第八十三話 新米パーティーの初陣
「では、下水道のジャイアントラット討伐ですね」
今日は、ギルドで訓練していた若い子のパーティーが、旅立つ日だった。
初めての冒険だから、引率にシールズが付いてくれている。
シールズは、詩という強力なスキルを持っていて、コールゴッドとか使えるんだけど、冒険者としては中級くらいの腕前だ。
アーレイに詩を教えてくれているから、丁度アーレイが旅立つパーティーに参加してもらっていた。
他のパーティーメンバーは、戦士、盗賊、僧侶、魔法使いというオーソドックスな構成だ。
アーレイは、天上の歌の事件のときにギルドに入った子で、珍しい呪詛師だけど、とにかく体力がない。
不安だけど、いつかは送り出さなくてはいけなかった。
みんなに最低限の装備をプレゼントする。
「わー、鎧格好いいですよ」
戦士のグレイ君が照れている。
戦士の男の子に、盗賊の女の子。
魔法使いは、以前のミクロリニアの侵攻で魔力を得たカーツ君。
あとは、アーレイ、神殿の女の子、シールズという布陣だ。
戦士のグレイ君は弱気だけど、リーダーに任命していた。
リーダー適正はあると思う。
盗賊のココは、ちょっと楽観的で陽気、悪く言うとお馬鹿だけど、良いムードメーカーだ。
カーツ君は頭が切れて真面目、パーティーのブレーンだ。
神殿の子、チェリーはいつも不満そうにしている子で、なにかわけありっぽい。
「今日一日、わずかな幸運に恵まれますように」
運を操る呪詛師のアーレイが、パーティーにバフをかける。
「これで、幸運になったの?」
「少しだよ」
「少しでもありがたいよ、初めての冒険なんて、自信ないから」
リーダーはおどおどしているけど、他のみんなはやる気十分といった感じだった。
「アタシたちも、早く黄金都市で稼ごうよ!」
ベテラン達は、黄金都市の話題で持ちきりだ。
稼げるダンジョンとしての地位を確立していた。
「無理だよ……悪魔が出るんだから、それを倒せないと」
「なんでアンタは、そんなに弱気なのよ!」
戦士のグレイ君と盗賊のココさんは、幼なじみらしい。
息がぴったりと合っていた。
「目標があるのは良いことですよ、でも、黄金都市はまだ無理ですね」
わたしは、一応釘を刺しておく。
変な気を起こさないようにしないと。
「馬鹿なこと言ってないで、今日は初冒険だ、下水道のジャイアントラットの討伐だぞ」
カーツ君はクールで真面目だ。
パーティーのブレーンらしさがある。
「下水道なんて不潔だわ」
チェリーさんは、やはり不満があるようだ。
神殿は、このことを理解してるんだろうか?
わかって送り出しているなら、試練みたいなものだろう。
「でも、誰かがやらなくちゃいけない仕事です、ジャイアントラットが増えると、病気が増えたりもします」
「わ、わかってるわよ……」
クエストの意義みたいなところを説明すると、チェリーさんは引き下がる。
やっぱり、ちょっとふてくされている、みたいな感じなんだろうか?
「下水道で良かった……何日も歩く冒険は、まだ無理」
「アーレイも、体力付けないとね」
「うん」
毎日剣を振って、大分、体力が付いてきたけど、冒険ではどうだろうか。
実戦は疲れると良く言うし。
「ジャイアントラットは、病気を持っているので、解毒剤は必ず持っていってくださいね」
「解毒剤なんて要らないよ、重いし割れるし」
盗賊のココが、早速楽観的になっていた。
「駄目です、死んでしまうんですからね?」
でも、他のみんなはちゃんと解毒剤を持っていた。
うーん、心配だなぁ。
「シールズ、よろしくお願いしますね」
「お任せを、ちゃんと導いて見せますよ」
ジャイアントラットの討伐だからと言って、油断していると全滅したりする。
シールズには、頑張ってもらいたいところだった。
「さあ、出発しよう!」
ココの合図で、みんなが冒険に出発した。
そろそろかな。
さっきのパーティーが下水道に入った辺りで、わたしはシールズに同調した。
下水道は暗い。
ココが、ランタンに火を灯す。
そして、先頭を歩こうとしてグレイ君に止められた。
「こら、先頭に立つな」
「下水道に罠はないから、グレイが先頭で良いですよ」
シールズが助言してくれる。
あまり口出しすると、経験にならないから必要最低限くらいにするだろう。
「アタシが前を歩きたいの!」
「駄目だよ、危ないって……」
「ネズミなんて、大丈夫だよ」
ココは自信満々だ。
どこからその自信が来ているのか、不明だけど……。
「ネズミじゃない、ジャイアントラットだ、見たことあるのか?」
ブレーンのカーツ君も釘を刺した。
ちょっと危険な楽観だと思ったんだろう。
「見たことあるよ、猫よりも大きいネズミ、何食べてんだろうね」
「それはドブネズミだ、ジャイアントラットはもっと大きい」
カーツ君が呆れている。
慎重だから、冒険の前に、ジャイアントラットを調べ尽くしているだろう。
逆に、ココは全く調べてないのが見て取れる。
「ココは馬鹿ね、ネズミじゃなくてモンスターなのに」
チェリーは、あまり関心がないようだ。
これも、楽観のうちなのかも知れない。
「はぁ、はぁ、意外と臭くないね、もっと酷いところだと思ってた」
アーレイは、早くも息が切れている。
何回も冒険に行くうちに鍛えられていくだろう。
「この前の、黄金都市までの道を作る工事で、大分整理されたらしいよ」
グレイ君は、そういうちまたの噂に詳しいみたいだ。
ちょっと弱気だけど、コミュ力は決して低くない。
近所の噂とかも、ナチュラルに入ってくるんだろう。
「ねえ、黄金都市、行ってみない?」
また、ココが余計なことを言っている。
「駄目に決まってるでしょ、ジャイアントラットも倒したことないのに、悪魔なんて絶対に無理です」
シールズが止める。
でも、他のみんなもココの甘言に惑わされたりはしなかった。
「黄金都市の通路の方には行かないぞ」
「ちぇー」
新米パーティーは、下水道の奥に進んでいった。




