第23話 女神ルナ
ゴーレムの防御結界が砕けても、その暴走は止まらなかった。
巨体が地面を叩くたび、森全体が揺れる。
冒険者たちは四方から取り囲むが、
岩の腕が振り回されるたびに吹き飛ばされていく。
マコトは拳を握りしめ、ルシファーを見た。
「…ルシファーくん…」
ルシファーは悲しげにゴーレムを見つめていた。
「…仕方ないよ。
制御不能状態だ……
だったら、マコトくん。
ひと思いにやってくれないか」
マコトは静かに頷いた。
「わかった……俺がやるよ」
深く息を吸い、剣を構える。
黒い魔力が刃にまとわりつき、獣の爪のように形を変える。
「漆黒の爪!!」
上段から振り下ろされた黒い斬撃が、
ゴーレムの胸を一直線に裂いた。
岩の巨体が悲鳴のような音を立てて割れ、
二つに崩れ落ちる。
土煙が舞い、静寂が訪れた。
ルシファーは胸を押さえ、苦しそうに目を伏せる。
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(ケルン……ケルン……)
暗闇の中で、誰かが呼んでいる。
(ケルン!)
「うわぁぁ!!」
ケルンは跳ね起きた。
そこは、ろうそくの炎だけが揺れる薄暗い祭壇。
冷たい石床の上に倒れていた。
自分の身体を触る。
「……切れてない……?」
(私が助けた。失態だぞ、ケルン)
声が響く。
闇の奥から、ゆっくりと女が歩み出た。
黒いローブ。
深いスリットの入った黒のロングドレス。
白く整った顔に、紫のルージュが妖しく光る。
女神ルナ――
下弦の信徒が崇める月の女神。
ケルンは慌ててひざまずいた。
「ありがとう御座います、女神ルナ様……!」
ルナは冷たい瞳でケルンを見下ろす。
(……で? 次はどうする?
教会がバレたぞ……)
ケルンは震える声で答えた。
「……はい。
この町では、あらかた魔国への憎悪と死体は集めましたので……
次の町へ移ろうかと」
ルナの唇がわずかに歪む。
(では……あいつらはどうする?)
ケルンは顔を上げ、狂気を宿した笑みを浮かべた。
「教会にて返り討ちにします。
策はございます……
必ずや全滅させます」
ろうそくの炎が揺れ、
祭壇の影が不気味に伸びた。
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