第八十五話 新米パーティーの初陣3
「お帰りなさい、大丈夫でしたか?」
わたしは、見ていたことなんておくびにも出さずにそう言う。
「みんな無事でした、なんとか5匹倒してきましたよ」
ちょっと照れくさいみたいに、グレイ君が言った。
「では、回収したジャイアントラットは、モルソー君に渡して、解体してもらってください」
みんなで、マジックバッグに入れたジャイアントラットを、解体所に出す。
「あ、ジャイアントラットは処理しないといけないから、こっちに出して」
獣は全般そうだけど、ジャイアントラットは特に、血に毒がある。
病気を持っていたりするのも、鳥や猪だってそうだ。
でも、ジャイアントラットは特に処理が必要だった。
ハダン君が、メモを渡している。
解体所で出した肉なんかは、こういうやりとりをしていた。
「出してきたよ」
「はい、ジャイアントラットが1匹で銀貨10枚のクエストだから、合計で50枚、ジャイアントラットの肉と皮が一匹銀貨10枚だから、全部で銀貨100枚です」
「おおおおおっ」
銀貨100枚と言えば、中々の大金だ。
大人のお給料の半分か、3分の1くらいにはなる。
それをものの数時間で稼いだのだ。
「私はギルドからお金が出てるから、5人で分けていいよ」
シールズが、そう提案する。
もらってもいいと思うんだけど、まぁ、それでもいいか。
「じゃあ、銀貨20枚ずつだな」
「死ぬ思いして、銀貨20枚かー」
ココが、嬉しいやら、残念やら、複雑な声を出した。
でも、80%くらいは喜びの声だ。
「あの、みんな聞いて」
グレイ君が呼び掛けた。
みんな真面目に聞く姿勢を見せている。
「まず、パーティーで貯金をしたいんだ」
「貯金~?」
ココが嫌そうな声を出した。
嫌なんだろうけど。
「それで、みんなの装備品なんかを計画的に買いたい」
「じゃあ、銀貨20枚は……」
「そのとき得られた報酬の、半分を貯金しようと思うんだけど」
「そうだな、そうしよう」
カーツ君が賛成した。
チェリーさんも頷いている。
アーレイは、うんうんと頷いていた。
お金持ちだったからね、国王の私生児で、天上の歌の幹部が兄だったんだから。
「それと、消耗品を使い切っただろう? それの補充とか、今日は良いけど、装備の修理とかもお金がかかる」
「え、じゃあ……」
ココが不安そうな声を出す。
「それはどうする? 貯金から出した方がいいと思うんだけど」
カーツ君が、そう提案した。
損だから自分の消耗品を使わない、なんて事態は避けないとね。
「貯金して何を買うのっ!」
ココが爆発する。
お金に執着があるみたいだ。
冒険に関しては、いい動機付けなんだけどね。
「まずは、ココの武器からだ、直接戦うのが苦手そうだったから、ショートボウを買おう」
「いいな、そうしよう」
「いいよー」
「え、あの……」
ココが戸惑っている。
「チェリーは装備が良いから、しばらくお預けだけど良いかな」
「私の私物じゃないわ、神殿の物よ」
「うん、そうしたら、その次はアーレイの楽器がいいと思う」
「うん」
アーレイが頷いた。
「詩は楽器があると良いんだろう?」
「おーけー」
「アーレイは楽器の練習頑張れる?」
シールズに確認されるけど、それも頷いた。
「うい」
こういうマネージメントも、リーダーの仕事だ。
こういう面を評価しての、グレイ君のリーダーだからね。
「じゃあ、銀貨50枚お預かりします」
グレイ君の冒険者証に預かり金を登録する。
ギルドは、お金を預かる仕組みもあった。
「銀貨一枚は、銅貨10枚で渡した方がいいですかね」
「そうしてください」
薬草採取で大量に必要な銅貨がいっぱいある。
「じゃあ、みんなでココの弓を見に行こう、いくらの買うかみんなで相談だ」
「うううううっ、よし、行こう!」
ココは吹っ切れたようだ。
みんなの財産という感覚は、早く身につけないとね。
「それじゃあ、中古の品を売っているいいお店を紹介しますね」
「そんなお店があるんですか!?」
「はい、まだ未使用の新古品なんかが出ていることもありますので、お得ですよ」
「やったー、ありがとう!」
「これを毎日つづければ、すぐに一人前の冒険者になれる!」
「あ、ジャイアントラットのクエストは、今週までですから、その後は、肉代だけになりますよ」
「……来週のクエストは?」
「まだわかりません」
「来週のことはさ、来週考えようよ」
みんな、なんとも言えない顔になるけど、その後笑う。
「そうだな、ココもたまにはいいこと言う」
「カーツ、それは酷いんじゃない?」
そうして、またここに、冒険者のパーティーが誕生した。




