加資格証です!」
「リデジューストレージ! ルシファー収納!」
光がルシファーを包み、ストレージへ戻っていった。
カリナは肩で息をしながら言った。
「はぁ……はぁ……なんとかなったな……」
マコトも額の汗を拭った。
「……はい。これで《チョモ》に行けますね」
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ギルドを出て、二人は街の中心へ向かった。
エルドナの街は鍛錬の街と呼ばれるだけあって、
武具屋や鍛冶場が立ち並び、金属音が響いている。
その中でも、ひときわ豪華な建物があった。
マコトは看板を見上げる。
《武具MAXIMUM》
「ルナ、ここ? なんかすごい店だけど……」
『ええ。ここで全部揃えるのがベストよ』
カリナは腕を組んで唸った。「……門前払いくらいそうだな……」
二人は意を決して中へ入った。
店内は豪華なシャンデリアが輝き、
貴族たちが優雅に武具を選んでいた。
明らかに場違いな雰囲気。
すぐに責任者らしき男が近づいてきた。
「……君たち。
ここはエルドナ最大の高級武具ショップMAXIMUMだ。
悪いが出て行ってくれ。
市場にでも行って買うといい」
カリナは即座に噛みついた。
「なんだとこの野郎!!」
その瞬間、ルナの声が響く。
『マコト、伝説竜の宝石を1個でいいから出して』マコトはポーチから宝石を取り出し、責任者に差し出した。
「これを」
「…何だこんな物……え!!!」
責任者は宝石を見た瞬間、顔色が変わった。
「……! こ、これは……!!
ドラグレアストーン……!?
お客様、大変失礼いたしました!!
どうぞこちらへ!!」
態度が一瞬で180度変わり、
二人は豪華なVIPルームへ案内された。
カリナは呆れたように笑った。
「……すげえな、あの宝石一個で世界が変わるんだな……」
マコトは苦笑しながらルナに尋ねた。
「ルナ、ここで何買うの?」
『全部よ。
武具、装備、回復アイテム……
《チョモ》攻略に必要なものをね』
二人は豪華な椅子に腰を下ろし、
これから始まる“本気の準備”に胸を高鳴らせた。




