第27話 ヴァルガ再臨
黒い雲が渦を巻き、空気が震えた。
その中心から、黒いドレスをまとった女神がゆっくりと姿を現す。
ルナだった。
「……あっさりやられすぎだろ、ケルン……」
その声は冷たく、どこか退屈そうだった。
討伐隊は一斉に構えを取る。
カリナが前に出て叫んだ。
「何だテメェは!」
ルナはため息をつき、手を軽く振った。
「……全く。めんどくさい」
その掌に、月光が凝縮されていく。
空気が震え、光が歪む。
ルシファーが叫んだ。
「マコトくん、あれはヤバい!!」
次の瞬間、
ルナの手から放たれた光が大地を爆ぜさせた。
轟音と衝撃が森を揺らし、砂煙が空へと舞い上がる。
ルナは退屈そうに呟いた。
「……最初から私がやれば良かったんだけどね。
ケルンも育てなきゃいけないし……」
砂煙が晴れたとき、
討伐隊の前に立っていたのは――
巨大な結界を張り、両手を広げたルシファーだった。
彼の結界が、全員を守っていた。
ルナの目が大きく見開かれる。
「私の攻撃を……防いだ? バカな……」
マコトは駆け寄り、叫んだ。
「ルシファーくん!!」
ルシファーは息を荒げながらも笑った。
「……危なかったよ、マコトくん。
アイツは普通じゃない……神だ。
逃げよう……逃げられればだけど」
ルナはルシファーを見下ろし、冷たく言い放つ。
「……なるほど。魔族か。
なぜ魔族がここにいる?」
カリナが眉をひそめた。
「……魔族? 誰が魔族だって?」
「そのガキだよ、金髪の。
ああ……そうか。
そいつが魔族だって気づいてないんだな」
マコトはルシファーを見つめた。
「ルシファーくんが……魔族……?」
ルシファーは苦しげに目を伏せた。
「……マコトくん。僕は魔族だ。
でも今はどうでもいい……逃げよう……」
ルナの声が空気を切り裂く。
「目障りだ。
まずはお前から片づけるか……魔族のガキ」
ルナが手をかざすと、
月の破片のような光がルシファーの周囲を舞い始めた。
次の瞬間――
無数の破片が月光刃へと変わり、
ルシファーの身体を一斉に貫いた。
「ルシファー!!!」
マコトの叫びが森に響く。
血が噴き出し、ルシファーは口から血を吐き、のけぞるように倒れた。
カリナは呆然とし、声を失った。
その時、指輪から怒号が響く。
『マコト! 急いで収納しろ!! 絶命するぞ!!』
「……ヴァルガ! わかった!!
残滓収納!!」
黒い霧がルシファーを包み込み、
彼の身体は霧の中へと消えた。
カリナは怒りに震え、剣を振りかざす。
「貴様ぁぁ!!
断空一閃!!」
空気が裂け、斬撃がルナを直撃した――
だが、ルナの身体は霧のようにすり抜けた。
「……なに……?」
「断空一閃!断空一閃!断空一閃!!」
全ての攻撃がすり抜ける
「くそ!!!」
ルナは冷たく笑った。
「教えてあげる、脳筋女。
私は神。
だから人間の攻撃は私に通らない」
マコトはカリナの肩に手を置いた。
「カリナさん……」
カリナは悔しさに歯を食いしばる。
「マコト……」
マコトは一歩前に出た。
「俺がコイツをやります」
狂戦士の指輪をはめた左拳を突き出し、右手を添える。
「――
ヴァルガ・ブラッドレイジ召喚!!」
指輪から黒い闇が噴き出し、
赤黒い炎が渦を巻き火柱があがる。
黒い羽根がマコトの全身を覆い、
その姿は漆黒の戦士へと変わっていった。
狂戦士ヴァルガが、
降臨した。
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