第15話 野営の夜
◆ 野営の夜
焚き火がぱちぱちと音を立て、
夜の森に赤い光が揺れていた。
カリナは酒瓶を片手に、すでに大の字で寝ている。
「……ぐぅ……むにゃ……次は……腕立て……千回……」
「寝言まで修行なんですね……」
マコトが苦笑すると、ルシファーもくすっと笑った。
「カリナさんって、すごい人だね。
強いし、優しいし……ちょっと怖いけど」
「ちょっとじゃないですよ。めちゃくちゃ怖いですよ」
二人は顔を見合わせて笑った。
---
◆ 焚き火を挟んで
ルシファーは火に手をかざしながら、
ちらりとマコトを見る。
「ねぇ、マコトくん。
今日の戦い……すごかったよ」
「え、ああ……ありがとう。
でも、まだまだ。カリナさんには全然勝てないし」
「それでも、あんなにたくさんのゴブリンを一人で倒したんだ。
普通じゃないよ」
マコトは少し照れたように頭をかく。
「……努力はしてるかな〜。
今まで、何もしてこなかったから必死に」
ルシファーはその言葉に、
どこか嬉しそうに目を細めた。
「努力できる人って、すごいよ。
僕は……そういう人、好きだな」
「え?」
「尊敬してるって意味だよ!」
ルシファーは慌てて手を振る。
---
◆ 少年の秘密
焚き火の光が、ルシファーの金髪を照らす。
その横顔はどこか寂しげだった。
「……僕ね、あんまり友達っていなかったんだ」
「え?」
「家がちょっと……特殊でさ。
外に出ることも少なかったし、
同年代の子と話すこともほとんどなかった」
マコトは静かに耳を傾ける。
「だから……今日みたいに助けてもらったり、
一緒にご飯食べたり、話したり……
すごく新鮮で、嬉しいんだ」
「……そっか…俺もずっと友達いなくて…ボッチってやつで…」
マコトは笑った。
「ルシファー…良かったらさ…その…友達にならない」
ルシファーの目が大きく開く。
「……友達……?」
「はい。俺でよければ」
ルシファーは胸に手を当て、
ゆっくりと微笑んだ。
「……うん。ありがとう、マコトくん」
その笑顔は、どこか“人間らしくないほど”綺麗だった。
---
◆ カリナ、起きる
「……むにゃ……マコト……ルシファー……
夜更かししてんじゃねぇ……ぞ……」
寝言だった。
二人は吹き出した。
---
◆ 夜は静かに更けていく
焚き火の音だけが響く。
マコトとルシファーは、
初めて“友達”として語り合った夜を過ごした。
そしてマコトはまだ知らない。
この金髪の少年が――
魔王の息子であることを。




