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57 死闘

 ネクロズガカの色を吸う器官が形になったものと、俺達は戦い続けた。流石は、誰も倒すことができなかった災厄というべきか。俺達の消耗も激しかったが、最後には勝ち切った。


 器官が砂のようになり、それは触手側にも連鎖していく。次元のヒビから元の世界に這い出ていた方まで、崩壊が進んでいった。


 器官に溜まっていた色は解放されず、ネクロズガカの大きな肉体の方に移動していった。


 さらに、ネクロズガカ本体に異変が起き、裏の世界にあった肉体全てが蠢き、次元のヒビの方に移動していった。


「外の世界に出るつもりだな!」

「なら、あたし達も出よう!」

「へっ、いよいよネクロズガカも本気になんのか!」

「元の世界で決戦ですね」


 俺達はその場を飛び、飛行船にも連絡した。子竜の力を借りて次元に穴を開け、外の世界に出る。元の世界は、もう夕焼けだった。


「ネクロズガカが変身していく」

「黒い竜……」


 あれがネクロズガカの真の姿なのだろうか。物凄い闇のパワーだった。魔法少女特攻の触手は器官ごと破壊したつもりだが、やはりまだ何を仕掛けてくるか分からない。引き続き、俺達で倒す!


 ネクロズガカが近くの小型船の方を向き、黒い炎を放った。チーム・ユーラルとチーム・グレイスの一部メンバーが乗っている。


 俺とリゼがそれに反応し、高速で移動して、まずリゼがグレイス・キルシェの肩を抱いて姿勢を低くしつつ青い障壁を張り、俺が黒い炎を弾いた。


「紅一(こういち)!!」

「ハート、やったんだな」

 倒れているガーベラを横目に、俺はユーラル・ハートに声をかけた。


「リゼ……」

「キルシェ先輩! ガーベラ、倒せたみたいじゃん!」

 リゼもキルシェ先輩に声をかける。


「お前達、まさかここまでやるなんて……」

 ガーベラは頭から血を流して倒れている。


「リゼ、紅一君も。傷だらけじゃない……」

「先輩達だって。それにこんなもん、全部終わらせて帰ったらすぐ治りますよ」

「ええ。これで……、最後だ……!!」

 ダリヴァーとハヤテがネクロズガカに攻撃を仕掛けたのを見て、俺とリゼもそちらに飛んで攻撃を始めた。



    ◇◇



 ユーラル・ハート達は、いったん導き手(ビーコン)の船に移動した。仲間達の無事も確認し、状況を整理する。


「紅一達が、ネクロズガカの触手を破壊してくれたってことですよね」

「そうね。信じられない……、物凄い力……」

 グレイス・キルシェが戦場を見る。


 黒い竜の姿のネクロズガカの位置に、赤青黄紫の闇の力が炸裂している。青い力はフィールドも形成しており、その一帯の闇を根こそぎ吸収しているようだった。


 青いフィールドの中心にいるのはリゼだ。いつも飄々としていた少女は、集中した顔をしており、血を流しながら戦っている。


 リゼが右手に持つ杖や左手から繰り出している青い攻撃は、魔法少女形態ユーラル・アクアの時とは比べ物にならない威力だった。


「リゼ、なんて強さだ……!」

「まったく、一体どこの世界に変身を解いた方が強くなる魔法少女がいるんだよ!」

 理人(りひと)とユリールが呟いた。


 ユリールはリゼの事も才能ある魔法少女としてスカウトしたのだ。だからリゼの強さ(・・・・・)が少し悔しかった。


「紅一……」

 ユーラル・ハートは幼馴染の少年を見る。彼もまた、とんでもない力を発揮している。それだけのパワーを使っても闇に堕ちていないのは、リゼが発している青いフィールドの効果なのだと、ハートにも理解できた。


 事情はどうあれ、リゼは紅一と向き合った。ハートとは違う道を選んだ。そして彼らは、今、過去からの因縁にケリを付けようとしている。


 手助けが必要だったとしても、紅一が繰り出している凄まじい威力は、紅一の本来の力だ。その裏に、彼の一族が受け継いできた執念があったことを、ハートはまだ知らなかった。



    ◇◇



 ランク1位のチーム・ブレイブは結社No.1ブロードと戦っていた。紅一達がネクロズガカと戦い始めたのは当然見ている。


「ダリヴァーめ! 本気でネクロズガカを倒す気なのか!!」

 ブロードはネクロズガカと紅一達が戦っている位置に移動しようとした。


「行かせないよ」

 しかし、チーム・ブレイブがそれを阻止する。


「魔法少女が闇の勢力を肯定するのか!?」

「優先順位は、災厄の方が上」

「あなたはここで私達と遊んでなさい」

「貴様ら……!」

「それに、あなた一人が行ったところで、ダリヴァーだけだったとしても勝てないでしょうに」

「なに……?」

「色々と分かってきた。あなたがNo.1なのは結社のリーダーだからで、純粋な戦闘力ならダリヴァーの方が上なのでしょう? 結社を抜ける予定があったからNo.1を与えるわけにはいかなかった。そんなところかしらね」

「だから、何だというのだ!」

「ダリヴァーだけならネクロズガカに勝つことはないと高を括っていたようだけど、あてが外れそうね」

「認めよう! だから、どけ!!」

「絶対にここは通さない!」


 ブロードとチーム・ブレイブの戦いはそのまま続いた。ランク2位のチームも一時は合流して戦っていたが、既に全員がダウンしている。


 これまでも決着がついていない因縁の戦いだ。しかし、チーム・ブレイブは、紅一達がネクロズガカを倒すまでの時間稼ぎでもいいと考えている。だから、体力を温存しつつ長期戦に持ち込もうとしていた。



    ◇◇



 魔法少女達は、結社アルコの放った強化魔物の群れと戦っている。そこには結社のNo.4やNo.6も混じっていた。


 No.1の相手はチーム・ブレイブに任せ、No.3のガーベラは先ほどチーム・グレイスとチーム・ユーラルが破ったことも把握している。


 突如出現した4人の闇使いがネクロズガカと戦い始めたのも認識していたが、青い光を放っているリゼのことを知っている魔法少女も多い。紅一がチーム・ユーラルにいたことを把握している者もいる。


 闇使いが魔法少女の逮捕案件だということを承知の上で、彼女達はネクロズガカとの戦いをリゼ達に任せた。


 封印のことを知っている者は少ない。それでも、ネクロズガカが並大抵の敵ではなく、自分達では勝てないことを認識できたので、明らかな強さを発揮している者達に賭けたのだ。


 魔物達との戦いの中で、余裕のできた者はネクロズガカに接近し、攻撃を仕掛けもした。効いている様子はない。それでも、少しでも攻撃をしようとした。


 ネクロズガカは自身を攻撃する魔法少女に向けて、灰色のビームを放った。近くを通り過ぎただけでも物凄いダメージが魔法少女に入った。


「うあっ!!」

「な、なんて威力!?」

 ビームに掻き乱され、魔法少女達が混乱する。これほどの攻撃力を持った相手と戦っている4人の闇使い達に、魔法少女達は驚きとともに戦慄も覚えた。


 しかし、ネクロズガカの注意がそれた瞬間を狙って、紅一やリゼの攻撃がネクロズガカに届く。ダリヴァーやハヤテも続いている。


 ネクロズガカが周囲に意識を向ければ、それだけ紅一達にとっては好機になる。魔法少女達もそれを狙い、魔物達の相手をしつつネクロズガカにも攻撃を放つのだった。



    ◇◇



「頑張れ、ハヤテ!!」

「はぁっ! はぁっ! はい!!」

 俺の檄にハヤテが応えた。赤と紫の光がネクロズガカを襲う。


「うらあ!!」

 ダリヴァーも黄色い闇の力でネクロズガカを攻撃する。反撃にあい、俺達にもダメージが蓄積してきているが、引くことはありえない!


 奈雲(なぐも)一族やリゼ達の執念がこの怪物と戦える状況を作った。絶対に負けられない!


 突如、ネクロズガカが四方八方に黒いビーム状の攻撃をした。狙われたのは周囲を飛び交う魔法少女達だ。直撃した者達には大ダメージとなったようで、変身が解除されて落ちていってしまった。


「なんてことを!?」

 俺は思わず叫んだが、直撃を免れた魔法少女達が助けに入っている。全員が助かったことを祈るしかなかった。


「紅一!!」

「えっ!?」

 リゼの声に我に返ると、ネクロズガカが口らしき場所に物凄いエネルギーを溜め始めている。


 向いている方向は地上だ。地上めがけて特大の攻撃を放とうとしている。発動を許せば、地上に大損害がもたらされてしまう!


「やべーことしやがるな!」

「紅一さん、リゼさん!」

 ハヤテが俺達に怒鳴った。意図は分かっている。俺とリゼの連携技で迎え撃とうというのだ。


「リゼ、行けるか!」

「勿論! 今やらずにいつやるってんだ!」

 俺とリゼは笑みを浮かべ合い、飛行船にネクロズガカの攻撃の射線上へ移動してもらって、甲板に隣り合わせに立った。


「本日二発目! 踏ん張れ、サイファーギア!!」

 リゼの声にサイファーギアが電子音で答え、青いフィールドが密度を増す。


 俺は右手を、リゼは左手を前に突き出し、連携して行う大技を準備した。

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