第20話 討伐隊
ギルド本部の会議室は、朝の光が差し込むには重すぎる空気に包まれていた。
長い楕円形の机を囲むように、ギルド幹部たちが座っている。
壁際には他の冒険者と共にマコトとルシファーが控え、カリナは幹部席に堂々と腰を下ろしていた。
スカルナーは机に両肘をつき、低い声で口を開く。
「討伐隊作戦会議を開く…まずはカリナ…確認だか…つまり昨日のオーク暴走は――
下弦の信徒によるものと」
カリナは腕を組み、真っ直ぐにスカルナーを見返す。
「ああ、間違いない。この目で見た。
オークを操り、防護結界まで展開していた」
幹部たちがざわつく。
スカルナーは深く息を吐き、額に手を当てた。
「魔獣の暴走が頻発していてな……これで四度目だ。
まさか下弦の信徒だったとはな」
カリナは机に身を乗り出す。
「この町に下弦の信徒の教会はあるのか?」
スカルナーは少し言いにくそうに答えた。
「……西地区の外れに屋敷の廃墟があってな。
そこに出入りするフードの男を見たという情報があった。
確証は無いが……怪しい」
カリナはニヤリと笑い、親指で後ろのマコトを指した。
「ウチのマコトなら判別できるぜ。
オークを倒したのもコイツだ。…しかもコイツはわたしと同じドラゴンスレイヤーなんだぜ」
「なにぃ!ドラゴンスレイヤーだと!」
マコトは少し照れながら頭を下げる。
スカルナーは頷き、力強く言った。
「そうか……ぜひ討伐隊に入ってくれ」
その時、壁際から控えめな声がした。
「すいません……」
ルシファーだった。
幹部たちの視線が一斉に彼へ向く。
スカルナー
「……どうした?」
ルシファーは一歩前に出て、真っ直ぐにスカルナーを見上げた。
「僕も……討伐隊に入れてください」
スカルナーは眉をひそめ、カリナに視線を送る。
「カリナ、この子は?」
「旅先で保護した。戦闘能力は知らん」
スカルナーは申し訳なさそうに首を振った。
「すまんな、坊主。
ここにいる討伐隊はBランク以上だ。
報酬も発生するプロの世界だ……悪いが参加させることはできない」
その瞬間、周囲からひやかしやヤジが飛んだ。
「子どもが来る場所じゃねぇぞ!」
「帰ってミルクでも飲んでな!」
ルシファーは拳を握りしめ、しかし怒りを抑えたまま言った。
「スカルナーさん……
素手であなたに膝をつかせたら、参加させてください」
会議室が静まり返る。
スカルナーはゆっくりと立ち上がり、巨大な影がルシファーを覆った。
「……面白いな、坊主。嫌いじゃない。
だが時間が無い……今ここでやってみせてくれ」
ルシファーは深く息を吸い、
次の瞬間――力を抜いたように見えた。
だがそれは、跳躍のための溜めだった。
空気が弾ける。
ルシファーの姿が消え、
次に見えた時には――
スカルナーの顎に、横膝が突き刺さっていた。
巨体が揺れ、
スカルナーは微動だにできず、
そのまま膝から崩れ落ちた。
会議室が凍りつく。
スカルナーはゆっくりと顔を上げ、
口元に笑みを浮かべた。
「……やるな。
合格だ。一緒に来てくれ」
ルシファーは静かに頭を下げた。
マコトは胸が熱くなり、カリナは満足げに腕を組んだ。
こうして――
下弦の信徒討伐隊が編成された。




