第124話《ジャンコ敗走》
山のふもとには、
フレアドラゴンとの戦闘で吹き上がった光と轟音の余波がまだ残っていた。
空は赤く染まり、
山肌からは白い蒸気が立ち上り、
地面はところどころ黒く焦げている。
その異様な光景に、
民衆が次々と集まってきていた。
「なんだ今の光は……」
「山が……燃えてたぞ……」
「竜か? 竜が出たのか?」
「帝国の軍が来てるって噂は本当だったのか……?」
ざわめきは波のように広がり、
人々は山を見上げながら不安げに囁き合っていた。
その中を、
土魔導士衆に囲まれたジャンコが歩いていた。
土魔導士衆の長が機を見て切り出す。
「ジャンコ様……ここは人混みに紛れて……」
ジャンコは肩で息をしながら頷く。
「うむ……ここまでご苦労であった……」
(あんな化け物相手だ……
生きているとは思えん……
だが念のため逃げるか……
まずは港に停泊してある戦艦へ……)
ジャンコは人混みの中へ紛れ姿をくらます。
『ジャンコ様……ジャンコ様……』
ペリーからの魔導通信
ジャンコ
「ペリーか! 大丈夫か?」
『すいません……大敗しました……
怪我人はいますが、皆生きております……』
ジャンコは歯ぎしりした。
「……そうか……作戦は失敗だ……
帝国に帰って立て直そう……
飛行艇は?」
『……堕ちました……』
「……そうか……
港に来い。戦艦で本国に帰ろう」
その瞬間――
背後から声
「戦艦は無いよ」
「うわ!!!」
ジャンコが振り向くと、
ルシファーが夕陽を背に立っていた。
港の風が彼の髪を揺らし、
ゴーグルのレンズが赤く光る。
ルシファーはニヤリと笑った。
「“移”」
光が走り、
ジャンコとルシファーは港へ転移した。
ジャンコ「うわ!!」
港は静まり返っていた。
海は赤く染まり、
戦艦の影が黒く浮かんでいる。
しかし――その戦艦の上空に、
カリナが浮かんでいた。
夕陽を背に、
カリナは空中に立つように浮遊していた。
「レベルアップで苦手だった浮遊も楽勝だわ!」
火ノ大剣を構え、
炎の刃が空中で揺らめく。
ジャンコ「な……何を……」
「炎撃波!!」
火ノ大剣から炎の斬撃が放たれ、
戦艦へ直撃する。
ズガァァァァァァン!!
戦艦は真っ二つに割れ、
鉄板が悲鳴を上げながら海へ沈んでいく。
海面が赤く染まり、
蒸気が立ち上る。
ジャンコは腰を抜かした。
「……うわぁぁぁ……やめろ……」
カリナは再び構える。
「炎撃波!!」
ドゴォォォォォォォン!!
二隻目の戦艦も轟沈した。
港の空気が震え、
海鳥が一斉に飛び立つ。
ジャンコは震えながら座り込む。
マコトが薙刀を肩に担ぎながら歩いてきた。
夕陽に照らされた薙刀が赤く光る。
「どうする?
まだやるか?」
ジャンコは歯を食いしばり、叫ぶ。
「……くそ!
負けだ! 俺の負けだ!殺せ!!」
ルシファーは静かに言った。
「マコトはね……異常に優しいんだ……
命は奪わないよ……」
ジャンコは膝をつき、
震えながら呟く。
「……確かに……
部下も死んでいない……くそ……完敗だ……」
ジャンコは自分の剣を抜き、
首へ当てた。
しかし――マコトがその剣をはらい落とした。
金属音が港に響く。
うずくまるジャンコ
「………」
その時ブラッドが兵士を連れてやってきた。
夕陽を背にしたその姿は、
まるで処刑人のように見えた。
「ジャンコ。
お前は重要な 証拠 だ。身柄を拘束させてもらう」
兵士がジャンコを取り押さえ、
縄で縛る。
その横では――
ストレージから出された憔悴しきったリリアーナも連行されていた。
港には、
沈みゆく戦艦の蒸気と、
夕陽の赤い光だけが残った。
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