第八十九話 ゴブリン調査
「ただいま戻りました」
王様は、まだ謁見室にいた。
何事か、領主様と話していたようだ。
「首尾はどうじゃ?」
「半分成功で、半分失敗です」
「なんじゃそれは」
「いい報告と悪い報告があるというやつです」
「では、良い報告から聞こうか」
「古代都市の兵力を貸して頂くことに成功しました」
「まことか!」
王様が、ものすごく喜んでいる。
いや、悪い報告も聞いて欲しいんだけど……。
「悪い報告も聞こうか」
領主様がわたしに、話を促す。
「余はそんな話、聞きとうない」
「しかし、聞かなければなりません」
「嫌じゃ! どうせロクでもない話じゃ!」
領主様は頭を抱えている。
なので、わたしは勝手に話し始めた。
「直接交渉したわたしにということで、わたしが兵を貸してもらいました」
「お前に!? お前が借りてどうする!」
そう言われましても……。
「又貸しはできるのか?」
「よこしまな心があると駄目らしいんで、王様次第かと」
「ムムム!」
王様が唸っている。
「チャレンジしてみますか?」
「失敗したらどうなるのだ?」
「わかりません」
「ムムムム!」
「陛下、お止めになった方がよろしいかと、1000年前の常識や道徳が、今と同じとは限りません」
「し、しかし、竜王軍と戦えるだけの戦力が!」
「お命が一番大切かと……」
「ムムムムムムムム!」
結局、王は結論を出せなかった。
ギルドに帰ると、外で鍛冶師がピラミッドを見ている。
「どうですか、あれは」
「叩けるかなぁ」
なんか頼もしいことを言っている。
「加工できるんですか?」
古代都市軍の強さは、あの装備品の力によるところも大きい。
もしも加工できるのなら、とんでもないことだった。
「多分、混ぜればいけると思う、ダマスカス綱という製法があって、それならいけそうだけどなぁ」
わたしは、ギルドにいるはずのアイティラさんを探す。
みんな事情を知らないので無視しているけれども、やんごとない御方だ。
「いた!」
アイティラさんは、みんなとご飯を食べている。
「とても美味しいです」
「そうでしょー、このソースがねぇ」
グルメリポートは後でいい。
今はこっちが優先だ。
「お食事中すみません、アイティラさん、あの金色の建物素材はもらってもいいんですか?」
「どうぞ」
なんでもないことのように、そう言った。
もう滅びた王国だ、物欲も、隠す知識も秘宝もないだろう。
「ありがとうございます!」
わたしは、シールズに目で合図する。
まだ残って、一緒に冒険してという合図だ。
シールズは、ちょっと困っているようだけど、OKサインを返してくれた。
悪いけど、シールズにはパーティーに残ってもらおう。
若い子達だけでは、ちょっと心配だ。
下水道に入り浸って、みんなレベルは3まで上がっている。
まだ、油断が始まるレベルでもない。
大丈夫だとは思うけど、一応だ。
わたしは外に出て、鍛冶師に教える。
「あの金属、もらってもいいそうです」
「ほー、じゃあ、ぼちぼちやってみるか」
「はい、お願いします」
鍛冶師は道具を持ってくると、ピラミッドに採掘に出かけた。
アイティラさんのいるパーティーは、食事が終わると冒険に行くみたいだった。
こんな来てすぐ行くのかと思うけど、アイティラさんの希望らしい。
「果樹園の森でゴブリンを見かけたという情報があります、本来果樹園の森にゴブリンはいないので、調査をお願いします」
「わかりました」
リーダーのグレイ君が頷く。
「ゴブリンは退治しなくて良いですからね? 特に、群れは非常に危険です。絶対に手を出してはいけません」
「わかりました、群れには手を出さない」
「果樹園の森を一時間ほど歩いて、ゴブリンを何匹見かけたか、1匹も見かけなかったら、更に一時間歩いてください」
「オッケーオッケー」
なんか、気が大きくなっているのか、ココが胸を叩いていた。
「それで依頼達成、銀貨100枚なんですよね」
「そうです、ゴブリンは食べられませんが、森の果物やキノコ、食べられる獣なんかは買い取りします」
「わかりました」
グレイ君がみんなを見てから頷く。
異論はないようだ。
「他にも、同じ依頼で2組行きますので、くれぐれも二時間以上は滞在しないように」
「わかりました」
「では、お願いします」
不安だ……。
アイティラさんが死んだら、古代都市兵が錯乱するとかないよね。
わたしは、装備のないアイティラさんに、マジックアイテムを渡していた。




