第八十二話 竜王の侵攻
ちょっと短いスパンでお届けできました。
今回は16話です。
それでは、お楽しみください!
ミクロリニアの侵攻が終わって、半月ほどが経過した。
その戦いの傷は癒えているが、またすぐに別の戦いが始まる。
「おい、噂を聞いたか?」
今、世界は大動乱のただ中だった。
「竜王軍がこの街を通るってよ」
「うげ」
モルソー君が、変な声を出したわたしを見ている。
咳払いして誤魔化すと、サーリャのところに行った。
竜王とは、竜達の王。
強いから、勝手し始める竜達の取りまとめ役として作成したんだけど、竜王も動き出したのか。
いよいよ、動乱も大詰めかも知れない。
竜王の軍を破るとしたら、同格の魔王軍だけだろう。
まぁ、でも、それはわたしの時代だった頃の話だ。
今頃、今のダンジョンマスターがろくでもない強力なユニーク個体を作っているかも知れない。
ユニーク個体とは、真祖や竜王や魔王、サーリャ、生まれ変わってしまったけど、トイレイシーなんかがそうだ。
もう大変なポイントが必要だから、7年じゃ、まだ1~2体しか作れていないだろう。
ダンジョンマスターの居所がわかったら、サーリャとトレイシー、それにルルーナとフランセス、エリシャ……後は、真祖は来てくれないかなぁ、もう何人か欲しい。
行き当たりばったりじゃなくて、計画的に人員を揃えたいところだった。
それと装備だ。
わたしのコレクションから出してもいいけど、ダンジョンマスターも相当な装備を調えているだろう。
なにか、イノベーションを起こしたいところだった。
そんなことを考えていたある日、竜王が通ると言うことで、アンデマンドに国王様がやってきた。
天上の歌の一件で、この王様がモンスターを司る神を創造したがっている、というのはわかっている。
なんだか、一大事になってきていた。
「でも、竜王はどうしてこんなところを通るんだろう」
「ヘグルマンドは、マスターに挨拶に来たいのでしょう」
「え? なんで、わたしのこと知ってるの?」
「ディーンエヴェンダーで旅をしたときに、少しだけですが、ヘルグマンドのところに寄りました」
以前、天上の歌の事件のときに、ラドクリフっていう男の土着の神様のルーツを探りに、サーリャが旅をしたことがあった。
そのときに、竜王ヘルグマンドに会ったらしい。
「じゃあ、わたしのところには来ないでって、言ってきて」
ただのギルドの受付嬢に、竜王が挨拶に来るというのはおかしい。
色々面倒だから、そんなことにはなって欲しくなかった。
「それは無理なのでは?」
「無理って……」
サーリャが、いたって真面目な顔でそう言う。
「ヘルグマンドはマスターを慕っていますから」
わたしは、モンスターに好かれる。
そういう体質なのだ。
竜王は、モンスターじゃないけど、そういうことだろう。
「でも、国王とかいるのに、わたしのところに来たらおかしいでしょ?」
「では、領主の城で会いましょうか、マスターは領主に竜王と会いたいと、褒美をねだればよいかと」
「う、うーん」
何か褒美をくれるという約束になっている。
もっと違うことに使いたかったけど、まぁ、いいか。
ギルドに直接来られるよりは、全然良い。
そして、竜王が到着した当日。
街の中が騒がしくなっていた。
屈強な竜王軍を一目見ようと、街の人達が中央通りに集まってきたのだ。
外には、ドラゴニュート達が天幕を張って野営の準備をしている。
その中には、小山ほどもあるドラゴンが何匹もいて、勇壮さに磨きをかけていた。
「領主様に取り次いでもらいたいのですが」
城の門番に、そう伝える。
「今日は忙しい、別の日にしろ」
「今日でなくては駄目なのです」
わたしが、領主様と懇意にしていることは知っているだろう。
門番は迷った末に、わたしを領主様のところに案内してくれた。
「なんの用だ?」
「以前、褒美をくれるという約束でしたが、竜王様との面会を希望します」
「竜王殿と? 会ってどうする?」
「まぁ、色々ありまして……」
詳しい話はできない。
でも、領主様は少し考えた後、了承してくれた。
「ただし、国王陛下と竜王殿、俺がいる謁見室で会ってもらう、妙なことになっては困るからな、それでいいか?」
「できれば、竜王様とふたりきりで会いたいのですが……」
「なぜだ?」
「ううっ……」
答えられない。
でも、答えなくちゃいけないだろう。
「竜王様とは、面識があるのです。ですので、国王陛下や領主様とは別にお会いしたいです」
「ならば尚更だな、知らぬところで妙な話をされても困る、謁見室でなら面会を許そう」
「ああぁ……」
わたしは、渋々だが、その条件を了承した。
謁見質に行くと、国王陛下が領主様の座る椅子に座っている。
王が座れば、それは全て玉座なのかな?
まぁ、いいんだけど。
この人が、アインザックさんとアーレイのお父さんなのか。
初めて見たけど、結構愛嬌のある顔をしている。
アインザックさんもアーレイも美形だから、母親似なんだろう。
領主様が陛下のとなりに立つ。
「その娘はなんじゃ?」
国王陛下は、わたしを不思議そうに見ていた。
ギルドの制服だし、この場には不釣り合いに映ったのかも知れない。
「は、役に立つ娘にございます」
また、ざっくばらんな説明を……。
「役に立つだと?」
「は、じつは……」
なにやら内緒話をしている。
自分のことを話されていると思うと、居心地が悪い。
「娘、竜王殿との謁見を許す、邪魔にならないようにそこに立っておれ」
「はい」
そしてしばらくすると、扉が開いた。
「竜王ヘルグマンド様御入来!」
衛兵が高らかに声を上げる。
そこには……見知った赤髪の青年が立っていた。
わたしと目が会うと、竜というより別の生き物のように飛んでくる。
「コットン様、お久しぶりでございます」
ヘルグマンドは、わたしの前に跪いた。
国王陛下も、領主様も、みんな驚いている。
領主様には面識があると伝えておいたけど、まさかこうなるとは思っていなかっただろう。
でも、わたしは、こうなるから、ふたりきりで会いたかったのに……。
「お久しぶりです、竜王ヘルグマンド様、元気なようで安心しました」
「我は、いつも元気です、いや、心配しましたぞ」
「今の立場があるから、あんまり話し掛けないで」
国王陛下と領主様には聞こえないように、内緒話をする。
ヘルグマンドは、心得たとばかりに立ち上がると、国王陛下の方に行った。
はぁ、なんとかなったかな。
不自然に思われたと思うけど、傷は浅い。
「おお、竜王殿、長旅でお疲れでしょう、こちらに座ってくだされ」
用意されていた玉座の隣の席を勧めた。
でも、ヘルグマンドは興味なさそうに断る。
「いや、結構、長居するつもりはない、街の外に軍を留める故、挨拶に来たに過ぎん」
「いえいえ、今日はもてなさせて頂きますぞ」
「いや、いい、我に会いに来る者は、皆願いを持っている、国王の願いを聞こう」
そうなのだ。
竜王に会いに行くのは大変だけど、願いを叶えてくれるというのは有名な話だった。
「…………」
国王は、神の創造を諦めていないだろう。
竜王の力を借りようとしているんだ。
「うむむ……それでは、失礼ですが、竜王殿は、竜の勾玉をおもちだとか」
「持っているぞ、それがどうした?」
「ぶしつけですが、それをお貸し願いたいのです」
「何に使う?」
竜の勾玉といえば、国宝クラスの逸品だ。
「そ、それは……そう、この戦乱の時代を終わらせるために使います」
「話が見えんな」
国王陛下が言い難そうにしている。
だから、わたしが教えてあげた。
「国王陛下は、モンスターを司る神を創造したいのです」
「なに!? 神の創造だと!?」
ヘルグマンドが驚いている。
「こ、小娘、どこでそれを……い、いや、それはあくまで一時的なこと、ワシはこの戦乱を終わらせたいのです」
「モンスターを自在に操って、お前の国が勝利すると言うことか」
ヘルグマンドは考えている。
自分も出陣してきたのだから、この動乱に参加する気は満々だろう。
「我には決め切りませぬ、コットン様、ご采配を」
「なんですと!」
国王陛下と領主様が、また驚いていた。
竜王様が、ギルドの受付嬢に采配を仰ぐというのは、異常な事態だろう。
でも、もう、ハッキリ言ってしまおう、
「駄目に決まってるじゃん」
モンスターを戦争の道具にするなんて許せない。
そりゃ、戦乱は終わって欲しいけど、なんでもいいってわけじゃない。
「こ、小娘が、私に意見するか!」
国王陛下が、怒って立ち上がる。
でも、それをヘルグマンドが遮った。
「貴様、コットン様に害を加える気か」
「あ、いや、それは……」
「もしコットン様に何かあったら、我が軍団をもって貴様の国を蹂躙してくれる」
「ひいっ、それはお許しを!」
領主様は何も言わない。
内心反対なのかな?
「竜王殿は、この後、どうするおつもりですかな?」
領主様は、話を切り替えるようにそう言った。
それは、知っておきたいのだろう。
「軍団を率いて、北方を平定する」
「つまり、第三勢力になるということですな」
「そう言い換えても良い」
「しかし、竜王殿が動くとなれば、魔王も黙ってはいないかも知れません」
「なに、そうなれば雌雄を決するのみ」
魔王も、わたしが作った子だ。
できれば戦って欲しくないなと思いながらも、今の立場では何も言えなかった。
本日は4話投稿します。
その後は一日一話ずつ投稿していきますので、よろしくお願いします!




