第九十一話 ゴブリン調査3
果樹園の森の入口近くまで来ると、カーツ君が時計を見る。
「40分で3匹見た」
「うん」
「なら60分で何匹だ?」
カーツ君がココを見ると、驚く。
「なんでアタシ!?」
「いやいや、ちゃんと60分間探そう、さっきとは違う方向に行って」
グレイ君は、正しいリーダーだ。
「はぁ、はぁ、はぁ」
息を切らせているアーレイの背中をさすっている。
「誰かー!!」
そのとき、遠くから声が聞こえてきた。
切羽詰まった声だ。
「SOSだ! 行こう!」
グレイ君が、真っ先に飛び出す。
みんなも、急いで声の方に向かって行った。
すると、4人組みの同じような年格好のパーティーが、6匹のゴブリンと戦っている。
前衛が怪我もしていて、劣勢だった。
「援護します!」
グレイ君が、前衛とゴブリンの間に割って入る。
「群れとは戦うなって言われてたのに!」
カーツ君が自分を戒めるように叫ぶ。
「すまん! 1匹だったから手を出したら仲間を呼ばれた!」
4人組みのリーダーらしい、前衛の男の子がそう言う。
「ギャーッ! グアー!」
その間も、ゴブリンは声を上げている。
「仲間がもっと来るんじゃないの?」
チェリーが怪我をしている前衛の子に、ヒールをかけている。
「みんな逃げよう!」
ココが、逃げる算段をし始めた。
逃げる判断は、結構早い。
「入口の洞窟まで行こう! 出口には兵士のおじさんがいる!」
「無理、もう走れない……」
「アーレイ!」
アーレイが、ふらふらと倒れた。
ゴブリンにダメージをもらったのではなく、走り疲れたみたいだ。
「アーレイは、私がおんぶしますよ」
シールズがそう言う。
「あとひとつのパーティーは大丈夫か!?」
「そうだ、もうひとつパーティーがいるはずだ!」
カーツ君がグレイ君と話しをする。
「取り残されたら危険じゃないの?」
チェリーさんも、前衛に入っていった。
「もうひとつのパーティーを置き去りにできない、この6匹は倒そう」
それがグレイ君の判断だった。
「みんな頑張れ! ここで消耗品も全部つかえ!」
「お前も頑張るんだよ!」
カーツ君がココに突っ込みを入れる。
盾を持っているグレイ君とチェリーさんと、もうひとつのパーティーの前衛が前に出る。
アイティラさんも、その後ろから槍の長さでゴブリンを突いた。
「我は空の子、群雲の、轟く雨の天空に、光薙ぎ撃つ……♪」
シールズが歌を歌い始めた。
すると、武器に雷の属性が付与される。
「すごい、いける!」
「エナジーボルト!」
「マジックアロー!」
後衛に魔法使いがふたりいるが、出し惜しみ無しで魔法を使い始めた。
弓は2人、前衛と被らないような位置取りでゴブリンを狙う。
「当たった!」
「くそっ、俺も!」
ココが弓を命中させ、喜んでいると、隣の子も頑張る。
マジックアイテムの効果か、アイティラさんはゴブリンを全く寄せ付けない。
そして……。
「ぐえええええっ……」
数分もすると、ゴブリンを全滅させていた。
「や、やった」
「勝った! 勝ったぞ!」
みんな喜んで、天を仰ぐ。
でも、カーツ君はそれに異論を挟んだ。
「駄目だ、群れには手を出すなと言われて、逃げるときに逃げないで、今回は反省点ばかりだ」
「すまんな、迷惑をかけたよ」
「いや、お互い様だよ」
リーダー同士で手を取っている。
そこに、もうひとつのパーティーが現れた。
「おーい、集まってどうした? わっ、ゴブリンじゃないか」
死んでいるゴブリンを見て驚いている。
「もう退避しよう、結構数が居る」
「俺たちも、3匹見かけて逃げてきたところだ」
「よし、逃げよう」
そうして、みっつのパーティーが、ギルドに帰ってきた。
「どうでしたか?」
「駄目です、ゴブリンの群れと戦いました」
「駄目だと言ったのに……」
見ていたけど、仕方が無い部分もあるか……。
仕方が無いと言って、死んでいたら元も子もないんだけど。
「3パーティーで60分間、みかけたゴブリンは12匹です」
「結構居ますね、わかりました、では、報酬をお渡しします」
さっそく、ゴブリン退治の依頼書が掲示板に貼られる。
ベテラン達が、どうするか、みたいな話で盛り上がっていた。
「果物は、桃が高いです、五個で銅貨10枚ですね、リーフ鳥は可食部が少ないので控えめですね、一羽で銅貨10枚お支払いします」
「アイティラさんはきらきらした?」
「しました、こんなの初めてです」
アイティラさんとココは仲が良さそうだ。
「えーと、6人で分けるで、いいのかな?」
「いいよ」
シールズさんが了承する。
後で報酬を払わないとね。
そして、グレイ君達はテーブルに座ると話し始めた。
「半分貯金して、稼働1時間半くらいでこれだけ稼げた」
「まだ日が高いよ、もっと狩りに行こう」
「ふぇー」
「アーレイも体力の訓練になりますね」
今朝、ピラミッドの中に取り残されていたばかりなのに、すごいバイタリティだった。
まだ冒険に行くとは……。
「やっぱり、依頼かクエストが美味しいな」
「なにかいい依頼がないか見てみよう」
ココとアイティラさんは、手を繋いで掲示板を見に行った。




