第九十二話 ココとチェリー
「うい~♪」
酔っぱらいがギルドに入ってきた。
酒場があるから別にいいんだけど、昼間から酔っぱらっているのは、あまりいい目では見られない。
ギルドにいた人も、アレは誰だみたいな話しをしている。
その酔っぱらいは、テーブルに着くのかと思ったら、受付に来た。
なんの用事だろう?
「いかが致しましたか?」
「ココの親父なんだが、ここに金を預けているらしいじゃないか?」
ココ? ココさん?
「そういったことにはお答えできません」
「いいじゃないか、俺はココの親父だぞ?」
「では、ココさんを連れてきてください」
酔っぱらいは、食い下がる。
「預けている金を出せ、泥棒か? お前は」
「こほん」
ちょっと咳払いをする。
「貯金は、リーダーのグレイさんが管理していますので、そちらを通してください」
「6人パーティーなんだってな、なら6分の1を下ろさせてくれよ」
話しが聞こえなかったのだろうか?
質の悪そうな人だ。
「リーダーのグレイさんが管理していますので、そちらを通してください」
「グレイはココの幼なじみでな、親子も同然なんだよ」
「リーダーのグレイさんが管理していますので、そちらを通してください」
酔っぱらいは、やれやれという風に頭を振る。
「じゃあココのツケで飲ませてくれや」
「当ギルドではツケができません」
しばらく無言で天井を見る。
そして……。
「ガキだからって、下手に出りゃあつけ上がりやがって」
恫喝に出た。
「まぁ、こわい、でも、もっと怖い人達がたくさん見てますよ」
冒険者達が、酔っぱらいを睨み付けている。
「ちっ、酒が不味くならあ、覚えてやがれ」
そう言って、ギルドを出て行った。
ココさんは、家庭に事情を抱えて居るみたいだ。
お金を稼ぎたいのは、早く自立したいからなのか。
あまり、パーティーの人には知られたくないだろう。
わたしは、取りあえず心にとどめておくことにした。
神殿から来る女の子達は、みんな連れ添ってやって来る。
仲が良さそうだ。
でも、チェリーさんはいつも1人でやって来るし、帰るのも1人だった。
どうしてなんだろう?
神殿から来る子に聞いてみることにした。
「チェリーさんって、いつも1人なんですか?」
暇そうにしている神殿の子に聞いてみる。
話し掛けられて驚いているみたいだったけど、普通に答えてくれた。
「一人でいることが多いですね、オリーブさんもそうですけど、神殿ではちょっと浮いています」
オリーブは、新米冒険者のひとりだけど、ベテランの人と組んで冒険をしている。
結構な大所帯で、戦力も強かった。
家が名家で、祖父が最高司祭も努めたことがある。
天上の歌の事件のときは、そのお爺さんに力になってもらった。
「オリーブみたいに、問題を起こしたりするの?」
オリーブは、ツンデレというか、ちょっと性格に難がある。
今はベテランの人と冒険しているからいいけど、同世代でパーティーを組んでいたら、揉め事が起きそうな子だった。
「問題は起こさないですけど……誰かと仲良く話してるの見たこと無いです」
そういう感じか。
「いじめられてるとか、無視されてるとかじゃないんですよね?」
「ち、違います、神殿でそんなことはないですよ」
神殿は品が良いようだ。
それもそうか。
でも、そうすると……個性なのかな。
ひとりの方が好きな人はいっぱいいる。
「でも冒険者になりたくないって、えらい人と、その、言い合いをしているのは見たことあります」
なんと、冒険者になりたくない感じなのか。
「神殿の若い子は、みんな冒険者になってるんですか?」
「いえ、自分で言うのも何ですけど、割としっかりした子を選んで送り出してます」
「冒険者はやった方がいいんですか?」
「はい、神殿でお勤めをしていても、中々位階は上がらないですし、偉くなるためには、いつか布教の旅に出なくてはいけません」
「そうなんですか……」
神官も色々あるようだ。
偉くなりたいのかはわからないけど、チェリーさんもなにか抱えているかも知れない。
「そのときのためにも、今から実力を付けておく必要があるんです」
「チェリーさんって、上昇志向タイプですか?」
「わかりません……お話ししたこと無いから……」
「なるほど、ありがとうございます」
チェリーさんは、悩みがありそうですね。
冒険者が嫌だとか、あるのかも知れない。
でも、今は楽しくやっているように見えるけど……。
ちょっと注意してみるように、覚えておいた。




