第35話 魔王ゼリオ=アビスロード
ストレージ内に立つ男――
その存在だけで、空気が震えた。
白いローブ。
整った顔立ち。
しかし、まとっている“圧”は桁違い。
マコトとカリナは、言葉を失った。
マコトは震える声でルシファーに尋ねた。
「ル…ルシファー……父上って……?」
ルシファーは気まずそうに視線をそらす。
「……えっと……父上、言ってもいいのかな?」
ゼリオは微笑んだ。
「かまわないよ」
ルシファーは深呼吸し、言った。
「……僕のお父さん。ゼリオ=アビスロード。
魔王だよ」
即座に構えるカリナ、
反射的に剣を抜いた。
「魔王!!」
『カリナ、ストレージ内では攻撃はできない。
落ち着いて……魔王は戦う意志はないみたい』
全能の指輪からルナの声が響く。
カリナは舌打ちしつつも剣を下げた。
ゼリオはマコトを見つめ、穏やかに言った。
「……マコトくん。
いい指輪だね。全能の指輪……
そうか、ルナは指輪になったのか。
そしてもう一つは――
狂戦士の指輪。……マコトくんは最強だね」
マコトは思わず背筋を伸ばした。
「えっと……褒めていただきありがとうございます……
ルシファーのお父さん……
今日はどんな御用で……?」
ゼリオは吹き出した。
「ぷっ……あははは!
面白いね、マコトくんは。今日は“お礼”を言いに来たんだよ。
息子を助けてくれて、ありがとう」
マコトは深く頭を下げた。
「いえ……こちらこそ。
ルシファーくんにはお世話になってます」
ゼリオは満足そうに頷いた。
「また会おう。
君はルシファーにとって“初めての友達”だ。
よろしくね、マコトくん。……そして――カリナ・ゴメスさん」
カリナはビクリと肩を震わせた。
「……な、なんだ!」
ゼリオは静かに問いかける。
「……ゴメス家には帰ってないのかい?」
カリナは顔をそむけた。
「……てめえには関係ねえだろ」
「関係、大ありなんだけどね。
……まあいい。また会おう。
ルシファー。ダンジョン踏破を期待してるよ」
その言葉を最後に、
ゼリオの姿は霧のように消えた。
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マコトは呆然と呟いた。
「……魔王って何?」
ルナの声が答える。
『魔国アビス=ノワールを統治する
魔王ゼリオ=アビスロードよ。
300年前、突如現れた存在』
カリナは剣を収めながら言った。
「簡単に言うと――人類の敵」
マコトは息を呑む。
「そんな……すごい人なんだね……」
ルシファーは申し訳なさそうに俯いた。
「……なんか、ごめんなさい」
カリナは首を振る。
「ルシファーが謝ることはない。
礼を言われただけだしな…しかし ビビった」
ルナが小さく呟く。
『……まさかストレージ内に入ってこれるとは……
万能ね、魔王は……』
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マコトは思い出したように言った。
「カリナさんの家のこととかも……言ってましたね」
カリナはソファーに倒れ込んだ。
「……まあ…… そのうち 話すよ。
でも今日は疲れた。寝る」
ストレージ内に静寂が戻った。




